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24. 君へのはなむけ

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腕が、岸壁に投げ飛ばされた衝撃でさっきまで潰れていた俺の腕が、動くようになっていた。


な、何故だ……?

確かにさっきまで複雑骨折で見るも無惨な状態だったのに。

見ようとしようとも首すら回らなかった。

それが……、何故……。


そうか……わかった。

こうして腕が動くようになった瞬間、俺はユリシアをママだと思った。

そう想像した途端に自然治癒のように怪我が回復していったのだ。


強制発動特殊スキル"幼児退行"。

その実態には未だ謎が多いが、幼児状態になった俺は良くも悪くも膨大な力を孕んでいた。


巨大ガエルとの戦闘、そしてニーナとの小競り合い。


俺が赤ちゃん化するときは人智を超えた能力を発揮できるのだ。


腕が動くようになったのは、スキル"幼児退行"のお陰なのか?


赤ちゃんになることで、この窮地を脱することができる……?


あの忌々しい赤ん坊の、力を借りるってのか?

発動の仕方は今までの体験から嫌というほどにわかっている。

俺がバブみを感じればいいのだ。

バブルみを感じて、赤ちゃんになるきっかけができれば、後はすぐだ。

俺の心の奥深くから、わがままな赤ん坊が現れ精神を全て乗っ取っていく。


やつの力を借りるっていうのか?

成り代わった後はどうなる?

我を忘れた俺は今度こそユリシアに襲いかかるんじゃないか?


そしたら、今度こそ嫌われる。

今更そんなこと考えてられる状況じゃないのはわかっている。

だが、こうして一度俺を信じてくれた相手を再び裏切ることになるのだ。

俺の心に傷が深く刻み込まれるだろう。


やっぱり、ただの変態だったのだと、そう失望されておしまい。


今度こそ俺たちの関係は終わる。


でも……。


「ヒュ、ユリシア……」


肺に穴が空いているのか、うまく喋れないままユリシアの名前を呼ぶ。


「はいとさんぅ……!」


ユリシアはボロボロと涙を流しながらコンマ1秒も聞き逃さんと俺の言葉に集中する。


「生きてるか……。ユリシア……」


ユリシアは大きな声で返事をする。


「はい! 私は生きています…! でも……はいとさんが……!!」


ユリシアの瞳には俺の屍なのか判断がつかない床に叩きつけられた体が見えているようだ。


「ああ……、俺なら大丈夫。いや、正確には、今、大丈夫になったんだ」


「そ、そんなわけないじゃないですか……! もうっ、やめてください!

私が食べられればいいんです!

そしたら、このお猿のお母さんは満足してはいとさんを見逃してくれるかもしれません!!

だから……、もう私のことは忘れてください」


俺は呂律を回すのに大変苦労する出来損ないの体で言い返す。


「いや、ユリシア、おそらくそんなことはないだろう。

この腐れ猿どもに人を慈しむ心はないさ。

君が食われたら、俺も食われて終わり。

だがな、そもそも俺は君をこんな外道の餌になんて絶対させない。

保証するよ。

間違いなく君は助かる、絶対に」


「はいとさん、一体何を言って……?」


ユリシアは俺の話に全くついていけてないようだ。

それどころか、この絶望的な状況で俺の頭がおかしくなったのかと思っているかもしれない。


だが、そんなことはない。

俺の頭の中には勝利への方程式ができていた。


しかし、それは勝利とともに、俺自身をまた暗い闇の中へ突き落とす選択だ。

信頼されていた人からの失望。

俺の命の恩人、ユリシアからの。


しかも自分から能力を発動させて嫌悪を浴びるのだ。

それはとても苦しい。


楽しかったあの日々が嘘のように消えていく。


だが……、それでいい。


俺は今、完全に決めてしまった。


誰かの1番になんてならなくてもいい。

嫌われたっていい。


ただ、目の前の一人の女の子を助けたいんだ。


……始めよう、人間としての尊厳からの卒業を。


その前に、最後に、俺に愛情を注いでくれた少女に、はなむけの言葉をかけさせてほしい。


「ユリシア、ごめん。

俺、君にずっと隠し事をしてた」


「……」


ユリシアは突然語り出した俺を不安そうに見つめる。


「俺、生まれつき、"幼児退行"っていう最悪な強制発動スキルを持った変態なんだ。

ユリシアみたいな可愛い女の子のことをママだと思っちゃうっていう変態スキル持ちでさ……。

しかも、それが行き過ぎると理性が働かなくなるの。

ほんと、最低だろ?

最低だよな、こんなスキル持った人間。

だから、あの時、君を襲ったんだ。

我慢できなくて……」


ユリシアは驚きの表情を隠せないようだ。

はぁ、こんなときに俺は何を言ってんのかね。

情けないな、全く。


(続く)

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