降臨編-26.レオ、師範になる
翌日、ネボラはネイレ王に面会に行った。オレは家でやっとこさ一人になってのんびりすることができたんだよ。
そして昼過ぎにアイツは戻ってきた。
「戻ったぞ。昼食は城でいただいてきたから用意する必要はないぞ」
「そりゃ助かったぜ。そんじゃあ、テーパーに戻るか」
「それなのだがな···。レオとはここで別れようと思っているんだ」
「へ···?それってどういうことだよ?」
「言葉の通りだ。もうレオには教えることはないということだ」
「はぁ?まだオレはお前に一度も勝てたことないんだが?」
「レオが私に会いに来た目的はなんだ?私を倒すことではないだろう?」
「確かにそうだけどよ···」
「レオは自分の剣術の作り方を私から学んだ。まだまだ技としては荒いし完成には程遠いものばかりではあるが、やり方は体に叩き込んだのだ。言い換えれば赤ちゃんが歩き方を学んだようなものだな。ここからはレオが自分の足で進んでいくのだ。いいな?」
「ホント、いきなり過ぎるぜ···」
「そうそう、ほかの者への教え方も私のやり方をマネればいいだろう。そうすることでこのネイレはさらに強くなるだろうな」
「お前、昨日言ってたじゃないか?強くされて背後から襲われたくないんじゃなかったのか?」
「その点なら問題ない。ネイレ王に面会した時に安全保障条約を結んでおいた。それにレオがここにいる以上、テーパーを襲うことは決してないからだ。まぁ、レオが襲い掛かってきたら真っ先に返り討ちにしてやるけどな!」
「そんなことするわけねえだろうが···?まぁいい。···世話になったな」
「···ああ。私もこの2か月は毎日が本当に楽しかったぞ。またいつでも来い!その時はまたお互い全力でやりあって、どの程度実力がついたかを確かめようじゃないか!」
「お断りだ!とっとと帰れ!」
「ははは!···ありがとう、レオ。ここまで私と実力が伯仲して気を許せたのはお前だけだ。それでは達者でな!」
ホント、いきなり去っていきやがったぞ···。自分勝手だなぁ~。
でも···、確かにオレはこの国の兵士の鍛え方を学ぶ目的でネボラに会いに行ったんだ。そしたら、なんか流れでオレの剣術を作るなんて話になってしまったんだよな。
そしてアイツのやり方をここの兵士にやれって?絶対脱落者ばかりになるのが目に見えてるんだが?それもオレが考えろって事かよ···?まったく、仕事が増えてたまらないぜ···。
そして夕方になった。家に持ち込まれたアイツ用の寝具はおっちゃんがまだ取りに来ないので邪魔だったから、無限収納リュックにしまい込んだ。こういう時にこの無限収納リュックは便利だな。
そして夕食の時間になったので準備を始めようとすると、扉が叩かれた。おそらくおっちゃんだな?また日輪亭で飲もう!って話だろうなぁ~。
そう思って扉を開けると、予想通りおっちゃんがいた。
「おお、レオ。まだ夕食にしてないな?」
「ああ。どうせ来るだろうな~って思ってたら本当に来たな。いつものように日輪亭か?」
「そうだ。ちょっと相談事があってな···」
「またかよ···?いい加減にしてほしいんだけどなぁ~」
「そう言うな。さあ!行くぞ~!」
そうしてオレとおっちゃんは日輪亭にやって来た。久しぶりだなぁ〜!
「あら!レオくん!久しぶり〜!」
「おう、おばちゃん。帰ってきたぜ」
「いつもの席に座っておいてね〜!」
そうしていつもの奥の席へ向かうと···、ありゃ?今日は誰もいないぞ?
「今日はワシとレオだけだ」
「珍しいな···。何か訳ありか?」
「ああ。それについては食事が来てから話すとしようか」
と言っても、席についたとたんに酒と料理が出てきたけどな。今日もうまそうな料理だな!
