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20. とある洞穴にて

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ピンプの反対を押し切り、情報を頼りに単独で俺はユリシアが囚われている可能性がある魔物の巣に向かった。

ジャイアントエイプの巣に民間市民が近づくことはこの世界では自殺行為らしく、殴り込みを決めた俺を村の人々は涙なしには送れなかった。

ダクトは俺に紋章が描かれた一枚の札を渡した。

これには魔力が封じ込められているらしく、緊急時には狼煙のように周辺の人間への合図となる眩い光の柱が天まで昇るようだ。

ダクトは言った。


「はいと、お前が本当にヤバくなったらこれを唱えろ。

そしたら俺が助けに行くからよ。

こんな不甲斐ないことしかしてやれなくてすまん。

だが、俺はお前にも無事に帰還して欲しい。

ユリシアのこと、頼んだぜ」


このお札にはあいつの願いが込められている。

まるで自分自身を守ってくれているお守りのように思えた。


そして、森を進んでいくことしばらく。

ピンプの言った通りに進むと断崖絶壁に突き当たった。

茂みに覆われたジャングルから一転、ゴツゴツとした岩肌が視界を支配する。


俺はその荒々しい表面から巣とやらを血眼になって探す。

すぐにわかった。

粒々と募る岩々の中、突如として巨大な拳でめった撃ちにされたかのように抉り取られた箇所がある。

広大な岩肌に突如として異質に存在する洞穴。

その大きさは尋常ではなく、大型ダンプカー一台余裕で飲み込めるほどの深さと広さが確実にある。

間違いない。ここだ!

俺は一目散に駆け寄った。




「………ア……、……シア……、…リシア……。

ユリシアー!!!!!」


洞窟の入り口目掛けて声を張り上げる。


「……」


なにも返事はなかった……。

緊張で額に汗が滴る。

しかし、時間を空けて、少しずつ、聞こえてくる。


「……いとさ……、…はいとさん…、はいとさん!!」


ユリシアの声だ!


「ユリシア! 無事か?! 今行く!」


俺は急いで崖を登り、その大きな空洞に顔をのめり込ませる。


「だ……だめっです……!!

来ちゃ……だめ!!!!」


そう叫ぶユリシア。

俺は構わず声のする方向に突き進む。


「今そっちに行くから!


……!!!!」


巣の全貌を見た俺は絶句した。

数メートル先にまさにダンプカー並みにでかい図体をしたゴリラが静かに俺を睨みつけている。

そして、その片手には今にも握りつぶされそうなユリシアが……!!


なんだよ……このバケモノ!!

いくら異世界といったって規模がバグってやがる。

こんなの軍隊一つあっても敵わないんじゃないか……?!


ダクトが頑なにニーナを止めた理由が今わかった。


こんなの……、いくら魔法があっても、いくら強い武器があっても敵いっこない。

異世界というまるでなんでもありなファンタジーのような土地におけるどうしようもない現実、理不尽。

人間というちっぽけな生き物は、その運命に屈服するしかない。

誰に言われるでもなく、ただその場にいるだけでこの真理を理解できた。


死ぬのか……?

ユリシアは。


呆気に取られ固まってしまっていた俺にユリシアはまるで最後の命を振り絞るように声を出す。


「わ……わたしのことは、いいんですっ!!

はいとさんだけでも……逃げてください!!」


ユリシアは穏やかに笑っていた。


「何言ってんだよ!!

ユリシアを見捨てるなんて、できるわけないだろ!!

待っててくれ!!

今俺がこんな図体がでかいだけの猿なんて、コテンパンにしてやるからさ!」


ユリシアは優しく微笑んで見せた。

自分でも今言っている言葉がどれだけ馬鹿げてるのかはわかる。


「はいとさんは……本当に優しい人ですね……。

私、人生を終える前の一ヶ月であなたに出会えて本当に幸せでした。

もう、思い残すことはないです」


ユリシアはユリシアらしからぬ流暢な喋りでそう言う。


なに……なに言ってんだ……。

これじゃまるで……、これから死ぬ人間の遺言じゃないか……。


「ユリシア!!!!」


俺は力一杯叫ぶ。


「いいんです。

もう、十分私は生を全うできました。

悲しまないでください。

私はこの子達の生きる糧になるだけなのですから」


ユリシアの指差す方向には忙しく泣き喚く小猿の群れがあった。


「お前……何言って……?」


「とっても愛らしい家族じゃないですか。

きっと、この子達の食べ物になるのが私の運命だったんですよ」


「は……?」


「はいとさん、私、あなたが思っているよりもかなり変な子なんですよ?

でも、それが伝えられてよかったです。

最後に私をもっと知ってもらえて。

それだけが、私の心残りでしたから」


いつまでも、彼女は微笑んでいた。

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