降臨編-21.壁を無くす···!?
「今日は気分転換に町に出てみないか?」
「は···?今から?」
「ああ、そうだ」
「なんで町に出るんだよ?」
「毎日鍛錬ばかりではつまらんだろ?さあ!行くぞ!」
「ちょ!?引っ張んなよ!?」
今日はいつものように鍛錬とオレ専用の剣術を考えようと思ってたところにネボラが押し掛けてきた。
まぁ、押し掛けてくるのはいつもの通りだから気にはしてなかったが、今日はどういう風の吹き回しか、町に出かけると言い出したんだ。
そしてオレも連れ出されたってわけだ。ホント、コイツはいつも自分の好き放題してやがるなぁ~。まぁこの国の王様だから許されてるのかもしれんけど、ワガママし放題の王様ってどうなんだよ···?
そうしてオレとネボラは城の門にやってきた。って、来た門は正門ではなくて裏の通用門だった。
「ネボラ様?今日はどちらへ?」
「うむ。レオと一緒に町へな。夕方には戻る」
「わかりました。お気をつけて。レオ様、ネボラ様をよろしくお願いします」
「へ···?お、おう···?」
止めもしねえのかよ···?王様が城から出るのに···。それに『よろしくお願いします』ってどういう意味だよ?オレがネボラの世話をしろ!って事かよ···?冗談じゃねえぞ···!?
通用門が開いてオレたちは町に出た。オレとしては1か月ぶりに城から出たようなものだな。ずっと城にひきこもってコイツの相手したり鍛錬したりしてたからなぁ~。
通用門側の町は初めてだ。ここに来た時は正門の方から入ったんでな。
どっちかというと、こっちは住宅街のようだ。正門の方は商業地区のようだな。人通りは少ないものの、結構きれいな街並みだ。
「どうだ?なかなかいいだろう?」
「まあな」
「この国は、今は平和だ。先代たちがそれこそ命をかけて築き上げてきた防壁、そして精鋭の軍隊がいるおかげで、こうして国民たちは壁の内側だけではあるが安心して暮らしている。レオ?私の望みをここで言ってもいいか?」
「いきなりなんだよ···?聞くだけならいいけど」
「ありがとう。私の望みは···、壁を無くすことなのだよ」
「へ···?そんなことしたら魔獣被害が増えるだろ?何バカな事を言ってんだよ?」
「バカな事ではないさ。本気よ」
「とても王様が言う言葉じゃねえな。狂ってるって言われても擁護できんぞ?」
「ははは!まぁ、言葉だけならそうとられても仕方あるまい。だからこそ、ほかの者には一切言わずにレオには言っておこうと思ってな。理由を聞けばレオも賛同するぞ?」
「賛同なんてできるわけねえだろうが?」
「まあ聞け。壁は何のためにあると思う?」
「決まってんだろ?外からの襲撃を防ぐためだ」
「その通り。では、外からの襲撃がなかったら壁は必要か?」
「···何とも言えねえな」
「妥当なところだな。そう、壁は必要だ。それは『精神的に安心と感じる』のに必要だからだ」
「だったらなんで壁を無くすのが望みなんだよ?」
「簡単なことだ。魔獣の襲撃がないほど魔獣を殲滅すれば壁の必要はなくなるからだ」
「···そう言うことか!だからオレが賛同するっていうことなんだな?」
「そういうことだ」
「えらい遠まわしな望みだな···。しかも誤解が生じやすい表現だぞ?」
「ははは!だからこそ、これを言える相手はいないのだ。今のところ、レオにしかこの胸の内は言ってない」
「は?そんな事をオレに言っていいのか?オレはこの国の国民じゃねえぞ?」
「いいのよ。私と志が同じ仲間だからな。今まで言える相手がおらず、やっと言える相手ができたのよ···。だったら、言いたくなるじゃない?」
「そんなもんかねぇ~」
「そんなものよ。さあ!次は食事でも行こうか!」
「いいぜ!せっかくだからおいしいところがいいな!」
「いいわよ。とびっきりのところへ案内するわ」
そうして城をぐるっと回るように歩いてやってきたのは商業地区だ。ここは道も広いし人通りが多い。
道の両側には多くの店が立ち並んでいた。小型の店舗を集めた市場もあったな!どこの店も大声で客引きをやってるぞ。
そんな中、ネボラはいろんな人に声をかけられていた。
「キャー!剣聖様ーーー!!」
「剣聖様だーー!」
「けんせーさまーー!!」
老若男女問わず、ネボラの姿を見て声をかけられていたな。ネボラは声をかけた方に向けて軽く手を振ったりして応えていたぞ。
「なあ?なんでみんな『剣聖』って言ってて『女王様』って言わねえのさ?」
「簡単なことだ。女王としての姿を見たことがないからだな。だからみんな私がこの国の女王とは知らず、剣聖としての私しか知らないのよ」
「マジか···」
「だから、護衛は必要ない。むしろ、つけてたら正体がバレて逆に危険なのでな!ははは!」
とんでもねえなぁ~。護衛を付けるほうが危険だって···。逆じゃねえかよ?
