遠征皇国編-10.レオ、小国家群の様子を見に行く
ピムエム地方の集落を皇国軍から守り切った翌日、オレはクマトリ皇国の周辺の小国家の様子を見に行くことにした。
クマトリ皇国の周囲にある小国家はピムエムを除けば全部で4つ、『ブンソー』、『メトドス』、『コンドルファ』、『セルビウス』だ。
位置的には時計の針で例えるならクマトリ皇国が針の中心とすると、3時の方向にピムエムがあり、2時の方向にブンソー、1時の方向にメトドス、12時の方向にコンドルファ、11時の位置にセルビウスがあるんだとさ。こうしてみるとクマトリ皇国を囲むようにあるな。ちなみにセルビウスの先は海だ。
だから、オレは反時計回りで回ることにした。
「そんじゃあサッと行って帰ってくるわ」
「ああ。レオの思うようにやってこい!こっちは心配するな。子どもたちも十分に戦力になっているからな」
ピムエムを出発したオレは、まずはブンソーへ向かうことにした。ルートはピムエムの国内を通る街道だ。
この国の主要街道はクマトリ皇国の東にある南北の街道。オレたちはここを南から通ってきたんだな。ピムエムはこの街道の東側だ。
そして皇国から各小国家へ向かう街道のほかに小国家同士を結ぶ街道もあるんだとさ。オレはこの小国家同士を結ぶ街道を進んでいる。
というのも、皇国が内戦を仕掛けてきている以上、皇国から小国家への道を通ってしまうと間違いなく怪しまれちまうだろうからな。一応ロッコさんにオレの身分証明書を作ってもらい、さらには手紙も用意してもらったんだ。
手紙の内容は『皇国がワナをしかけて襲い掛かってきたので注意されたし』という内容だけだ。
この内容についてはオレは気になったんだ。
『ピムエムに協力してほしいって内容じゃねえのかよ?』
『レオさんのお気持ちはわかりますが、おそらく賛同は得れないでしょうね』
『なんでだよ?小国家にとっちゃ皇国は敵だろ?力を合わせた方が確実に倒せるじゃねえかよ?』
『レオの言うことはもっともだ。だが、協力して倒すと今度は小国家同士が『誰が国の主導権を握るか?』ということでまた内戦が起きてしまうのだよ』
『うわぁ···。そうなっちまうのか···』
『ああ。だからこそ、このピムエムが主導権を握るのであればピムエムが皇国を倒さなければならないのさ。だが、そうなるとほかの小国家としては蚊帳の外だ。せっかくレオが各国へ赴いてくれるなら情報を渡して恩を売っておく方が、ピムエムが皇国を打倒した時に『情報のおかげで助かった!』という、それなりな好印象を抱かせれるだろう?そういった策略だ。まぁ、ほかにも問題はあるし大した効果は期待はできないだろうがな』
『めんどくせえなぁ~』
『ははは!だから以前にも言ったように、こういった事は王の経験があった私に任せておけ。レオには何も考えずに大暴れできる舞台を整えてやるからな!』
ちょっと様子を見に行くだけだったのに、おつかいまで頼まれちまったんだよ···。まぁ、どうせ国の中の様子を探る時は門をくぐるんだ。手紙一つ渡すぐらいなら大した労力でもないし、いいか!
今回は少し急ぎで向かうので、街道を走った。
しばらく街道を進んでいると、ブンソー側からやってくる行商人を見かけたんだ。荷馬車が3両あるから結構大きな商会のようだな。
通り過ぎようとしたその時!
「キミ!ちょっと待った!」
先頭の荷馬車に乗った御者の人から呼び止められたんだ。
「なんだよ?ちょっと急いでるんだけど?」
「この先は行けなくなってるよ」
「···へ?どういうことだよ?」
「倒木で街道が塞がれちまってんのさ···。ちょっとだけなら我々でなんとかするんだけど、倒木の数が多くてどうにもならんから引き返してきたんだよ」
「え?そんなに多いのかよ?」
「ああ。おかしいんだよなぁ~。最近あんなに倒木が出るような嵐になってないんだけどね。とりあえず兵士さんに報告して撤去依頼するから。せっかくだしうちに乗って戻るかい?」
「いいや。情報ありがとな!オレ1人だけだから迂回してみたりとかするぜ!」
「そうかい?ここ最近魔獣を見かけることが少ないけどもいないわけじゃないから、気を付けるんだよ」
「おう!助かったぜ!」
倒木···?いや、確かにクマトリ皇国に来るまでの道でもあったけど、引き返さねえといけねえってどんだけだよ···?
