遠征旅立ち編-18.人の闇
「シメラー王、世話になったな」
「いえ、もうしばらく滞在していただければよかったのだが···」
「長居はこちらの国の運営に支障をきたすし、我々もほかの国の様子を確認するという目的もあるのでな。また来る機会があれば寄らせてもらおう」
「ええ。次の機会を楽しみにしているぞ!」
メッセンの城から出る前に、オレたち一家はメッセンのシメラー女王にあいさつをした。
なんだか雰囲気がネボラに似てたなぁ〜。女王って立場になると、こういう性格でないとダメなのか?よく分からんが。
城を出て町を通って門へ向かった。町は結構建物が壊れており、住民たちは避難しているので、ほとんどいなかったな。
ネイレの時もそうだったが、ここから復興って大変だなぁ〜。
「そういや、ここに来るまでにいたあの避難民たちって、あのあとどこに向かったんだろうな?」
「おそらくクリートだろう。トロリーは反対側だからな。この周辺だとこの2つぐらいしかあの人数の受け入れは不可能だな」
「そっか···。んじゃ、次はトロリーだな」
「そうだな。予定通り向かうとしよう」
門では全員敬礼して見送ってくれた。
「我が国を救ってくれた英雄たちに!敬礼ーー!!」
「えっ!?えっ!?」
「え、英雄〜〜!?」
「魔獣倒しただけだぜ?」
「でも···、なんだか嬉しいよね〜!」
レグス、フェア、アル、ルエルは驚きつつも、ちょっと照れてたな。まぁ、自分たちがやった功績が、こうして認められるって事を知っておくのも大事だよな。
ただネボラは笑顔ではあったが、少し様子がおかしかったな···。何かあったのか?
そして、門を離れてからオレは聞いてみた。
「おい?さっき門で笑顔に見せかけて微妙な顔してたよな?」
「ん?あぁ〜。まぁ、気にしないでおけ」
「やっぱなにかあったんだな?」
すると、ネボラは声を低くして若干イラっとした声でそう言ったんだ。
「···胸くそ悪い話だぞ?」
「え?どういうことだ?」
オレがそう言うと、ネボラはオレの耳元で小声で言った。
「(···レグスを狙ってるヤツがいた)」
「な!?」
「(矢を撃とうとしていたが、私がにらんだら隠れたな)」
「············」
「(そういう事だ。兵士たちの中には功を取りたいという連中もいる。要するに、私たちに横取りされたって思い込んでるのさ)」
「(···あの状況で?)」
「(ああ。人の中にはそんなバカな事を考える腐った連中もいるんだ。他人を蹴落として自分だけが這い上がっていい思いをしたいとな。だから逆恨みして狙ってもおかしくはない)」
「(マジで胸くそ悪いな···)」
「まぁ、ここには来ない方がいいな。時間が経てば、さらにこじらせるのは間違いなさそうだ」
「だな···」
ちなみにこのあと、このメッセンは本当に滅びたんだ。女王は相当引き締めにかかって立て直そうとしたものの、腐敗には勝てなかったらしく逆にクーデターが起こされて、その直後の魔獣襲撃でやられちまったそうだ。
だから、オレたちは二度とメッセンを訪れることはなかったんだ。
人間にもいろんな連中がいるってのはわかってはいたさ。だが、こうして実際に悪意を向けられるとなぁ~。神から託されてオレたちが守ろうとしている人間に、背後から撃たれるかもしれんってのは、戦う気を削がれてしまうな···。
そういえば以前、ネボラはこう言ってたな。
『表立って握手をして友好関係を結んでいるように見せかけて、握手をしてない反対側の手にはナイフを隠して握っていると思わないといけない』
あの時は流したが、実際になるとその怖さが身にしみて理解できたわ。これはオレではわからんなぁ〜。
そんな事を考えていたら、オレの横にレグスがやってきたんだ。
「ねえねえ!パパとママ、なに内緒話してたの〜?」
「ん?あ~、え~っと···」
「今日の夕食のリクエストをしていたのだ。夕食まで内緒にしておくと楽しみだろ~?」
「あ~!そういうことか!それで、ママは何をリクエストしたの?」
「ははは!内緒話をしていたのだから言うわけないだろう?夕食までの楽しみにしておけ」
「え~!?まぁでもいいか!パパ!楽しみにしてるね~!」
「お、おう!任せておけよ~!」
オレが答えに詰まってたらネボラがうまくやり過ごしてくれたな。助かったぜ!
