遠征旅立ち編-20.レグスの不安
「我輩の名はロビナ。この世界を滅ぼすために神によって創られた者だ!」
ネボラの予想が当たってしまったんだ···。オレと同じような存在が現れるなんて!
「なぜ滅ぼしたいんだ?」
「貴様らは知らんだろうが、かつてこの世界の連中は我輩の世界に侵攻し、多くの国を滅ぼしたのだ!その神に対抗すべく創り出されたのが我輩だ!そして、憎き神をこの剣でバラバラにしてやったのさ!」
「なんだと!?」
マジか!?こいつ、エレの前の神を殺しやがったのかよ!?
あのまがまがしい黒い剣で斬ったのか···。神は通常の攻撃で殺すことはできねえんだ。『神殺しの剣』という、特殊な剣でないと···!?これがそうなのか!?
「侵攻は止まり、兵士たちも全員殺した。しかし!我輩の世界は崩壊寸前まで追い込まれたのだ!罪もない多くの人々が犠牲となったのだ!その怒りはどこに向けるべきか!?そう!同じ苦痛を味あわせてやればいいのだ!だからこの世界を滅ぼしてやるのだ!」
「···なるほど。気持ちはよく分かるわ。私も国を滅ぼされたのだから···」
「はっ!貴様らの感情など知ったことか。さあ、ご褒美は終了だ。ここの連中同様に、貴様らを滅ぼしてくれるわ!」
またロビナが姿を消した!そして次の瞬間!ネボラの前に再び現れて一閃しようとしたところにオレが割り込んで入った!
「なんだ貴様は?そういえばさっき横にいたな」
「ああ。悪いが、アンタらの復讐には付き合いきれねえんでな。これ以上は止めさせてもらうぜ」
「はっ!一度止められたぐらいで調子に乗るなよ!」
「お前がいた世界では守る役割だったはずなのに、今は侵略する役割だぁ?お前こそ調子に乗るな!」
「やかましい!なら貴様から血祭りにあげてやる!」
「やれるもんならやってみやがれ!ネボラ!子どもたちを下げろ!このバカ野郎はオレが相手する!」
「レオ!気をつけろよ!」
「わかってる!手を抜いたら···、その場で終わっちまいそうだからな!」
オレと同じ存在···。しかも役割は一緒だった。
だが!その力をこんな事に使うなんてバカげてるんだ!そんなヤツにオレは負けねえ!負けるわけにはいかねえんだぁーーー!!
「うぉおおーーー!疾狼剣!!ハヤブサ!」
スピード重視の剣技を放った!真のトランス状態だと剣速は音速を超えて衝撃波も伴うんだ!
「な!?なんだこの威力は!?くそっ!」
「そらそらそらぁーーー!!」
「おのれ!」
ロビナはオレから距離をとった。オレもいったん仕切り直しで剣を振るうのを止める。
「貴様のその武器···、神器だな?それに···、最初の時と姿が違う···?まさか···?貴様もか?」
「ああ。オレはこのエーレタニアをお前らみたいな連中から守るために創り出されたんだよ」
「ふふふ···。そういうことか。我輩と同じ輩が存在するとは···」
「見たところ、お前の力は有限だな?動きが少しずつ悪くなっていたな。オレは龍脈の力を常時得れるんだ。このままやり続けたらお前の勝ち目はねえぞ?これ以上、この世界の人たちを害さないというなら見逃してやる。だが、まだ侵略を続けるってなら···、ここでお前を倒す」
「ふんっ!バカにするなよ?だが···、ただの遊びだと思っていたら思っていた以上にこちらが不利だったな···。悪いがここは退かせてもらおう。まだ死ぬわけにはいかんのでな」
「オレが見逃すと思うのかよ!?させねえぞ!」
「ははは!また会おう!この世界の生物兵器よ!」
そうロビナは捨てゼリフを残してこの場から消え去ったんだ···。
「···ちっ!本当に追えねえなんて!」
「レオ」
「ああ、ネボラ。わかってるさ。ヘタな深追いはやめておいた方がよさそうだな」
「ああ。しかし···、これはかなりマズい状況だな···」
「確かに。まさかオレと同じ存在がいるなんてなぁ〜。まぁ、エレがオレを創れたんだ。ほかの神ができねえなんて話にはならんだろうしな」
「そうだな···。となると、ほかにもいるかもしれんな···」
「考えたくねえな···。これもエレに相談しなきゃならねえな」
「神にはまだ連絡は?」
「まだ音信不通だ。あいつのところも相当押し込まれてるかんじがするぞ···」
そう、エレに連絡しようとすると『ただいま留守にしております。ピー!というオレの声の後にメッセージをどうぞ。ピー!』ってエレの声が流れるだけなんだよなぁ〜。
とりあえず危機は去ったので、オレたちは城で亡くなってしまった人たちを火葬してやることにした。
探したところ、そんなに人数は多くなかったんだ。兵士はほぼいなかった。おそらくほぼ全員魔獣襲撃対応に駆り出されていたんだろうな。
火葬を終えて、今日はこの城で泊まることにした。幸いにも客室には被害がなかったし、厨房もそのままだったので、食料庫の食料も全部いただくことにした。このまま放置していても腐っちまうからな。勝手だが火葬代にさせてもらうぜ。
夕食を厨房で作って食べようとした時、子どもたちは食べようとしなかった···。どうしたんだ?
