遠征旅立ち編番外編-3.ネボラの過去 その3
軍事国家テーパーで年1回開催される闘技大会。優勝者には国王と試合をし、それに勝ってしまえばその時点からテーパーの王として認められる···。
この決勝トーナメントが始まった!
『普段通りリラックスしていればいいですよ。ここにいる全員···、国王も含めてあなたの敵ではありません』
「(無茶を言う···。私はそこまで強くはないぞ?)」
『確かに対人戦は対魔獣戦に比べて経験がほとんどないですからね。それでいいのです。慢心した時点で負けが確定しますからね』
「(試したな···?)」
『ははは!さあ、始まりますよ。試合中は助言なしで見させていただきますよ。特等席で』
どうやら師匠は私の目を通じて試合を見るようだ。師匠はこれまで私が魔獣と戦う時にピンチに陥った時のみ助言してくれていた。
試合中は助言しないというのは、私の実力で勝ち取れという事なのだろう。師匠は必ず筋を通す人だからな。
そして試合が始まろうとしていた。
「こんなお嬢ちゃんが決勝に来るなんてなぁ~!これは勝ち確だな~!」
「よろしくお願いします」
相手は槍だ。そしてかなり身長が高い。身長が高いということは腕も長いので槍の届く間合いが非常に広いことを意味する。
対して私は練習用の木剣。軽くて丈夫な剣で、片手でも振るえることができるのだ。
ちなみにこの剣は師匠がプレゼントしてくれた。ある寒い日の朝、枕元に置いてあったのだ。赤いリボン付きで···。
師匠が言うには『知り合いに聞いたのですが、プレゼントを贈る時は赤い何かをつけて枕元に置くのがいいらしいですね』とのことだった。
さらに練習用の木剣以外にも実物の剣まで置いてあったのだ。そのためにその日、孤児院は大騒ぎになってしまった···。深夜に泥棒が入った!とのことで兵士たちも駆けつける騒ぎになったのだったな···。
結局は盗まれたものもなく、私へのプレゼントが置いてあったというだけだったので兵士たちも引き上げるかと思ったのだが、実物の剣は没収されそうになったのだ。
まぁ当然だろう。孤児院の小さな子が持つにはふさわしくないからな。だが、この剣は私以外に持つことができなかったのだ···。
『ぐぉおおおおおーーーー!!···はあっ!はあっ!な、なんなんだよこの剣は!?重すぎてまったく動かないぞ!?』
『そんなにおもいの?ほら!もてるよ!』
『ネ!?ネボラちゃん!?それ重たくないのかい!?』
『うん!とてもかるいね~』
『···こりゃ回収はムリダナ。おそらくそれは『魔剣』というヤツだな···。認めた持ち主以外に扱えないという···。まさかこんなところで伝説の武器があって、ネボラちゃんが認められるなんてなぁ~。いいかい?それは普段から使わないようにね』
ちなみに今も帯刀している。というのも、ある一定距離を離れると剣が勝手に近くに現れてしまうのだ。あまりにも不気味なのでいつも持つようにしていた。ちなみにこの剣、鞘込みで私が成長したら長さが長くなっていた···。不思議な剣だが、あの師匠が作ったらしいのでそうなってるのだろう。
このあと、この剣は人形兵器相手の際に壊れてしまうまでは私の相棒として活躍してくれたな。
話が長くなったな。試合が始まった!
「悪いが一撃でさっさと終わらせるぞ!」
槍の男が槍を構えながら突っ込んできた。やはりリーチが長いから先制攻撃で私を倒してしまおうというところなのだろう。
なのでこちらはカウンター技で相手をすることにした。
「秘剣、芯月」
私は木剣を右斜め下に構えて槍を迎え撃った。鋭い突きが来たが、ギリギリでかわし、そしてカウンター技の芯月を放った!
振り上げた木剣が槍の真ん中付近に当たり、槍が大きく弾かれた!どうやら2撃目を考慮せずに突きを放ったので引き戻すこともできずに男はスキだらけになった。
「秘剣、水切り」
振り上げた木剣を今度は横薙ぎで男の胴を打った。そして男は前のめりに倒れこんでしまった···。
「そこまで!勝者、ネボラ!!」
「「「「わーーーーー!!」」」」
「ありがとうございました」
観客から大歓声を浴びた。どうも最年少記録の私が勝つとは思ってなかったようだ。というか、あの時は逆に私が大歓声にびっくりしたな!
