後編-21.王国内の情勢
「あれ?キミたち、王国軍の人じゃないよね?どうしてこんなところに来たのさ?」
「あ〜···、それは···」
「フーたちは冒険者なんだけど〜、道に迷ったの〜!そしたらここの宿場町に来ちゃったの〜!」
「あ〜、そういう事か。って、案内看板を見落としたな?この先は戦争中のドナー帝国につながってんだよ。この先に行っても軍に追い返されるだけだぞ?」
「ありがと〜!それで〜、もう暗くなってきたから1泊させてもらってもいい〜?ダブルの部屋でね〜!」
「いいぜ!迷い客とはいえ、久々の軍関係者以外の宿泊者なんだよ。補助金出てるとはいっても商売が厳しかったんだよ!歓迎するぜ!」
おれたちは魔導兵の大軍勢を潰してアクセプタ王国に入った。この時点で夕方になっちまったので、野営の準備をしようとしたら···、
「モンドくん!もうちょっと先に宿場町がある〜!」
「マジか!じゃあそこで1泊しようぜ!」
「でも〜、フーたちの事がバレてないかな〜?」
「大丈夫だろ?やつらにはおれたちのスマホの写真のような機能はないだろうから、おれたちの正体なんて知らんだろ」
「そだね〜!じゃあ行こっか!」
そして宿場町に入ったんだが···、誰もいねえ。かろうじて宿が開いてたので泊まろうとしたのが冒頭のやりとりなんだ。
確かにこの街道ってドナー帝国につながってるから、ドンパチやってる場所に民間人なんて行かせるわけねえよな。通るのは軍関係者ばかりで、しかもほとんどが魔導兵だ。
ここに宿泊するのはほんのわずか。そりゃ店は商売なんてできるわけねえか。宿は開いてないと軍の連中が泊まれないからだろうな。
ちょっと怪しまれたけど、フーが機転を利かせてくれたおかげで怪しまれずに済んだわ。フーは頭の回転が速いからなぁ〜。
ただ···、
「おい、フー?またダブルの部屋かよ···?」
「もち!えへへ〜」
「まったく···」
相変わらずフーはおれと一緒に寝たいようだ。
夕食はそんなに種類は多くなかった。ちょっとした定食だけだったんだが、宿の主人が持ってきた時にいろいろ話を聞くことができたんだ。
「それにしても、うちがドナー帝国と戦争中って知らなかったのかい?」
「フーたちは南から来たからね〜」
「あ〜、そういう事か!でも道中の宿場町でも話出なかったか?」
「あったけど、この道って事までは聞いてねえからな」
「なるほどね〜。って事は、今の情勢も知らないね」
「え?どういう事だよ?」
「あんたたちは王国民じゃねえから話すけど、どうも今は王国側が劣勢みたいなんだよ」
「あれれ〜?ここの前の宿場町だったら優勢だから安心!って言ってたよ〜?」
「ああ。オレもつい最近までそう思ってたさ。でも、ここは国境に一番近い宿場町だ。しかも利用者は軍関係者ばかり。まぁ、あの最強って言われてる魔導兵は外で休んでいるみたいだが、高官はここに泊まるんだ。そこで聞いてしまったんだよ···」
「え?何を?」
「これまで常勝だった魔導兵が打ち破られたってな。しかも帝国軍が逆襲しにこっちへ向かってるって」
「へぇ〜。そんじゃあここから先は行かないほうが良さそうだな」
「その通りだ。何とも不安な話だよなぁ〜。この様子じゃあ、王国内では今の状況を知らなさそうだけど、大丈夫か心配になるよ」
「知られちゃ大混乱が起きるからじゃねえかな?おれだったら知ったら逃げようって思うけどな」
「なるほどなぁ〜。そういう情報を流してなさそうだな」
「おっちゃん?ほかに何か言ってた?」
「そういえば、あの魔導兵を倒したって連中の話をしてたな」
「えっ!?(まさか···?おれたちの事がバレてる!?)」
「連中って〜、軍の人じゃないの〜?」
「軍らしいんだけど、単独潜入して倒したらしいんだとさ。そんな超人いるわけねえって思うけど、確か···、『青い彗星』って呼んでたな」
青い彗星···。それっておれたちにつけたあだ名かよ?確かに髪の色は青いけどよ···。銀髪も混じってるから光って見えた···?
あっ!?トランスしてたら顔とかに出る紋様がちょっと光るからそう見えたのか!?
「へぇ〜!カッコいい名前の人たちだね〜!」
「名前が格好よくても敵だぜ?恐ろしいぞ···?」
「あ〜、王国側からだとそうなるよなぁ〜。でも、民間人には手を出さないんじゃないか?」
「そうあってほしいけどね。ここを通るだろうからなぁ〜。おっと!邪魔したね。どうぞごゆっくり」
夕食を食べ終えて、おれたちは部屋に戻ってきた。まぁ、あそこじゃ聞き耳立てられちまうからなぁ〜。防音魔法もあるけど、何も聞こえないのに口がパクパクしてたらよけいに怪しまれるしな。
「モンドくん!フーたち、カッコいいあだ名つけられちゃってたね〜!」
「あのな···。まぁ、そりゃ警戒はするよなぁ〜。おれたちだけで魔導兵を倒されてるからな。王国は魔導兵に頼りっきりになってるから、それが通用しないとなると大慌てになるだろうし」
「そだね〜。おそらく情報統制でみんな知らないんだろうね〜」
「となるとだ···。おれたちが王城へ侵攻したら、あんまりド派手な攻撃すると市民の皆さんを巻き込みかねないなぁ〜」
「それも作戦なのかもね〜」
「じーちゃんが言ってた人間の盾ってやつだな···。人をおもちゃ感覚でしか考えてねえからやりかねんなぁ〜」
「潜入もバレちゃうしね〜。地下牢にいる王様たちの救出もしないといけないしね〜」
「やりづれえなぁ〜」
「潜入できないなら···、正面から強行突破しちゃう?」
「ちょ!?フー!それマジで言ってんのか!?」
「うん!そうしたら、市民の皆さんも『ドナー帝国が攻めてきた!』って気づいて、逃げ出すんじゃないかな〜?」
「フーにしてはなかなか強引な作戦だな···」
「多分、これが一番被害が少ないと思うよ。潜入したら市民の皆さんは何が起こったのかわかんないから、逃げないだろうしね〜」
「う〜ん···。そう言われると、それしかなさそうに思えてきちまうなぁ〜」
まぁ、だからといって別の作戦があるか?って聞かれてもおれにはなかったな。本当に文字通りの大暴れになっちまうな···。
モンドくんとフーちゃんは一時的に帝国軍に属していますが、格好は普通の冒険者···、よりも軽装な格好なんですね。
ですので、ぱっと見は帝国軍とは気づかれません。むしろ某ゲームのように『そんな装備で大丈夫か?』って聞かれるぐらいの軽装なんですけどね(笑)。
というわけで王国領内に入って情報収集です。知らない間にモンドくんとフーちゃんにあだ名がつけられてました!なんか3倍の速度で···、ってそれ以上なんですけどね。
さて次回予告ですが、フーちゃんが立てた作戦通りに正面から堂々と強行突破しようとして派手に暴れますよ〜!
情報が不足しているので、王国民は大混乱に陥りました!そしてみんな逃げようとしました。
ここまでは計画通りだったんですが、逃げた先が想定外の場所だったんです···。モンドくんとフーちゃんはどうするのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




