殲滅編-4.私はレオの家で寝泊まりさせてもらう
翌日の夕方前に、オレたちはネイレに着いた。トランス状態でネボラを抱きかかえて走ったからな。それなりに時間はかかっちまった。
ネイレの門の手前では、テーパーから避難してきた人たちが待機していた。どうやらネイレの中には入れてないようだ。とくに混乱していないところを見ると、納得して待機しているようだった。
「レオ、下ろしてくれ。みんなのところへ行かせてほしい」
「わかった。あんまりムリすんなよ?」
「わかっている。これは、王としてのけじめだ」
そしてアイツが避難民のところへ行くと、すぐに気づかれた。
「剣聖様!?」
「ご無事でしたか!」
「テーパーは···?どうなったのですか···?」
すぐに囲まれていろんな質問をぶつけてきていた。ムリもねえか···。どうなったかみんな知りたいだろうからな。
しかし、ネボラの口から出た言葉で、みんな絶望してしまったんだ···。
「みんな···、本当に済まない···。私の力不足で···」
「そ、そんな···」
「こんなことって···」
「ああ···、どうして···、どうして···?」
「うわああああーーーーー!!」
「本当に申し訳ない···。あなたたちを逃がすだけで精いっぱいだった···。なんとか時間稼ぎをしようとしたのだが、相手に押されてしまい···。いや、これは言い訳に過ぎない。すべては私の責任だ。許してくれとは言わない。罰したいならそれでも構わない。好きにしてくれ」
ちょっと待て!?アイツ、何を言い出してんだよ!?バカな事言うんじゃねえ!
アイツが言った内容で避難民たちは泣き崩れたり、落ち込んでしまったんだ···。そんな状況でそんな事言ったら、場合によっては命の危険もあるぞ!?
そう思ってアイツの元へ急いで行こうとすると、
「女王様···。顔を上げてくだされ。ワシらは···、あなた様が必死にワシらを助けようとしてくれたことをちゃんと見ておった。そうご自身を責めなさるな···」
「ネボラちゃん···。つらかったでしょう?国が滅ぼされて、みんなくやしいしつらいんだよ···。だけど、それをやったのはネボラちゃんじゃないでしょ?」
「悪いのはあのデカイ人形なんだ!」
「み、みんな···。ありがとう。だが、もう私は女王ではない。それはわかっておいてくれ」
···どうやら杞憂だったようだ。アイツが文字通り命をかけてボロボロになるまで時間を稼いでいたんだ。それを知ってる人たちがいたのは幸いだったな。
というか、アイツが女王様だってみんな知ってたんだな。気を遣って言わなかっただけのようだった。
そうしていると。門からおっちゃんたちが出てきた。
「おお、レオ!戻ったな。それと···、ネボラ王。ご無事でなによりでした」
「フリード将軍···。このたびは貴国に多大な迷惑をおかけした。国が滅び、もう私は王ではなくなってしまったが、元一国の元首としてお詫びする」
「そこはお気になさらずに。今後についてお話したいことがあるので、お手数ですがご同行願えますでしょうか?」
「もはや私は王ではないので、そうかしこまらなくてもいいぞ」
「ですが、しばらくはこの避難されてきた方を率いていただかねばなりません。しばしお許しを」
そうしてオレとネボラはおっちゃんと一緒に門に向かい、そこの会議室で話し合いをすることになった。
「さて、単刀直入に今後の話をさせていただきたい。避難されてきた方たちはすべてネイレで受け入れる準備を進めています」
「え?おっちゃん?全員受け入れて大丈夫なのか?」
「···これはネボラ様の前では大変言いづらいことなのだが、避難民の数が想定していたよりもはるかに少なすぎるのだ。去年、レオが来た時にここが襲撃されていただろ?その時の犠牲者の数よりちょっと多い程度なのだ。だから、受け入れは全員可能と王も判断された。今後は空き家を使ってもらうよう、今リストを作っているところだ。急ピッチで進めてはいるが、かなり時間がかかりそうなのでいったんは避難所に入っていただいて、そこで今後の仕事のあっせんと入居まで待機という形にしたいと考えている。いかがだろうか?」
「それで構わない。いや、そこまでしていただけて感謝する。私は最後の1人が決まるまでサポートをお手伝いさせてもらいたいが、構わないだろうか?」
「むしろこちらからお願いしたいところですな。申し訳ないがご説明もお願いできるだろうか?」
「ああ。任せてほしい。それと、兵士についてはここの兵士として使ってもらいたい。構わないだろうか?」
「そうしていただけるとこちらとしても助かります。ネボラ様については当面の間、お城に部屋を用意しておりますので、そち」
「いや、それには及ばない。私はレオの家で寝泊まりさせてもらう」
「らに···?はっ!?ネボラ様、今なんと?」
「ちょ!?お前!?」
おっちゃんが城に部屋を用意したって話をしてる最中にコイツ、割り込んでさらっととんでもないこと言いやがった!