「どうした?調子悪いのか?」
「パパ···。あの人···、パパと同じなの?」
「ん?あ〜、レグス。あいつがそう言うならそうなんだろうな」
「パパも···、ああなっちゃうの···?」
「へ···?んなわけねえだろ?どうしてそう思ったんだ?」
「···あの人、思いっきり怒ってたから」
「いくらオレが怒ったからって、あんな事はしないぞ」
「でも···、でも!もしぼくたちやママが···、人間に殺されちゃったら···?」
「なっ!?そ、それは···」
「ぼく、不安なんだ···。もし、ぼくだったら···、目の前でパパやママが殺されちゃったら···。ああなっちゃうんじゃないかな?って···」
「············」
レグスの不安はもっともだ。
ロビナの行動は、完全にこの世界に対する怒りだった。
しかもオレと似た力を使う。となると···、怒りに任せてこんな事をやっちまうっていう可能性はあるんだ。
それをレグスは怖がっている。レグスたちも真のトランスに目覚めた。けれども、その力を正しく使えなかったら···?それが今、子どもたちを不安にしているんだろう。
オレがどう答えようか?と考えていたその時、ネボラが言った。
「レグス。その不安は正しいぞ」
「え···?正しい···?」
「ああ。確かにレグスの言うとおりだ。おそらくレグスの予想通り、レオは怒り狂って世界を滅ぼすだろうな」
「おい!?ちょっと待て!オレは!」
「やってしまう可能性があるというだけだ。もちろん、レオはやらないと信じているが、それは理性で普段抑えているからだ。しかし、そういった状況になった場合、人は誰しも理性が吹っ飛ぶ」
「············」
「だからこそ、力を持つ者は高い倫理観が求められる。怒りや憎しみは人でなくても魔獣ですら持つ基本的な感情だ。コントロールしろなんて口ではたやすく言えるが、実際にそれができる人間はほぼいないだろう。そんな人間ばかりだったら争いなど起きるわけがないからな」
「············」
「まぁ、簡単にできる対策はあるがな」
「へ···?あんだけムリな理由を挙げといて、あるのかよ?」
「ああ。ものすごく簡単だ。私たちが殺されなければいいのだよ」
「あっ!?そっか〜!」
···本当に簡単だな。レグスは声を上げて納得していた。フェアもアルもルエルも、思いっきり納得していたんだ。
「だから、まずは自分の身を守れるようにするんだ。そのための力はある。自分の身を守りつつ、ほかの人を守れるようになるんだぞ。いいな?」
「「「「はいっ!」」」」
まぁ、確かに子どもたちも真のトランスになれるんだ。ネボラの言った通りになってくれれば、オレとしては思いっきり戦えるって事だな。
なんとロビナくん、エレくんの前の神を倒した子でした!
番外編1にてエレくんの前の神は某RPGのようにバラバラにされてしまったって書きましたが、やったのがこのロビナくんでした。レオくんにとっては非常にやっかいな敵が現れたことになってしまいます。
そしてレグスくんはレオくんと同じ存在がいて、しかも敵側で強烈な復讐心を持ったロビナくんを見て不安になってしまいました。ですが、それを払しょくしてくれたのはネボラさんでした。いやホント、ネボラさんはすごいですよね~。ここまでのキャラになってくれるとは思いもしませんでした。
そしてネボラさんは『感情をコントロールできる人などいない』と言い切りました。世間ではアンガーマネジメントだのいろいろありますが、そんなもので簡単に人の感情をコントロールできるわけありません。もしできたとしたらそれはもう人間じゃないと思いますよ。
まぁ多少振れ幅を抑えることはできるでしょうけど、その反動でいつかどこかで爆発し、最悪廃人になる可能性もありますので、皆さまも適度にガス抜きはするようにしましょうね~!
さて次回予告ですが、次の訪問先は白銀竜の集落レジストです。ティールさんにはお世話になってるのであいさつに行きますが、どういう対応をされるのでしょうか?
それではお楽しみに~!




