遠征旅立ち編-27.ウルサちゃんの一家
海辺の町で宿泊しようとすると、オレたちに声をかけてきた子がいたんだ。
ウルサちゃんという女の子だ。そして、その子の問いに答えたレグスがいきなり試合をすることになったんだ。
結果はレグスの勝利だった。
ここまでが前回のお話だ。
「レグス!お前、どこでそんな技を教えてもらったんだ!?」
「うちの近所に住んでるドラゴン族のおじさんだよ。剣術はママからだね〜」
今、オレたちは宿の酒場で食事中だ。ウルサちゃんはレグスの横に座って、いっぱい話をしている。
そして、オレの前にはウルサちゃんの家族が座ってるんだ。お父さんとお母さん、そして弟くんだ。4人家族で旅をしてるそうだ。
お父さんがアルクさん、お母さんがティスさん、弟くんがアイルくんだ。みんなウルサちゃんと同じく銀髪に黒髪が混じってるんだ。体格はお父さんが大きい。お母さんは細いんだが、手足の筋肉がすげえな!アイルくんも結構いい肉付きをしてるな!
やっぱり修行目的で旅してるだけはあるな!まぁ、うちも似たようなもんだ。子どもたちも最近はうっすらと筋肉が見え出している。
「本当にうちの娘がご迷惑おかけしました!ケガさせていたらと思うと···!」
「いえいえ!うちのレグスも楽しかったようですから。まったく気にしてませんし、こんなに仲良くしてもらえてますから。ははは!」
「そうネボラさんに言っていただけるとありがたいです。しかし···、うちのウルサが負けるとは···。まだ幼いですが、魔獣退治もやってのけるほどの戦闘センスがあるので、自分が強いと考えてしまっていたのでしょう。しかし、上には上がいるということを勉強したのは本当に感謝してますよ」
「それはこちらもだ。うちも、一家以外で同じ年齢でウルサちゃんほどの実力者がほとんどいなかったのでな。こうして自分に並び立てる人がいるということを知れただけでもいい出会いだったと思うぞ」
「そう言ってもらえるとうれしいですなぁ〜!」
ちなみに今、テーブルの上には天板が見えないほど料理の皿で埋め尽くされている。その大半をアルクさん一家はどんどん平らげていった!うちの3倍は食ってんな···。そりゃ体格もデカくなるよな。
うち?···エレが少年よりちょっと高いぐらいの背丈で設定しやがったから子どもたちも小さいんだよ。まぁ、うちの一家にとっちゃ小柄でも関係ねえからな。
「それで、ネボラさんたちは魔獣退治の旅とのことですが、どうしてそんな危険な旅をされてるのですか?興味本位で聞いてしまってはいますが···」
「ああ。特に問題ない。修行という意味ももちろんだが、やはりこれだけ力があるのだ。この魔獣だらけの世の中、少しでも良くしたいという思いが一番だな」
「素晴らしいですな!実はうちも似たようなものなんですけど、ちょっと事情が異なってましてね」
「それを言ってしまわれていいのか?赤の他人に話していいようなものとは思えんが···?」
「いえ、これは我が一家の宿命みたいなものでしてね···。こうやっていろいろ話してみて、話してもいい相手なら話すことにしてるんですよ」
「そこまで買ってくれても返せるものがないが···」
「ははは!お気になさらずに。実は···」
ここから先の話はオレたちにとっては結構重大な問題だったんだ···。
「実は···、我が一家は···、この世界の人間じゃないんですよ」
···マジか!?オレは立ち上がって問いただそうとしたその時!ネボラが瞬時にオレの肩に手をかけて『待った』をかけてきた!
