遠征皇国編-15.小国家巡回を終えて
「さて、こっちが名乗ったんだ。キミの名前とかも聞かせてもらっていいかな?」
「名前はもう知ってんだろ?レオだ」
コンドルファにたどり着いて案内された部屋で一兵士と話をしていたら、この兵士がコンドルファの代表だったんだ。
名はアクト。もう隠さなくても問題ないみたいだから腹を割って話そう!って事になっちまったんだ。
「うん、ありがとう。門での聞き取りだとピムエムから来たってだけだったんだけど、元はどこに住んでるんだい?」
「ネイレっていう、この大陸の南端にある小さな国だ」
「ほう!これはまた遠いところからよくこんな内戦やってる国にやってきたもんだね。目的は?」
「各地の魔獣退治だな」
「それはまた···。自国周辺だけでやってりゃいいのにご苦労な事だね。どうしてピムエムに協力を?」
「たまたま通りがかって巻き込まれちまったんだよ」
「そうか···。キミは人が良すぎるなぁ~!普通の旅人ならそんなリスクは背負わないけど?むしろ旅人なら積極的に回避に動くものだよ?ほかに意図があるでしょ?」
「···それを聞いてどうすんだよ?」
「簡単なことさ。うちに悪影響があるかないか?を確認したいだけ。」
「だったらむしろいい影響があると思うぞ。あんまり言いたくねえんだけど···、オレたちはクマトリ皇国の皇帝をとある理由で倒したいってのがある」
「とある理由···。もしかして、『外の理の者』だから?」
「···知ってんのかよ?」
「ああ、もちろん。うちにもそれなりに情報網ってのがあるからね。そして皇帝が何を望んでこの戦争を始めたのか?もね」
「···なに?目的を知ってんのか?」
「ああ。彼とその周辺の連中はこの世界の者じゃない。となると、戦争の目的と言えばこれしかないんじゃない?『戦争を起こして周辺の人口を激減させて乗っ取る』だよ」
「なんだって!?」
そういうことか···。ヘタに侵略すればエレにバレるから、エーレタニアの住民同士を戦わせて滅ぼした後に何食わぬ顔で乗っ取ろうってか。自分たちの手を汚さずにやれるから気づかれにくいって魂胆だな?
「まぁ、クマトリ皇国はこれまで勝手なことをやってうちらから反感買ってたからね。いろんな嫌がらせをされたもんだよ。そしてついにそれが実行段階に移ったって事なんだろう。かなり長い準備期間があったんだ。そんなところとまともにやりあってうちが無事である保証はない。だからこそ今は現状維持しか考えてないのさ」
「そういう事か···。この情報はピムエムで話してもいいんだな?」
「もちろん。どちらかと言えばこれをピムエムが知ってもらったほうがいい。ヘタに刺激してうちにとばっちりが来ても困るからね」
「わかった。ロッコさんに話をしておくよ」
「そうしてくれ。さてと···。これで話は終わりでいいかな?食事も終わったようだし、オレもこれで引き上げることにするよ。明日はセルビウスに向かうんだろ?」
「ああ。それでピムエムに戻るつもりだ」
「わかった。···そうだ!明日ここを出る時にセルビウスへ手紙を持って行ってくれないかな?」
「別にいいけど?」
「助かるよ。それじゃあゆっくり休んでくれ」
こうしてここの代表であるアクトは部屋から出て行った。
この国···、なかなか強そうだ。皇国の内情を知ってるし、皇国軍に対抗できる戦力すら持ってる。
だが、皇国が手段を選ばなくなってきたら『外の理の者』の兵器を投入してくるだろうな。そうなる前にオレたちで皇帝を送還しなきゃならんな。
その後、この部屋に寝具が運び込まれた。ソファで横になって寝てくれって事になったんだ。さらには朝食用のパンも持ってきてくれた。
せっかくの好意だ。お言葉に甘えてゆっくりさせてもらうぜ。
そして翌日···。
オレはコンドルファをそのまま出た。町中は早朝だったから静かだったけど、特に壊れているとかそういったことはなく平穏だった。皇国とドンパチやってるって思えないような状況だったな。
門でアクトからの手紙を2通受け取った。ひとつは最後の訪問地であるセルビウス向け、もうひとつはピムエム向けだな。中身はオレが見ちゃいけないから見ないぞ。
そしてコンドルファからセルビウスまでの道だが、ここは特に何もなっていなかった。普通に行商人の往来もあったんだ。大きな荷馬車が通れるってことは、道に問題はなさそうだな。
