遠征皇国編-6.類は友を呼ぶ!?
オレたちはクマトリ皇国の周辺にある町に状況を確かめるべくやってきたんだが、最も近くにあったピムエムという町に立ち寄ったらネボラが町を囲む柵に感動して押しかけてしまったんだ。
そして村長がいるっていう屋敷に行って村長に面会をしようとして待機していた小屋に入ってきた女が第一声で、
「あなたね?あの柵が素晴らしい!って言った人は!?」
···なんかこいつ、ネボラと同じような雰囲気してるぞ?誰だ?
「ああ、私だ。お初にお目にかかる。私はネボラ。こっちは旦那のレオ、そして子どもたちのレグス、フェア、アル、ルエルだ」
「レオだ」
「「「「初めまして!よろしくお願いします!」」」」
「ええ!あいさつありがとう。私はロッコ。この小国家ピムエムの町を束ねる長よ」
なんと!この周辺を治めてるのか!そのせいか、なんとなくネボラと雰囲気が似てるんだよなぁ~。
全員立って話するわけにもいかないので、イスに座って話すことにしたんだ。
「ネボラさん?あの柵に感動したそうだけど、いいところに目をつけたわね!」
「ああ。なんというか、旦那を最初に見た時のような一目惚れしたような感覚だったな!非常に簡素な作りであるにもかかわらず相手の戦意をくじくあの凶暴さ!今まで私の常識を覆されてしまい、ショックでもあったな。巨大な石壁を作ったことはあったのだが、時間と労力と費用がすさまじくてな···」
「あら?壁を作った経験があるのね?」
「ああ。元は私は一国の王だったのでね。今は滅ぼされてしまったので王ではなくなってしまったがな」
「なるほど···。だからすさまじい王者の風格があったのですね?最初に見た時から只者ではなさそうって思ってましたし」
「そう言ってもらえると嬉しいな。王者の風格か···。確かに剣聖などと呼ばれたこともあるが、今はただの一家の妻だな」
「差し支えなければ、その国の名前を教えていただけますか?」
「問題ない。ここからかなり南にあるテーパーという国だった。今は廃墟となって何も残ってはないがな」
「テーパー···。ボルタニア大陸の南にある強大な軍事国家というのは存じておりますわ。まさか滅んでしまわれたなんて···」
「ほう?こんな遠い国にまで知られていたとは嬉しい限りだな。外の理の者の奇襲を受けてしまったのでな」
「そうでしたか···」
「壁が頑丈であれば安全という考えがあったのは間違いない。だが、ここはそこまで頑丈でなくてもとても有効な柵だ。交換もたやすい。本当に私の常識が覆されたよ。世界は広いものだな」
「お言葉ですが、これは対人兵器ですよ?魔獣相手では勝手が違いすぎます。いささか過大評価ですよ?」
「それもわかってるさ。だが、感動したのは間違いない」
「ふふふ!面白い方ですわね」
なんだか初対面だというのにものすごく打ち解けているな···。これを『類は友を呼ぶ』ってやつなのか?