まぁ、ある意味偽装してるって面もあるのか?思いっきり堂々とした偽装だけどな。逆に堂々としすぎてて偽装って気づいてないってのもあるのかもな。
そうしてやってきたのは、小さな飲食店だった。店の前には日よけの布が張られていて、そこの下に簡易なイスと大タルのテーブルがあるお店だ。
「やあ!久しぶり!」
「ネボラちゃん!?よく来てくれたわね~!あら、隣の子は···!?もしかして彼氏~!?」
「ああ!そんなところだ!」
「おい!?何バカな事を言ってやがるんだ!?」
「ははは!まぁ恋愛感情はないが、今までで稽古に付き合えた男の中では最高だな!」
「あらあらまあまあ~!ネボラちゃんにもついに春が来ちゃったのね~!まさか年下が好みだなんて、おばさん思わなかったわ~!」
「人生、どうなるかわからないものだ···。さて、食事をしたいから座らせてもらうぞ」
「ええ~!注文決まったら呼んでね~!」
とんでもねえ会話しやがる···。いつの間にオレはコイツの彼氏になったんだよ?オレをもてあそんでやがるだろ?
「さあ、選べ。ここは何を頼んでもおいしいぞ~」
「···あのおばちゃん、思いっきりオレを彼氏だと思い込んでるぞ?なんて事言いやがるんだよ···?」
「ははは!そう言わないと心配するからな。もう気にしてないと思うぞ?」
「はぁ~。じゃあ、オレはこの『マキシマムグリル』ってやつで」
「なかなかいいのを頼むじゃないか?じゃあオーダーするぞ!おばさ~ん!」
「はいよ~!このドリンク、おばさんからサービスしとくわ。かわいい彼氏さん?ネボラちゃんをよろしくね~!」
「いや、よろしくって言われても···。オレ、彼氏じゃねえし···」
「またまた~!照れちゃって~!かわいいじゃないのよ~!ネボラちゃんもいい子見つけたわね~!おばさん、安心したわ~!じゃあちょっと待っててね~!」
そうしておばちゃんが注文をとって厨房に戻った。テーブルにはおばちゃんがサービスしてくれた···、ナンダコレ?水色の飲み物···?
とりあえず飲んでみると、とてもさわやかな味がした。ちょうどのどが渇いてたのでうまかったな!
「なあ?あのおばちゃん、知り合いか?」
「ああ。元宮廷料理人だ」
「だから知ってるんだな」
「そうだ。幼い時からよく世話になってたのでな。だから、独立した今もこうしてたまに顔を出してるのさ」
「そういう事ね」
そして出てきたオレの料理は···!?鉄板の上にてんこ盛りの肉の山だったんだ!
めっちゃうまかった!もしかして、オレを見て量を決めたのか···?
ネボラさんの目標はちょっと語弊がありますが、壁がなくても安心して暮らせる国にしたい!という切実なものでした。
ですが、現実的には夢物語なんですね。現実世界においても国境に壁があるのも国土防衛の目的ですからね。魔獣討伐完了しても今度は人からの防衛という意味で壁は必要になるんですよ。
そしてデートしてたらレオくんはネボラさんの彼氏扱いされました(笑)!これだけキャッキャウフフしてたらしいそう見えますよね。
傍から見たらいわゆる『おねショタ』ってな感じでしょうか?まぁ20歳も年の差あるカップルですけどね。レオくんは生まれて半年経ってませんからこれだけ年の差がありますが、外見的には10歳差ぐらいに見えてるとは思いますよ。
それでも現実世界で言えばおねショタになるか···。そこまで作者は考えてませんでしたが···。
さて次回予告ですが、レオくんがテーパーにやって来て2か月が経ち、状況を伝えるためにネボラさんもネイレへ向かうことにしました。
しかし!普通通りに出国して···、ではなく深夜にこっそりと脱出するように出てしまうことに···。
明日は夜勤なので朝に投稿します。
それではお楽しみに〜!




