28. 酒場にて
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ジャイアントエイプとの死闘から数時間後。
村の酒場で俺はユリシアのお別れ会に参加していた。
いつかの変態扱いは夢だったみたいに村人にとってのアイドル、ユリシアを1人で救い出した英雄として俺は尊敬の念を浴びていた。
「はいとさん。ご飯をとってきました」
バイキング形式のビュッフェをプレートに盛り付けてきたユリシアがこちらに戻ってきた。
ユリシアはいつものいかにも村娘というようなチュニックではなく立派なドレスを身にしていた。
水色を基調にして胸元は大胆に開いており、面と向かうと照れてしまうな。
しかも、さっき泣き顔に弱音、幼児退行した姿まで見られた相手だ。
なかなかいつもの調子で会話できない。
「お、おう。
言い忘れてたけど……、そのドレス、似合ってるな」
「は、はい……。アリガトウゴザイマス……」
ユリシアは頬を赤らめて口に手を当てる。
なんだかお互いぎこちない会話になってしまっていた。
どうしよう変にユリシアのことを意識しすぎてしまう……。
俺は心情を悟られぬよう、さっきビュッフェから取ったパンを頬張る。
美味しいのだけれど、いつも食べてるユリシアお手製のものと比べるとなんとなく満足できないな。
本日の首都グリーンレイクへの馬車は完全に見送ってしまった。
次に乗れるのは明日。
ユリシアと同じタイミングだ。
ピンプはといえば、酒の力もあって村人たちと仲良くなったようでふらつきながらハーモニカを軽やかに演奏し、村人たちから歓声を浴びている。
さっきは村に帰ってきた俺を見て、呆れながらも胸を撫で下ろしていた。
これからグリーンレイクに移動するのにあたってお尋ね者の俺にとってはまだ不安は募るが、とにかく今はすべて丸く収まったと思おう。
ユリシアも無事に戻ってきて、俺も周りから孤立することは無くなった。
いつか思い悩んでいたのが嘘みたいだ。
ニーナが俺たちの席に近づいてくる。
そして、俺の目前で立ち止まり、机を突き抜ける勢いで俺に向かって頭を下げてきた。
「はいと!! さっきは全部の責任をお前に押し付けるような酷いことを言って、ほんまにすまんかった」
いつものニーナは見せないような真剣そうな様子だ。
「いいって。俺だってスキルのせいで2人には迷惑かけたんだ。
おあいこだよ」
そう言って俺がにっと笑って見せるとニーナは安堵の表情になる。
相当気にしていたみたいだな。
「ありがとう、はいと。
何より、ユリシアを救ってくれて本当にありがとう。
感謝しても仕切れんくらいに感謝してる。
ユリシアはウチにとっての唯一の家族なんや。
ユリシアが死んだら、ウチもう何もできん。
ユリシアが死んだら、ユリシアが死んだらぁ……うっ……」
感極まってニーナが泣き出す。
その様子を見ていたユリシアも少し涙目になっていた。
「お、おい……。
安心しろよ。
ユリシアはもう無事だから。
ジャイアントエイプはもう俺が倒していないんだからさ」
俺はニーナの肩をさすって慰める。
「せやな……。せやな!」
ニーナは少し無理して笑ってみせた。
そして、いつもの人を食うようなおちゃらけた様子に戻った。
「ま、とにかく、うちの家族を救ってくれたあんたにウチは惚れてもうたんや。
前から思ってたけど、結構可愛い顔してるしな、はいと」
そう言ってニーナは俺に体を絡ませてくる。
む、胸があたる……。
「お、おい。飲み過ぎじゃないか?」
「あほ! 酔っ払っていうてへんわ!
ウチは本気なんや。
なあ、はいと。
これから空いてるよな。
今晩、うちの部屋の鍵開けとくから、2人で楽しもうや……なぁ」
「お、おい……、お前、何言って……」
ニーナに言い寄られ、俺は生娘のように動揺する。
そこに、割って入るユリシア。
「お姉ちゃん!! はいとさんは、今日はもう大変に疲れてるので、そっ、そのような不純異性交遊は、控えてもらえますかっ……!
は、はいとさんも、そんなにデレデレしないでください……!」
ユリシアは俺の服の裾を掴む。
いつもの引っ込み思案からは想像できない怒り具合だ。
嫉妬してるのか?
「わっはっは。
熱々なお二人さんの仲に入る隙はなかったようやな。
しゃーないな、ユリシア。
はいと譲るわ。
ほいじゃ、お二人さん、ごゆっくりー」
そう言って手を振りながら他のテーブルの方に行くニーナ。
「もう、お姉ちゃんったら」
「はは……、今日はいつにも増して強烈だったな。
だいぶ、酔ってるんじゃないか?」
ユリシアはまだ少し怒ってるみたいだ。
「そうみたいですけどぉ……。
……はいとさん、これから少し2人きりになれる場所で話しませんか?」
「え?」
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