そして食べ終わるとオツマミが出てきた。おっちゃんの話はここからだった。
「さて···、話というのはだな···」
ん?なんか神妙な雰囲気だぞ?いつもは泥酔して寝てる連中がいるけど、今日はオレと2人だけだ。だからなおさらいつもと雰囲気が違ってるので、オレも少し身構えてしまった。
「この2か月、魔獣の襲撃は2件だけだった。兵士たちにけが人も出なかった。ここまで襲撃が減ったのは明らかにレオのおかげだ。本当に感謝する」
「おいおい···、気持ち悪いぞ···。どうしたんだよ?おっちゃん?」
「ん?どうもしとらんぞ。それで今後なのだがな···。ネボラ様からいろいろと教え込まれたのだろう?レオには師範となって、兵士の強化に少し付き合ってほしいのだ」
「まぁ、それが目的で行ったからな。ひどい目に遭ったけど」
「しかし···、レオはたいそうネボラ様に気に入られたのだな?」
「あ?気に入られたんじゃねえよ。自分とまともにやり合える相手がオレしかいなかったってだけで、おもちゃ扱いだったぞ?」
「ははは!レオにそんな事ができるのは確かにネボラ様だけだろうな!あんなネボラ様は見たことなかったから、完全に心を許しているのだろうな」
「そうなのかよ?」
「そうだ。そうそう、ネボラ様から王との会談内容は聞いてるか?」
「こことテーパーが争わないって約束したってぐらいだけど?」
「そうか···。実は他にもあってな。レオの事だ」
「は···?オレ?」
「ああ。『レオに頼り切るのはまかりならん。自由の束縛も許さん。もしレオを利用してテーパーを襲う気なら、全力でネイレを潰してレオをもらい受ける』とな」
「アイツ···、勝手にそんな話すんなよ···」
「ここでワシは気づいた。レオ?ネボラ様を仲間にしたのだな?ワシたちと同様にすべて話をしたのだな?」
「誘導尋問に引っかかっただけだ。もう神も公認してるし」
「そうか···。神もお認めか。なら良かった」
「はぁ?どういうことだよ?」
「レオに仲間が増えればレオが楽になるからな。今後も仲間が増えるといいな」
「···オレとしてはあんまり巻き込みたくねえんだよ」
「それはなぜだ?レオの目的は非常に荷が重い。多少は力になってくれる味方が多いに越したことはないのではないか?」
「···見たくねえんだよ」
「何を?」
「···仲間が、死ぬのを。オレの目的で巻き込まれて···」
「···ははは!」
「何がおかしいんだよ!?」
「レオは本当に優しいなぁ〜。そうかそうか!そういった理由で仲間を拒んでいたとは思わなかったぞ!それについては気にするな!」
「はぁ?なんで?」
「レオの仲間になると決めた時にそんな事はとっくに覚悟してるからだ。それに、兵士はいつも死と隣り合わせだしな」
「···死ぬ気だったのかよ?」
「いいや?その気はないが、仮にそうなったとしても後悔はまったくないということだ。それに、始めから死ぬ気になってはいかんぞ?死を考えたら、本当にすぐそばにやって来るからな。レオも覚えておくといいぞ」
「そうか···。本当に、いいんだな?」
「レオはくどいなぁ〜!まぁ、それがレオの優しさなのだろうな」
「···わかったよ。とりあえず、ここの連中が死なないように鍛える。それでいいな?」
「ああ。さっそく明日から頼むぞ!」
「早っ!?」
どうやら今日2人きりなのは、ネボラと王様との極秘会談の話だったからだそうだ。機密事項だから話せなかったんだとさ。
ネボラさんはレオくんにすべてを教えたと言って去りました。
教えたと言っても、レオくんに対して適した剣術を作るようにしただけなのですが、その過程というのがネイレの兵士に対して教える内容だったということです。
これについては具体的な内容は第22話で武術の話で出しました。それを教え込むということになりますね。
さらにネボラさんはレオくんが動きやすいように安全保障条約という『圧力』をかけました。
ネボラさんとしてはレオくんを利用してネイレが覇権を取らないように先手を打ったんですが、実はフリード将軍が先に王様に助言していましたのですんなりと会談は終わったんです。フリード将軍もレオくんの目的を知ってますからね。
ネボラさんも第24話で言いましたが、これは今の王様と現在の状況で有効です。王が変わったりフリード将軍が政治から離れると効力を失う可能性があるので、まぁ保険みたいな形になってますね。
さて次回予告ですが、レオくんは師範としてネイレの兵士への訓練の教官として活動を始めます。果たしてレベルアップさせることができるでしょうか?
そして物語の最後でとんでもない展開が待ち受けています!何があったのでしょうか?
明日の投稿で降臨編の本編は完結し、そのあと番外編1話とネタバレ集の投稿となります。
それではお楽しみに~!