走ること2時間でセルビウスに到着した。ここはどうも国の北側から入るようで、右側には海が見えていた。
「こんにちは。一人旅かい?よくここまで来れたもんだね~。どこから来たんだい?」
「コンドルファから来たんだ。ここの代表さんっているか?」
「代表···?どういった用件だい?」
「ピムエムとコンドルファから手紙を預かってんだ。ここの代表宛てなんだよ」
「ちょっと見せてくれるかい?···ふむふむ、本物だな。ちょっと上に問い合わせてみるよ。しばらく待っててもらえるかい?」
「いいぜ。ところで···、ここって皇国が攻めてきてないのか?」
「ん?あ~、攻めてきてるよ。とりあえず今のところは大丈夫だけどね」
「ここも大丈夫なんだな···」
「まぁ、今のところはね。このあとはどうなるかわかんないけどさ。とりあえず立ち話もなんだからさ。部屋に案内するよ」
ここでも同じ対応だったな。まぁ、こっちも戦時中だ。ヘタに入れるわけにもいかねえし、よその国の親書を持ってきた人に対して悪い対応もするわけにはいかないだろうからな。
そうして1時間ほど待ってると、扉が開いた。中に入ってきたのは門でオレの相手をした人だった。
「お待たせ!この手紙をピムエムに持っていってくれるかい?コンドルファは行商人に預けるからピムエムだけでいいよ」
「おっと!そうしてもらえるとありがたいぜ」
「帰る時も気をつけるんだよ。あちこち皇国軍がいるからさ」
「ああ。あんがとよ!」
こうして小国家の様子を見てくる任務は終了だ。オレは入ってきた門を出てピムエムへ戻ったんだ。帰りは真のトランス状態でササッと戻ったんだ。ピムエムに着いたのは夕方前だった。
「ただいま〜」
「お帰り、レオ。いろいろあったようだな」
「「「「パパ!お帰り〜!」」」」
仮の家に戻るとネボラがいた。テーブルで何かの書類を書いていたんだ。
子どもたちも元気そうだな!こうした姿を見るとホッとするぜ···。
「とりあえず手紙は渡せたぜ。それとコンドルファとセルビウスから手紙を預かったんだ。ロッコさんは?」
「今はここを離れてるぞ。どうも自国内の戦力と武器をかき集めるそうだ。明日には戻ると言ってたぞ」
「そっか。で、皇国軍は?」
「ちょっかいを出してきたので、追い返しておいたぞ」
「追い返したね···。とんでもねえ事やったんじゃないか?」
「いいや?そんな事はないが?」
···絶対にやりすぎてると思うんだが?そう思ってたら子どもたちが、
「ママすごかったよ〜!相手の兵士さんたちに一切キズつけずに鎧と服をきれいに切り刻んで裸にしちゃったんだよ〜!」
「ママ、すごい器用だよね〜!」
「あれ、おいらにはできないぞ···」
「でも、おれはあれできるようになったらもっと強くなれるかな〜?」
レグス、フェア、アル、ルエルは正直に見たことを話してくれたんだ。
「···子どもたちはこう言ってるが?」
「命は取ってないからな!ははは!」
···そりゃ、そんな事されたら誰も近づきたくねえよ。戦場ですっぽんぽんにさせられるなんて、ある意味社会的抹殺に等しいじゃねえかよ···。
無事周辺国の状況確認を終えました。
防衛に成功しているところ、失敗したところと明暗分けました。まぁ、皇国は一気にあちこち攻めたので戦力が分散されていたというのもありました。ぶっちゃけナメてたんですね。そのため、元からしっかり迎撃準備していたコンドルファとセルビウスは防衛成功したんです。
本来、こういった地域ではお互いに攻めたりして内戦状況になりやすいのですが、エーレタニアでは魔獣被害が甚大なのでどうしても保守的な考えになりがちで、勢力を伸ばすというのはゆっくりなんですね。防衛線が伸びると必要な戦力が一気に増えますからね。どこも余裕ないんです。
さて次回予告ですが、周辺国の状況がわかったので、ピムエムはついに皇国に攻め込む決断をしました。レオくんの目標は皇帝の送還です。そのためにピムエム軍が皇国に入る前にレオくん一家は先に動くことになりました。
まずはどこに向かうのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