「なに、レオの家は前回泊まって勝手は知ってるのでな。···こんな状況だ。私だけ城でぬくぬくと過ごすなんて私自身が許せんのだ。王の気持ちはありがたいが、これは譲れぬ。わかってくれ」
「そ、そうですか···。レオ?失礼のないようにな」
「おっちゃん!?何でオレなんだよ!?勝手に決めたコイツが失礼だろうが!?」
「い、いや···。それはだな···」
「ってか、なんでお前もオレのところに泊まるなんで言い出しやがるんだよ!?さっきの長ったらしい理由は建前だろ!?」
「その通りだ。だが本音はここではまだ言えん」
「あっさりと認めやったな!?しかも言えないだって!?勝手なヤツだな~!」
結局は押し切られてしまい、ネボラはうちで寝泊まりすることになってしまったんだ···。そういえば以前泊まった時のベッドって、まだオレの無限収納リュックに入ったままだったな。その心配はないか···。って、何を別の心配してんだ?
とりあえず方針は決まった。全員受け入れ可能だったのは不幸中の幸いだ。
しかし、あまりにも犠牲が大きすぎた···。万を超える人たちが犠牲になっちまったんだ。あの人形兵器を送った連中は絶対に許さない!そう心に決めた。
ネボラは話し合い終了後に避難してきた人たちに説明をした。全員受け入れ可能と聞いてみんな安堵していたな。
とりあえず直近で命の危険は回避できたんだ。立ち直るにはかなり時間がかかっちまうだろうけど、これからは共同戦線を張らなきゃならねえ。いつ、うちに攻めてくるかわからんからな!
···ここはレオがいるネイレから遠く離れた地。そこは照明などなく、モニターの明かりだけで部屋が少し明るいといった部屋だった。
その部屋には4つのモニターがついており、机の上にはキーボードとマウス、そして食べ散らかした食事の空き箱が散乱していた。いわゆるごみ屋敷に近い状態の乱雑な状況だ。
そしてその前には少年の姿をした人がゲーミングチェアに座っていた。キーボードをたたきながら何かをやっていると、モニターから通知音がした。
「···え?全滅しちゃった?『ノイドス』10機と『サエリア』1機も投入したから、ちょっとオーバーキルに近いかなぁ~?って思ってたのになぁ~。で?どんな兵器を持ち出したんだ?文明レベルが低いこの世界で、あれに勝てるなんて神の兵器っぽいあのチートな空飛ぶ城ぐらいだと思ってたのに、ほかにもあるのかよ?」
そう言ってその少年はキーボードとマウスを使ってコマンドを打ち込んだ。そしてモニターに表示されたのは···、
「···へ?人?あの『ノイドス』を斬った···?無茶苦茶だよ···。あんな女がこの世界にいるのかよ···?あんなの、ボクの世界にもいないぞ?···ん?もう1人?···なんだコイツ?変身した···?ちょ!?なんだよ!?あの攻撃は!まさか···!?この世界の神め!今度は生物兵器を投入しやがったのか!」
ダンッ!!
少年は机にこぶしを叩きつける。すぐそばにあった食事の空き箱が床に落ちたが、まったく気にした様子はなかった。
「くそっ!思ってた以上に抵抗しやがるな!こんなに文明の遅れた世界だったら、『余裕で乗っ取れる』って聞いてたのに!話が違うじゃないかよ!?ガセじゃねえかよ!あの野郎!ボクをだましやがったな!」
少年は激怒した。『こんなはずじゃなかった』との思いが、少年をイラつかせていた。そしてしばらくすると···、
「···いいさ。お遊びはここまでにしようか。難易度がイージーな戦略ゲームだって思ってたけど、ヤメだ。ここからは全力で乗っ取ってやる!あの野郎、ボクをだましたことを後悔させてやるよ。ふふふ···」
開き直った少年はキーボードをたたく操作を再開したのだった···。
ネボラさんは王ではないと宣言しました。
こうしておかないとネイレの内部にテーパーの人たちの集まりができてしまい、内戦などに発展する可能性があるからなんですね。
ネボラさんとしては『ネイレで受け入れてもらう以上、ここのならわしに従うこと』という意味もこめて宣言しているのです。なかなかこれは現実の社会でも受け入れできない人が多いかと思いますが、ここで内戦をやって勝ったとしても国力が大幅に落ちてしまうと今度は魔獣に対抗できなくなってしまうんです。
それをネボラさんはわかっていたんですね~。強い女性ですよ!
そしてこの章のボス、人形兵器を操った神?が登場しました。なにか意味深な発言をしていますね。これも伏線ですし、数多くの世界からエーレタニアが狙われる理由の一つでもあるんです。レオくんたちがどう活躍するかご期待いただければと思います。
さて次回予告ですが、異世界人の侵略に備えようとしますが、その前にできる限り魔獣を間引いておこうと考えたレオくんは狩りに向かいます。すると、少なくなったはずの魔獣がなぜか多くいました!しかもネイレに向かってるような···?
調べると、とある人物が関与していました!誰なんでしょうか?
それではお楽しみに~!




