27. 母性
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「ままぁ〜!! ぱいぱぁい!!」
幼児化した俺はユリシアに向けてはいはいで突進していく。
やめろ!
やめてくれ!
ユリシアはその俺の変貌ぶりに怯えきって体を逸らそうとするが、疲れからか動きが遅れてしまっている。
そんな光景を体を制御できぬまま、ただ自分視点で眺めるしかできない俺の精神には、テレパシーのように幼児化した俺自身の気持ちが伝えられていく。
無邪気な化け物の気持ちが。
やっとままのぱいぱいをもらえる!
ままはぼくのものだ!
怯えるユリシアのことなど気にもせず、距離を詰めていく俺の皮を被った化け物。
「い、いやっ……」
ユリシアが小さく悲鳴をあげたその瞬間、はいはいの体制のまま、ユリシアの胸目掛けてダイブしていく。
もう……、やめてくれ……。
俺は普通にスローライフがしたかったんだ。
普通に周りと仲良くなって、普通に友達ができて、普通に結婚して……そんな、当たり前の生活が送りたかったんだ。
これ以上、自分が変態になるのは……。
これ以上、大切な人達から嫌われるのは……。
「もう、嫌なんだぁ!!!!!!」
俺の体に柔らかいものが当たる。
やはり、俺はこのスキルに負ける運命だったのか。
大切な人に、ひどいことを……。
「……大丈夫ですよ〜。よーしよーし」
「……え?」
俺に向けられたのは、今まで受けた罵倒や軽蔑の目ではなく、温かな愛情だった。
俺が抱きつくすんでのところで、ユリシアは俺を抱きしめてくれていたのだ。
見るも無惨な幼児化したこの俺を……。
拒絶するどころか……一体……。
ユリシアの小さな手が俺の背中に回されていく。
「よーしよし。
怖かったんでちゅね、ずっと1人で抱え込んで」
俺はなされるがままにユリシアの胸に顔を埋める。
一体、どうなってるんだ?
「……」
「これでいいんでしょうか?
すみません。孤児院にいた時に小さい子の面倒を見てたりもしてたんですが、はいとさんがこれで嬉しいのかどうか……」
そう不安そうに尋ねてくるユリシア。
「い、いや、うん!
いいんじゃないかな?!
……嫌わないの? 俺を。
あんな様を見たのに」
ユリシアはキョトンとしたまま少し微笑む。
「嫌わないですよ!
はいとさんのこと、嫌うわけないじゃないですか。
確かに、スキルのことを聞いて実際に目の当たりにしたときには驚きました。
そんな強制発動スキル、聞いたことなかったですし、自分に向けられるなんて……」
ユリシアは照れながら目線を下げる。
「本当に悪かった。
もう、君とは関わらないようにする。
こんなこと、二度とないように……」
するとユリシアは大慌てで俺の目を見る。
「そんなの嫌です!
気にしないでください。
他の方は分かりませんが、私は大丈夫ですから。
男の人から赤ちゃんみたいにおっぱいを求められるのなんて初めてで、正直に言うと少し怖かったです。
でも、はいとさんに飛びつかれた時、男の人の不純な気持ちは感じられませんでした。
赤ちゃんとしての純粋な愛を欲する気持ち。
そして、それ以上に強い想いを感じました」
「……え?」
「はいとさんが心の中でとても悲しんでいるような、そんな感情が私には感じられたんです。
はいとさんは変態さんじゃない。
スキルっていうのが蝕んでいるだけで、心の奥底では、ずっと悩んで苦しんでいるんだって。
そう気づいたんです。
はいとさんが私に襲いかかっているときに涙を流しているところを見て、確信しました」
「え……?」
言われて目元に手をやると指先が湿っていた。
俺、いつの間に泣いていたんだ……。
「はいとさんは、変態なんかじゃないんです。
ずっと周りを想ってくれて、相手を気にかけているからこそ、泣いていたんでしょう?
私が傷つくと思って泣いてくれたんじゃないですか?」
ユリシアはそう言って背を曲げ、俺をより強く抱き寄せる。
ユリシアの温かな胸が俺の額により強く当てられる。
その温かさを感じているうちに。
「う……、うっ、ひっぐ、ぐ、うぅ……」
俺は咽び泣いていた。
「……うぅ、辛かったんだ……。
このスキルのせいで、周りの人が傷つき、離れていくのが……。
ずっと……ずっと……。
この地に立ってからそんなこと続きで……。
俺は普通の生活がしたいだけなのに、どんどんとそれが遠のいていくんだ……。
このスキルのせいで……」
ユリシアは優しく俺の背をさする。
「よしよーし。
はいとさんの気持ち、私は受け止めます。
それに、はいとさんから私は離れません。
頼まれたって嫌です。
はいとさんがスキルのせいで辛くて、どうしようもないのならはいとさんのママにだってなれます。
だって、はいとさんは私にとって初めてのお友達ですし、それ以上に……。
それ以上に、……ます、から……」
ユリシアの言葉を聞いているうちに俺は安心しきって眠りについていたらしい。
最後にユリシアがなんと言ったのか聞き取れなかった。
だが、今は、今だけは、ただただこの温かなものに触れながら眠り続けていたかった。
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