『おめでとうございます。よくやりましたね』
「(···なんだか味気なかった。魔獣と戦うほうが緊張感があったな)」
『それはそれでまずい気もしますが···。まぁ、あの程度なら負けることはないですね』
「(ああ。どこまで進めるかはわからないが、いけるところまで行ってしまおうか)」
『ええ、その意気ですよ』
そして私が宣言した通り、いけるところまで行ってしまって優勝してしまったのだった···。
『予想通りでしたね。さあ、さっさとこの国の王になりましょうか』
「(なってどうするというのだ?王など興味ないが?)」
『今はそうでしょう。ですが···、なっておいて損はありませんよ』
「(どういうことだ?)」
『あなたが王になれば、孤児院は助かります』
「(だからどういうことだ?)」
『少しばかり調べさせていただきました。どうも反乱分子がいるようで、クーデターを企てていたようです。あなたが昔にさらわれかけたのもその一環ですね』
「(···なるほど。今の王だと反乱分子を抑えつけれないと)」
『そういう事です。いかにああいった方でも、光が強いほど闇も深くなる···。あなたならそういった連中を潰すのは容易です。だから孤児院も助かるのですよ』
「(師匠は中々あくどいな。私が王になったら、そういった連中が直接私を消しに来ると)」
『御名答。無論、今のあなたであれば全員返り討ちにできますからね。では試合前に一つ···。王と対戦する時は真剣の方でやりなさい。健闘を祈りますよ』
真剣···?確かに鎧を着込んでいるが、木剣ではダメなのか···?もしくは何かあるか···。
そんな事を考えてると場内アナウンスが流れた。
『皆さま!お待たせいたしました〜!ただいまより国王リタリーと史上最年少優勝者ネボラの試合を始めます!!』
「「「「わーーーー!!」」」」
もはや私しかいなかった控室から、私は外に出た。闘技場は立ち見が出るほどの観客がいて、大声援を送ってくれていた。この声援、果たして自分へのものか、国王へのものか···。あまりにも大音量なのでさっぱりわからなかったな。
そしてリングに上がった。
私が定位置に立つと、向かい側の控室から国王が出てきた。
白銀の全身鎧を着込んでいた。兜は着けてないので表情はよく分かった。腰には柄が黒い大剣を帯剣していた。
国王がリングに上がり、右手を軽く上げると騒がしかった闘技場が急に静かになった!
「ネボラ···、だったな?よくぞここまで勝ち上がってきた。初出場にして最年少の戦士よ」
「···お褒めに預かり恐悦至極に存じます」
「孤児院出身とのことだな?よくそこまでの教養を身につけたものだ。院長の教育の賜物だな」
「はい。それと···、私に武術を教えてくれた師匠のおかげです」
「ほう···?それは情報にないな···。まぁいい。ここまでの試合はすべて見せてもらった。剣技は見事なり!我が親衛隊に抜擢したいと考えている」
「「「「おおお〜〜〜!!」」」」
親衛隊···?王直属の護衛部隊か···。なるほど。そういうのも悪くは無さそうだな···。
だが私の答えは···。
「大変嬉しい申し出ですが辞退させていただきたく存じます」
「···なぜだ?騎士よりも上位の特権が得られるのだぞ?国王自らスカウトしているというのに?」
「理由は···、気分を害されてしまうことをお許しいただければ」
「構わん。話せ」
「···この勝負、私が勝つからです」
私は真剣を抜剣した。
一方の国王は微動だにせず。そして···!!
「ふふふ···。ははは···!あっはっは!!」
大声で笑った。そしてひとしきり笑い終えたあと、腰に帯剣していた大剣を抜剣した!!こちらも真剣だ!
「その意気やよし!だが、これだけは覚えておくがいい!いかに剣技が素晴らしくても最年少!経験に勝るものはないと!!」
「ええ、そのとおりです。その経験に···、挑ませていただきます!!」
こうして国王との試合が始まった!
エマさん、ネボラさんへのプレゼントはなんとクリスマスプレゼント方式でした(笑)!
そんな風習はエーレタニアにはありませんので、そりゃ朝起きて真剣が枕元にあったら大混乱になりますよね~!どこから侵入したのか!?とかになってしまいますからね。
ちなみにこの剣は神器ではなく魔剣です。そのために人形兵器相手の際に壊れてしまうんです。さすがに神器ほど耐久力はありませんので仕方ないですね。
さて次回予告ですが、ついに王様と対決することになりました!相手は軍事国家テーパーの王。実力は一番です!人並外れた猛攻がネボラさんを襲います!しかしあまりにも人並外れていたのでネボラさんは何かあると感じ取りました。国王の強さの秘密とはなんなのでしょうか?
それではお楽しみに~!