そしてここでネボラは核心に迫ろうとしていた。
「ところで対人用とのことだが、やはり相手は···?」
「ええ。ご想像通りです。相手はクマトリ皇国のファン皇帝ですね」
「やはりか···。しかし、なぜ同じ国内なのに対立を?」
「国内というのはクマトリ皇国が勝手に言っているだけです。ここは小国が乱立している地域でして、このピムエムも小国家の一つです。クマトリ皇国も小国家のうちの一つでしたが、ここ数年で大規模な軍事投資をして防備を固め、あろうことか小国家の盟主であると勝手に宣言して小国家すべてをクマトリ皇国に併合したのです」
「それは勝手極まりないな···。先ほどまでクマトリ皇国にいたが、周辺地域がクーデターを企ててるという話があったぞ」
「それはクマトリ皇国側の勝手な言い分ですね。情報操作をしてこちらを悪に印象付けをしているのでしょう」
「だが、話を聞く限りだとピムエムの言い分が正しいように思えるが?」
「もちろん、こんな横暴を許すわけにもいきませんから、攻めてくれば全力で応じます。向こうが着々と準備を進めているのを指をくわえて見てるわけにはいきませんから」
「確かに。だからこそあの柵なのだな?」
「はい。あれは馬防柵と言われるものですね。騎兵などが来ても進路を妨害して足止めし、その間に槍で攻撃するためのものです」
「そういう使い方か。しかし、皇国にはそんなものはなかったな。あればこちらから攻める時にやっかいだが···」
「実は、この柵は皇国が併合を宣言した直後あたりにやってきた旅人から教えてもらったのですよ」
「旅人···?」
「ええ。あなたたちのように異国からやってきたそうで、『泊めてくれたお礼にこんなものをお教えいたしましょう』と言ってメモを残したのですよ」
「こんな重要な情報をあっさりと伝えるなんて···。怪しいな」
「確かに怪しいですが、実用としては最高です。どういった意図があったかはもうわかりませんが、使わない手はありませんから」
「確かに。命がかかってるんだ。使わない手はないな」
「ええ。せっかくですからそのメモをお見せしましょうか?」
「そうしてもらえると嬉しいな!」
「では持ってきますね。少々お待ちを」
そう言ってロッコさんは出て行った。オレたちだけになったのでネボラはオレに魂胆を話し出した。
「ちょっときな臭いな」
「ん?どこが?」
「この柵を教えたという旅人だ。タイミングがあまりにも良すぎる。まるで皇国と周辺小国家の紛争の激化を誘うような意図が見られるな」
「そう言われるとそうだな」
「善人と装って柵の作り方や戦術を教え込む···。しかしその意図はなんだ?それにクマトリ皇国は戦費が増大したのに町が疲弊した様子はなかった。金の出どころは?···まさか?」
「ん?何か気づいたのか?」
「ただ単に仮説だが、おととい入国した時に私がレオに聞いただろ?魔獣の目的を」
「ああ。人を食って駆逐するためってな。そして喜ぶのは『外の理の者』だって···」
「そうだ。しかし、駆逐する方法はなにも魔獣を使う方法だけでもないだろ?」
「···まさか!?ここの人たちを意図的に戦わせて減らそうってか!?」
「その可能性も出てきた。この方法なら『外の理の者』たちが直接手を下さずに侵略ができるな。しかも人族の分断も図れるし、みんな『外の理の者』たちに利用されているとも気づかない···」
「えげつねえ考えしやがるぜ···。この方法なら神も気づかねえな」
「もしこの推理が正しいと仮定すれば···」
「クマトリ皇国のファン皇帝、そして知恵を授けたその旅人が『外の理の者』だって事になるってか···」
「ああ。レオ、これは非常に厄介だぞ?その2人を捕縛して送還すると、間違いなくレオは統治者と恩人に対する処刑人というレッテルを貼られて、人々から反逆者となってしまいかねない」
「オレの目的すら封じようってか!?」
「どうやら相手が『外の理の者』だとすれば、レオの存在を知っているという事になるな。だから用意周到に準備を進めたというわけだ。これが現時点での最悪を想定したシナリオだな」
マジか···。これ、どうしたらいいんだ?
壁や柵というのは外からの侵入を阻むものです。
よって、『これ侵入できんの···?』と思わせるというのは有効な手段なんですね。ただ、あんまり物々しいものは『何かお宝があるんじゃね?』って思われてならず者を呼び寄せる逆効果もありますね。
想像すると、皆さまの家の近くに1軒、有刺鉄線で囲われてる家あったらどう思います?物騒過ぎません?絶対に何かあるって思われかねないですよね?
ですが、この世界だと凶悪な見た目は有効なんですね。そりゃ命かかってますもん。最初は有刺鉄線も考えたのですが、ちょっとさすがにそこまでやっちゃうとファンタジーっぽくねえよなぁ〜、ということで馬防柵にしました。こちらは木で出来ますからぴったりかな?
しかし、ネボラさんは結構物騒な推理をしましたね。確かに人同士の争いは神は見逃しますからね。侵略とは思われにくいってのがあるのは確かでしょう。
さて次回予告ですが、ネボラさんはロッコさんに怪しい旅人についていろいろ聞き出そうとすると、全部教えてくれたのです。どうして全部教えたか?と尋ねたところ、とんでもない回答がありました!ロッコさんは何を考えてたのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




