殲滅編-3.好きにしろ
「エレ!聞こえるか!?」
『ん〜?レオ?どうかした?』
「どうかしたじゃねえよ!聞きたいことがあるんだ!」
『なんか切羽詰まったような声して、どうしたんだ?』
「実は···」
オレはテーパーでの惨状を説明したんだ。無人の人形兵器なんて知らねえし。
『あ〜、そんな最先端な異世界も来てるのか。まるでロボットアニメじゃねえかよ···?こりゃ思ってたよりもヤバいな···』
「ああ。そういった大規模攻勢は最近そっちで作った『空中庭園』で対応してるんだろ?なんでこっちにいるんだよ?」
『それがなぁ〜。今別件で対応中だから、そっちまで手が回ってないんだよ。そんな連中、今知ったぐらいなんだよ』
「げっ!?マジかよ!?同時攻撃か!?」
『そうなんだよ···。なんでか知らんが、いろんな世界からケンカふっかけられてるんだよ。だからレオで可能な限り対応してほしいんだよ』
「やっぱ丸投げかよ···」
『悪いな。なんとかしたくても、こっちも戦力不足でな。でも、可能な限りサポートはさせてもらうから!』
「サポートって?」
『彼女さんに魔力剣プレゼントなんてどう?おそらく使ってた剣もボロボロでしょ?』
「か!?彼女じゃねえよ!!それにアイツ、魔力そんなにないぞ?役に立たねえよ!」
『あ〜、そりゃまずいな···。ちょっと考えるわ。また連絡するから!』
「おい!?ちょっと待て!···切られたか。ホント、肝心な時に役に立たねえなぁ〜」
どうもエレの方もあの連中については何も情報はないようだ。しかも向こうも手一杯のようだな···。期待しないほうがよさそうだわ。
それに、エレの秘密兵器である空中庭園は大規模殲滅用兵器だ。やってきて攻撃を始めると、空飛ぶ魔力砲台から一方的に撃てるから火力が強すぎて、そこは焦土となっちまうんだよな。だからそれを使うのは本当に最後の最後なんだよ。
とりあえず、オレとネボラは廃墟となったテーパーを離れてネイレに向かった。このままだとネイレも襲撃を受ける可能性があるからな。早めに対策をとらねえといけないんだ。
「よし、とりあえずネイレへ向かおうか。弔いは···、悪いが···」
「ああ。状況が状況だ。生きているものが最優先だ。それは···、みんなわかってくれるはずだ」
そしてオレはネボラを抱えて走った。もちろん真のトランス状態だからとんでもなく速い!
ところが···、
「レ、レオ!?速すぎるぞ!?」
「これで速いってどういうことだよ!?この状態のオレと試合したら、いつもお前のほうが速いだろうが!?文句言うなよ!」
「バカモノ!短距離の瞬発力がすごいだけだ!こんなに長距離をこの速さはさすがに···!」
「そういう事かよ。まぁ大丈夫だ。木の上とか飛んでいくし、文字通り一直線で向かってるからな」
「いや···、ちょっと気分が···」
「ちょ!?酔ったのかよ!?」
「うぅ···」
「あ〜、こりゃダメだな。とりあえず降りるわ」
意外なところが弱かったな、コイツ。オレは近場に降りて、ネボラを下ろしてやった。
「おいおい···?この前はオレを専属の馬車にしようとしていたのにこのザマかよ?」
「あの時はここまで酷くなかったぞ···」
「あ〜、そりゃトランスで抑えてたからな。どうする?ちょっと遅くなるがトランスで行くか?」
「そ、それで···」
「わかった。その前にここで野宿するぞ。もう日が落ちた。これ以上はお前に負担がかかりすぎる」
「だが···!」
「焦る気持ちはわかるが、お前自身がへばったら、ネイレに向かってる連中に示しがつかないぞ?明日は夜明け前に出発するからさ」
「···わかった」
「よし!そんじゃあちょっと待ってろ。テント張って、すぐに夕食にするぞ」
オレはさっとテントを張り、夕食の準備をした。といっても肉の串焼きだけどな。ちゃんとした料理なんてできねえし。
ネボラはいつもよりも食べれてなかったな···。表には出さないが、やはり相当精神的にこたえてるんだろう。
ムリもねえか···。自分の国が、あっさりと滅ぼされてしまったんだからな···。多くの人たちが犠牲になっちまって、その罪を自分のせいだと思ってやがるんだろう···。
どうしようもねえってオレが言っても意味ないだろうな。これは、自分自身が解決の糸口を見つけないといけないんだよ。
かなりの時間がかかるだろうな···。その間、おそらくはコイツは通常通りの力は出せないだろう。オレが頑張るしかなさそうだ。
そうして食事を終えて寝ようとした時だった!アイツ、とんでもねえことを言い出したんだ!