何か考えがあるようだな···。とりあえずイスに座って話を最後まで聞くことにしたんだ。
「···『外の理の者』ということか。しかしそんなヤバい情報を、私たちに言って問題ないのか?この世界では恨みを持ってる者が多いぞ?」
「ええ、承知の上です。我が一家は···、敗北者ですからね」
「敗北者···?」
「言葉の通りです。侵略にやってきたはいいものの、この世界の神が用意した空飛ぶ兵器が、我が世界の兵士たちを蹂躙しました。私たちはなんとか生き残って、この大陸に逃げ出してきたんですよ。この子たちはこちらで生まれたんです」
「そうか···。大変な目に遭ったのだな」
「ははは。いえ、大変な目に遭って当然でしょう。私たちは侵略者だったのですし、この世界には大変申し訳なく思ってますよ」
「ではなぜ、魔獣退治なんてやるのだ?」
「戦闘種族だったからというのもありますが、罪滅ぼし···、なんて言葉は軽いですよね?」
「いや、やってることはこの世界にとってはありがたい事だ。とても崇高な考えだと思うぞ。ちなみに···、元の世界に戻れる手段があるとしたら···、どうする?」
「ははは。元の世界に戻れるとしても戻りませんよ。私たちは敗北者です。結果が出せなかった者の末路は···、『死』でしたから」
「それは···!なんとも厳しい世界だな」
「そうでもしないと世界が成り立たないぐらい追い詰められていた環境だったというのもありますね。この世界ほど余裕がなかったんですよ」
「この状況で余裕なんて言葉が出るほどか···」
ウルサちゃんたち一家の事情はわかった。ネボラじゃなきゃ、ここまで聞き出せなかっただろうな。オレだったら最後まで聞かずに送還してしまったかもしれんよ。
「しかし···、ここまで赤裸々に話をするとは思いもしませんでしたね。ネボラさんたちはもしかして···?」
「レオ?話していいんじゃないか?この家族は大丈夫だぞ」
「···ああ。そうだな」
「え?本当に異世界人なのですか!?」
ここからはオレが答えた方がいいな。ネボラからバトンタッチだ。
「いや、オレはこの世界の神に魔獣退治と異世界人追放の役目を持たされて創り出されたんだよ」
「な!?ま、まさか!?神の遣い!?」
アルクさんに大声出されたけど、ここは酒場で周りがうるさかったから、誰もこっちは向かなかったな。続きを話すか。
「その通りだけど、あんたらの事情はわかった。殺すことも送還もしねえよ。安心してくれ」
「で、ですが···。私たちは侵略者だったのですよ?」
「過去の話だろ?それに侵略ったって、指示出されて従っただけだろ?魔獣退治手伝ってくれてんだ。ここで害するなんて、こっちにとっちゃ百害あって一利ナシだろ?それに···」
オレは仲良くしているレグスとウルサちゃんを見てから···、
「こうしてうちの子とこんなに仲良くしてくれてんだ。この仲を引き裂くなんて所業、親としてもやりたくねえよ。だから、あんたたちはこのまま頑張ってくれればそれでいいさ」
「···ありがとうございます!」
この世界にやってくる連中にはいろんなヤツがいる。
この人たちは自分たちがやった罪をちゃんと理解していた。そして自ら罪滅ぼしと言って頑張ってるんだ。
こういうエーレタニアにとっていい人たちが多いのなら苦労しねえんだけどなぁ〜。
ウルサちゃんの一家はこの世界の人たちではありませんでした。
命からがら逃げてきたんですね。ただ、逃げてきた人たちの中にアルクさんのような考えを持つ人はほんのわずかです。だいたいが魔獣に食べられてしまうか野盗化してしまうんですよね。
というのも、すべてを失った状態で生き延びようとした場合、サバイバル経験がないと奪うことしか生きる手段がなくなってしまうからなんです。
日本は災害大国なので何かしらの災害を経験されている方が多いかと思いますが、自宅が住めなくなって避難となってしまった場合にいきなりサバイバルってできますか?食料、水の調達を独自でできますか?震災経験者である作者はある程度サバイバルできるよう準備はしていますが、それでも備蓄食料が尽きれば避難所行かない限り万事休すです。備蓄以外食料調達の手段がありません。
だから仕方なく奪うという行動になってしまうんです。かなりリアルな話ではありますが、戦争の敗北者が野盗となってしまうにはこういう切実な理由があるんですね。だからって奪うことはダメなのは当たり前なんですがね。
アルクさんは戦闘種族で魔獣狩って食料調達ができたために自活ができ、こうして食糧調達と後悔の念でこういう旅をやってるんです。やはりサバイバル手段を持ってる人は強いですよ!
さて次回予告ですが、本作史上最大の問題エピソードです(笑)!アルクさん一家と仲良くなって食事を終えたレオくんたちですが、なんとウルサちゃんがレグスくんと一緒に寝ることになりました!まだお互い6歳なんですけど、レグスくんは一緒に寝るという意味がわかっておらず、一方のウルサちゃんは顔が真っ赤になってました!そしてレグスくんとウルサちゃんが部屋に入って寝ようとすると···?何も起きないわけがなく···!?そして翌日にレグスくんは部屋でやった事を堂々と報告しちゃいます!
おい作者!?これマジでええんか!?ってな内容になってますが、どうぞご安心ください。本作は小学生が読んでも大丈夫な作品です!···大丈夫だよね?
それではお楽しみに~!