そうして倒木の現場にたどり着くと···、
「おいおい···。なんだよ?この量は···?」
街道の森の区間では確かに倒木により塞がれちまってたんだ···。しかも山積み状態って···。何があったらこんなになるんだよ?
とりあえず魔法で倒木は吹っ飛ばしておいて先に進んだんだが···。
「ちょ!?ここもかよ!?」
大きな川を渡していた橋が落ちていたんだ···。こりゃ荷馬車や普通の人が通るのは無理だな。
だけど、橋の破損状況をよく見てみると自然に老朽化したとか災害で落ちたってかんじじゃねえんだよ。この橋は川の中央に柱があって、石造りでできていたんだが、その中央の柱だけが壊れていたんだ。
しかも何かが爆発したような痕跡があったんだ。
つまり、人為的に壊したってわけだな···。こんなことをやるって連中は···。
「皇国軍がつぶしたって可能性が高いのか···」
仮にこれを皇国軍がやったとしたら、ピムエムとブンソーを行き来できなくすることで共同戦線を張ったり物流や人流を遮って孤立させようって意味合いにもとれるな···。
だとしたらかなり用意周到に小国家を潰そう!って意思を感じるな!
まぁ、この程度の川幅ならオレならトランス状態で軽く飛び越えれるけどな!さっと飛び越えて先を急ぐことにしたんだ!
やっぱりブンソー側の道も倒木や落石とかで道がズタズタにされてたな···。これ、オレが魔法で処理してなきゃ開通まで時間かかってたんじゃねえかな?復旧作業に手を取られるのも皇国の作戦のうちなのかよ?
そしてブンソーの近くにやっとこさで到着できたんだ。時間はほぼお昼になっちまってたな。
ただ、ブンソーに近づく前に気づいちまったんだ···。黒くて細い煙が上がってたんだ···。
「遅かったか···」
ブンソーはすでに皇国軍によって占拠されてしまっていたんだ···。
襲ったのは昨日のようだった。門は壊れ、その前には激しい戦闘が行われていたのだろう。動かなくなった双方の兵士たちがたくさん倒れたままだったな。
こりゃこの国は終わりだな···。せっかくの手紙もムダになっちまった。
さて···。本当は助けたいところなんだけど、ほかにも回らなきゃならねえんだ。オレの本来の目的は魔獣退治と異世界人の追放であって、人同士の戦争には原則介入はしない。って、この前はなりゆきで介入しちまったけどな。オレたち神狼族は兵器じゃねえんだ。
ただ···、
「いやーーーーー!!」
「た、助けてくれーーー!!」
「い、命だけは···!」
「やかましい!お前らは全員皆殺しだ!その命、偉大なるわが皇帝陛下に捧げるのだ!ははは!これほど名誉なことはないのだぞ!?」
···ゲスが!前言撤回だ。少なくともオレの目の前で一方的にやられるのを見過ごせるほど、オレはクズじゃねえぞ!
インフラ破壊は戦争においては非常に有効です。
というのも、道を破壊すれば物流と人流が途絶えます。すると、物資的にも情報的にも封鎖されてしまうので孤立してしまうんですよ。援軍も補給もないとまず勝ち目がありません。
道というのは普段利用していると気づかないかもしれませんが、大変重要な役割があるんですね。これは災害とかが起こって迂回するハメになった時に初めて気づくものなんですよ。
さて次回予告ですが、一方的に襲撃を受けていたブンソーで、レオくんはちょっとだけ介入して皇国軍を倒して次のメトドスへ向かいました。そこは無事だったので手紙を渡すと待つように言われました。そして現れたのは···?誰なんでしょうか?
それではお楽しみに〜!




