15. 心の傷
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俺はユリシア宅の近場に生えた木の影からゆっくり顔を出し辺りを確認する。
よし、誰もいないな……。
これで存在を見つかると余計に話が拗れる。早いところ荷物を回収してピンプのもとに戻ろう。
しかし、それにしても2人はどこにいっているのだろう。
まるで人の気配がしない。
そうか。
パーティ会場の様子を見に村の中心部に行ったに違いない。
パーティ……。
俺、ユリシアに誘われてたんだよな。
喜んでたな、俺が行くって言って……。
その後で、あんなことをしてしまうだなんてな……。
俺は元気がなくなりながら裏庭のドアを開け、易々と侵入する。
日本の田舎でもよくあるように、治安がいいこの辺りでは鍵なんて滅多にかけないということは知っていた。
ダクトなんかも平気で出入りしてたしな。
廊下を通り、借りていた部屋に着く。
この部屋にもたくさんの思い出がある。
ユリシアと初めて出会ったのもこの部屋だったな。
傷だらけの俺の手当をしてくれたのもユリシア。
ユリシアが俺にしてくれたことを思い出し、なんだかとてもここが恋しく思えてくる。
願わくばずっとここで暮らしていたい。
2人の帰りを待ち、頭を下げてさっきのことを本気で謝罪する。
許してくれるかは分からない。
だが、それで2人と仲直りできる可能性が0.01%でもあるなら……。
だが、それは単なる俺のエゴだ。
俺は人として取り返しのつかないことをした。
呪いの影響とはいえしてしまったことはしてしまったことだ。
二度と平和を暮らす彼女らの前に出てはいけない。
きっとこれからもこんな出会いと別れを経験し続けるだろう。
だから、今の俺はこの悲しみに耐えなきゃいけない。
俺にセクハラまがいのことをされた人々の苦しみを考えれば、そもそも加害者は俺なのだ。
そういうことに……なっている。
俺が会った異世界の人々はみんないい人だった。
もしこの呪いがない状態で、グリーンレイクの人々、ユリシアにニーナと出会えたら……、こんな悲劇は起こらずどんなに楽しかっただろう。
異世界転生してから数十日。
ずっと運命を恨んではいたが、最近はもうただただこの運命に打ちひしがられていた。
冒険を続けてこの呪いが解かれる根拠なんてない。
いつまでもこのまま人に軽蔑されてはその地を後にする。
そんなならず者の一生を俺は送っていくのだろうか。
そんなとき、俺の脳裏に一つの考えがよぎる。
そうだ。
もう一度転生しなおせばいいんじゃないか?
前世で死に、当然のようにこの地に降り立った。
結果として過去の軋轢とはおさらばできている。
ならば、いっそここで……。
俺は部屋の隅に転がった荷造り用のロープに視線を落とす。
こいつを天井に吊るし、首をかければ……。
っておい!
何考えてんだ、俺!
冷静になれ。次死んだときに確実に転生できるなんて保証はどこにもない。
咄嗟に否定してみたもののまだ煮え切らない自分がいた。
もう疲れが限界に来ていたのかもしれない。
元々俺は単なる社畜だ。
日本という法治国家で労働はきついが人並みに暮らしていた。
この激動のような日々を生きるための準備なんて少しもできていなかったのだ。
遠くから人の声が聞こえてくる。
ニーナの声で何か叫んでいる。
まずい! 長居しすぎた!
俺は荷物を肩に担ぎ、急いで廊下へのドアを開け、裏庭へ出る。
しかし、もう手遅れだった。
村の方角から大人数がこちらに向かってやってくる。
何だ何だ?!
パーティの予行にしては早すぎないか…?
それにパレードってムードじゃないな……。
なにか異質な雰囲気だ。
その中にニーナがいた。
「「ユリシアー!!!! ユリシアー!!!!
聞こえたら返事せぇ!!!! ユリシアー!!!!!!」」
ニーナの絶叫が辺り一体にこだまする。
一体何が起きてるんだ?
その様子を見ると、いつもの一家の大黒柱のニーナとは到底思えない。
慌てふためき自分の身振りを気にもせず、ただただ声を枯らせながらユリシアの名前を呼んでいる。
後ろから着いて来て、その様子に振り回されるが如くのダクト。
「あ、はいとじゃねえか!
はいとー!!」
ニーナより早く俺の存在に気づいたダクトは俺のもとに駆け付ける。
「ダクト、これは一体……。
ニーナは何をしているんだ?
ユリシアは……ユリシアはどこだ?」
俺はダクトに恐る恐る尋ねる。
「それが……いねえんだ、どこにも……」
俺は目を剥く。
「なん……だと……?」
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