「レオ···。悪いが、一緒に寝てくれないか?」
「は?この前と同じように寝ようってか?」
「いや、もっとそばで寝ててほしいんだ。どうやら私は怖いようなのだ···。自分自身に対して···。不安で···、押しつぶされてしまいそうなんだ···」
そういう事か。こいつは今、精神が不安定なんだ。ムリもねえか···。
「···わかったよ。好きにしろ」
「ありがとう」
この時、オレは失言してしまったんだ···。そのことにまったく気づいてなかったんだよ。
そしてテントに入ってふとんに入ろうとしたら、なんとコイツまでオレのふとんに入ろうとしてきやがったんだ!
「ちょ!?何しやがるんだ!?」
「好きにしろと言ったではないか?これだけそばだと···、安心する···」
「そばじゃねえだろうが!?完全に密着してるって!ダメだろうが!?」
「好きにしろの言葉は···、ウソだったのか?」
「そうじゃねえよ!?もうちょっと考えろよ!」
「悪いが今日はこうさせてくれ···」
「う〜〜〜!わかったよ!」
「ありがとう」
さすがに向かい合わせは勘弁なので、オレの背中にネボラはくっついた。
しかし!今度はくっつくだけじゃなかったんだ!手をオレに回してきやがったんだ!
「おまっ!?さすがにそれはダメだろうが!?」
「すぅ···、すぅ···」
あ〜〜〜!もう〜〜〜!今日だけだからな!オレはまったく身動きができずに熟睡することができなかったんだ···。
翌朝···。
「···ん〜。レオ、おはよう」
「ん?おはよ」
「ありがとう、レオ。おかげで少し落ち着いた」
「こっちは寝不足だっての···」
「寝不足···?あ〜、そういう事か。完全に把握したぞ」
「はぁ?何言ってんだよ?」
「女性に抱きつかれて照れていたのだな?」
「ばっ!?バカ野郎!誰のせいだって思ってんだよ!?」
「悪い悪い。だが···、レオは抱き心地が良かったぞ。なんというか···、とても頼もしい背中だった。安心感が半端なかったな」
「どういうことだよ···?勝手に安心感なんか感じやがって···。でも、昨日よりは多少は落ち着いたようだな?」
「これもレオのおかげだ。感謝する」
「大したことしてねえよ」
「そうか···。では今日も同じように寝させてもらいたいな!」
「そんなに元気ならいらねえだろうが!?お断りだ!」
「ははは!レオがそういうふうに怒る顔を見たら元気が出てくるな!」
「どういう精神の構造してるんだよ···?」
とりあえず、多少は持ち直したようだな。さて、ネイレへ向けて急ぐとするか!
壊滅してしまったテーパーですが、生き残りがいないほどの破壊でした。弔うこともできるのですが、いかんせんレオくんとネボラさんだけでは時間がかかりすぎてしまいますし、ネイレに避難民がたどり着けているかも心配だったので、こういう展開になりました。
ネタバレ集でも紹介しますが、この時の『生きているものが最優先』というのは老衰で100歳で天寿をまっとうした祖母が、コロナの時期に墓参りの外出させてあげられずに作者が謝った際によく言っていた言葉なんです。
祖母は戦争もくぐり抜けましたから、この言葉の重さはすごかったです。この展開にした際にネボラさんが自然に言いましたが、おそらく祖母も同じような経験があったのかな?と思ってしまいましたね。
そして精神が不安定なネボラさんはレオくんに抱き着いてしまいました!本編第3章でもアキくんが精神不安定な状態になった時にリオくんが気を利かせて抱きぬいぐるみモードになってましたね。
最近は結構ぬいぐるみの効果が精神安定的な作用があるという話が出てますが、『抱く』という行為は精神が安らぐ作用があるようですね。医学的には証明されていませんが、抱き枕とかも商品化されてますので、薬に頼らない民間療法としてはいいのかもしれませんね。ヤバい時は医者にかからないといけませんが。
さて次回予告ですが、ネイレに到着したネボラさんは、テーパーから避難してきた人たちに対して謝罪します。そしてネボラさんは王という地位を捨て、テーパーの人たちの支援をすると約束しますよ。
ちなみに今回の寝床は?まぁ皆さまのご想像通りかと思いますけどね(笑)!
それではお楽しみに~!




