26. 想いの力
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やはり駄目だったか……。
しかし、待てよ、上等な剣をもってしても傷一つつかなかったジャイアントエイプの皮膚が、……振動している?
人間のタックルで?
その異変に気付いた瞬間、ジャイアントエイプの皮膚は波打ちだす。
「グァッハッハッハ!!
……グァハ?!」
ジャイアントエイプも自身の体の異変に気付いたようだ。
皮膚の表面が波紋のように盛り上がり、そして……。
吹っ飛んだ。
あのひと削りの岩盤のようなデカブツが磁石で引き寄せられたかのように、いとも簡単に壁にへばりついた。
!?
俺自身もそのあまりにも桁外れの力に愕然としてしまう。
確かに赤ちゃん化した俺の力を信じ切ってはいたが、ここまでとは……。
念の為、例のガラガラなども携えてはいたけど、力の差は歴然だった。
……待てよ。
やつの手の中にはユリシアがいたんだ!
ユリシアはどうなっている!?
ジャイアントエイプはあまりにも強い衝撃に手からユリシアを離した。
空中に身を投げられるユリシア。
ままがあぶない。
たすけなきゃ。
俺の体は反応し、ユリシアをお姫様抱っこで受け止める。
「はっ……はいとさん。///
……はいとさん?」
俺に抱きかかえられユリシアは頬を赤く染める。
しかし、俺の明らかな異様さを感じて、身じろいだ。
今の俺は俺であって俺であらず。
赤ん坊状態の俺がユリシアによからぬことをしないよう願う。
俺の危惧とは裏腹に、赤ん坊のはいとはユリシアを丁重に地面に下ろす。
そして、ジャイアントエイプに向き直った。
奴は壁から自力で脱出し、地に降りると、そのまま俺に向けて怒りの雄叫びを上げる。
さっきまでの舐め腐った態度は無く、完全に戦闘体制だ。
「グォオオオオ!!!!」
至近距離で見るとまるで怪獣映画だな。
そして、こっちに向けて突進し出した。
もう一切の手加減がない。
対する赤子もとい俺は……。
やっぱり突進だ!
赤ちゃんが戦術をこねる訳はなく、相手がどう来ようと玉砕覚悟の突進あるのみだった。
「ばーーぶーー!!!!!!!!」
地面が揺れ動くほどの振動。
そして洞窟の中心で二つの震源がかち合った。
洞窟全体がビキビキと音を立てて崩れていく。
地面には中心からヒビが入り、俺たちを飲み込もうとしている。
なっ、なんて威力だ……。
「グゴォォアォォォ!!!!」
「バブうぅぅぅぅ!!!!!!」
熱風が立ち込める。
ぼくのっ、ままをっ、きずつけたやつはっ、ぜったいにっ、ゆるさないっ!!!!!!
赤ん坊の気持ちが俺の精神にダイレクトに伝わる。
だから、ユリシアはお前の母親ではない。
だが、お前の気持ちには同意見だ。
ユリシアを傷つけるような奴は、絶対に許さねぇ!!!!
「バブゥうぅぅぅっ!!!!!!!!」
うおおおおぉおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!
俺たちの心が通ったのか、タックルの威力は倍に膨れ上がる。
「グァガッ?! グッハァァァ!!!!」
なんとか耐え忍んでいたジャイアントエイプだったが、そのパワーに耐えきれなくなり、体が弾け飛び、肉片になっていく。
そして、体が散り散りになって、奴は影も形も無くなってしまった。
辺りには焼けこげた肉の香りが立ち込める。
隅で見ていた子猿たちは震えながらその様子に肩を寄せ合っている。
そんなことには目もくれず、赤ん坊の俺はユリシアを探す。
隅でうずくまったユリシアを見つけるや否や、辺りに散らばった肉と洞窟の壁だった破片をするすると掻い潜り、ユリシアに近づいていく。
「まんまぁーー!!!! ぱいぱぁい!」
まずい!
敵を倒しても赤ん坊のままだ。
このままでは、ユリシアが俺に襲われてしまう!!
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