だが···、今日の夕食どうするよ?普通の内容だったらレグス、がっかりするよなぁ~。考えておかねえと···。
そうしてそこそこな速さで歩き、軽く昼食を済ませて再び歩いた。
そして夕方になり、今日は道の横でテントを張って休むことにしたんだ。
ちなみにこの日の夕食はスペシャルメニューとしてカレーを出してみたんだ!実はメッセンでは補給の際に香辛料をもらうことができたからだ。
ただ、レシピはエレの知識からなんだが、香辛料がエレの知識にあるものとはまったく違うんだよなぁ~。だからどんな味になるかはオレもまったくわからん!
だが、煮込んでいるとなかなかいいにおいがしてきて食欲がそそられたんだ。これはいい出来になったか?
そして実食!!
「「「「おいし~~~!!」」」」
「レオ!これはすごくうまいぞ!」
「本当だな!これはいい出来になったぜ!」
味はエレの知識とは違うかもしれねえけど、ものすごくうまかった!夕食を楽しみにしていたレグスもニコニコだ。レグスの期待に応えられてよかったぁ~!
そして夜も更けて、子どもたちが先に寝た。
「············」
子どもたちの寝顔はかわいいものだな。オレは親として、ちゃんと守れているのだろうか···?
そうしていると、ネボラがオレの肩を叩いて外に出るよう促してきた。
外は明るかった。今日は満月だったな。雲一つない、いい天気だからなおさら明るく感じたんだ。
「レオ。やはり朝の件で考え込んでいたな?」
「···まあな」
「はぁ~。だから言わなかったというのに···」
「いや、やっぱ真実は知れてよかったよ。知らなかったら···、今後も子どもたちを危険な目に遭わせちまうからな。そういう意味では、今回オレは子どもたちを守ってやれなかったな···」
「気にするな。···と言いたいのだが、その様子ではムリがあるな。だが、だからといってあそこで魔獣を殲滅しないという手はないだろ?」
「当たり前だ。それがオレの使命だからな。だけど···、こ」
「レオ。それ以上は言うなよ?」
「れは···。って!?」
「レオが言おうとしていることはわかってるわ。『これはオレ自身の使命だから、お前と子どもたちは関係ない』とでも言うつもりだったのだろう?」
「···なんで一字一句全部当ててきやがるんだよ?」
「ははは。夫婦だしな。レオは昔からその考えをしていたから、当然わかる」
「············」
「気持ちはわかるが、それは子どもたちには絶対に言うなよ」
「なんで?」
「レオも聞いただろ?子どもたちの決意を」
「あ···」
確か、『これからはパパと同じようにぼくたちも戦うよ!パパを今度はみんなで助けるからね!』ってレグスは言ってたな···。
「レグスたちはレオと同じ力を使えるようになったんだ。それは、レオとともに戦いたいという純粋な気持ちからだ。だから···、その決意をムダにするような事は言うなよ。それは子どもたちに対する信頼の破壊と反逆だからな」
「···そうだな。ありがとよ。今後はオレは子どもたちに対する悪意にも立ち向かうとするわ。親としてな」
「ああ、そのことは私に任せておけ。レオはこれまで通り暴れてくれればいいからな」
「なんでだよ?」
「人には得手不得手がある。私はそういった対処は王だった時の経験で慣れてるからな。人の悪意を気にしすぎると、誰も信じれなくなる。そんな環境で暴れるというのはムリがある。レオは戦闘に集中してくれ。役割分担だ」
「···お前も気を遣ってくれたんだな。ありがとな」
「ははは!やっと気づいてくれたな!レオをサポートするのが私の役割だ。これからも頼むぞ」
「それはオレのセリフだ!」
「「ははは!」」
昨日も感じた事だったけど、オレは幸せだな···。オレを支えて助けてくれる人たちがいる···。これほど心強いって思ったことはなかったんだ。
いつの世の中にもこういった腐敗した考えを持つ人はいます。
特に輝かしい業績を残してしまうと、それに嫉妬してこういった行為に出てしまうことがあるんですね。まったく意味のないことなんですが、やってる側としては抑えが効かないんでしょう。あるいは今まで築いてきたコネや権力を奪取されてしまう状況を潰したいというのもあるでしょう。
そしてレオくん一家もその標的となってしまいました。ネボラさんが言った通り非常に胸くそ悪い話ですが、これが人間の闇の部分です。
ですが、ネボラさんはこの闇を子どもたちに当てないようにしました。さすが元軍事国家の女王でしたからこういったことは日常茶飯事とまではいきませんがありましたからね。
いやホント、ネボラさんはスゲェ人ですわ···。このお話も書いた後で久々に鳥肌立ちましたね。
さて次回予告ですが、次はトロリーの国へ向かいますがなんとすでに滅ぼされていました···。大国だったのに···。
そして国の中に入って状況を確認していると、とあることに気づきます。そしてそこに1人の少年が姿を現します。いったい誰なのでしょうか?
それではお楽しみに~!




