後編-3.モンド、ちょっと弱気になる···?
アクセプタ王国の王都ラティスを脱出したおれたちは、急いでホールたちのところへ戻った。高速飛行魔法だからあっという間に着いたぜ。
「悪い!遅くなっちまった!」
「ただいま〜!」
おれたちが戻ると、馬車の扉が開いてホールとトロン皇子が出てきた。ちなみに外には自律分身体のフー2号が立っていたので、護衛は無事達成できてたみたいだな。
って、フーの分身体だから何かあったらフーも気づくらしいけどな。フーから何も言ってこなかったって事は、襲撃はなかったと見て良さそうだ。
「おかえりなさい!無事で安心しましたわ!」
「よく戻った。表情から察するに、成功したと判断していいのか?」
「ああ!そっちも無事でよかったぜ」
「いや、襲撃はあったがそこの分身体?のおかげで何ともなかったな」
「へ?···おいフー?分身体から連絡はなかったのか?」
「なかったね〜。2号〜?どして〜?」
「だって瞬殺だったからね〜。もうちょっと歯ごたえあったら連絡したかもね〜」
「そっか〜!無事ならいいもんね!」
どうやら敵と認識するまでもないぐらいだったってことね···。それはそれで問題だけどさ···。
「モンド?お父さまは···?」
「無事だったぜ。地下牢に入れたれてたけどな。とりあえずメシ食わせてくれ!晩飯まだなんだよ···」
「わかりましたわ。落ち着いたら教えてくださいね」
「ああ。フー!」
「はいよ〜!じゃあ鍋にするね〜!モンドくんの大好物のオバカ鳥のお肉入りにするね〜!」
「おっ!?気が利くじゃんか〜!」
そして鍋をたらふく食った!トランス状態は腹が減りやすいし、高速飛行魔法まで使ってたからな。満腹満腹〜!
さて夜も更けてきたが、ホールとトロン皇子に王都の状況を説明した。
「お父さまの写し身の人形···、異世界の神がドッペルなる道具を使って王と宰相たちに成り代わって、王国を意のままにしてるのですね···」
「しかもドッペルとやらは壊されると写し身の人の命を奪う···。悪質な人質だな···。考えたその異世界の神とやらは相当な悪だな」
「ああ。だから正攻法じゃダメだったぜ···。人質さえなけりゃ、おれとフーでなんとかできたんだが···」
「それはそれで恐ろしいな···。大国の軍相手にやり合って勝つなどとは···」
「···でも、モンドとフーさんならやってしまいそうですわ。それで、今後はどうしますの···?」
「それなんだけど、ちょっと身内に相談してみる。もしかしたら何かいい案があるかもな」
「そうなんですね?では、今日はもうおやすみになられては···?お疲れでしょうし···」
「そう···、だな。そうさせてもらうよ」
ホールは気丈だったな···。王様が無事だったって知って安堵してたもんな。
とりあえず、明日にじーちゃんに相談してみよう。じーちゃんなら何か案があるはずだ。そう思って今日は休むことにした···。隣にフーが寝てるけどな。今日も抱きついてきてるが、今日はフーも頑張ったから、まぁいいか。
翌日の早朝···。
「「···ふっ!···はっ!···やっ!」」
一晩寝たらもう全快だぜ!今日も欠かさず朝のトレーニングを行う。もう日課だからな。体が覚えちまってるんだよ。
「じゃあモンドくん!フーは朝食作るのだ〜!」
「おう!おれはもうちょっとだけやってるわ」
···トレーニング用の剣を構える。目を閉じて集中し、技をゆっくりとなぞりながら剣を振るう。
普段は無心に剣を振るう。だけど、今日はどうしても雑念が振り切れなかった···。
理由はわかってんだ。昨日いろんな事があったからだ。
ばーちゃんやナツママから『人質をとられた時にどう行動するか?』ってのは教えられたし実践もやった。簡単に言えば相手に加害するまでの短時間に接近して武器を弾き、そして犯人を倒して奪還する方法だな。
しかし、今回は人質がその場にいない···。しかも、攻撃すれば人質の命がリアルに失われるというものだった。
おれたちは神狼族だ。真のトランスまですればこの世界で勝てるものはいないぐらいだ。
しかし、それは単純な力比べだったらの話。今回のようにその力の行使を封じられちまうと···。おれたちは単なるガキ同然になっちまった···。
相手のやり方次第でおれたちはどんだけ鍛錬しても無力になっちまう···。それを痛感しちまったんだな。
パパは···、それを知ってたからおれたちを武者修行に出したのか···?もしかしたら、パパもこういった経験をしたのかもしれねえな···。
「おはようございます、モンド」
いろんな雑念が思い浮かぶ中で剣を振るっていると、ホールが起きてきた。
「ああ。おはよう、ホール」
「············」
「···ん?どうしたんだ?」
「あの···、ちょっと言いにくいのですが···」
「なんだよ?構わねえぜ」
「今日のモンドの剣は···、なんだか違うって思いましたわ」
「···え?もしかして、気づいたのか?」
「ええ。昨日のモンドの剣は美しかったですが、今日は···。なんだか迷っているような気がして···」
「···あちゃ〜、剣をあんまり知らないホールにそこまで見抜かれるって、よっぽどだったんだなぁ〜!」
「ふふっ!でも安心しました。普段のモンドに今なりましたわ。何か···、あるのですね?」
「え···?」
「わたくしは今回まで城を出ることはありませんでした。世間というものをまったく知りません。そんなわたくしですが、よろしければお話を聞きますわよ?」
「···ちょっと情けない話だけど、いいのか?」
「もちろん!普段はカッコよくて強いモンドの情けない話というのも興味がありますわ」
「そんなに普段はカッコよくねえけどな。···ちょっと慢心してたんだよ」
「慢心···、ですか?」
「ああ。前に話したよな?おれとフーは神狼族だって」
「ええ。魔獣退治専門と聞きましたわ」
「実は、おれたち神狼族は···。世界最強の力を振るう事ができる」
「世界最強の···、力···?」
「ああ。具体的には言えねえ。でもな?そんな力を持っていても、今回は逃げるしかできなかったんだよ···」
「············」
「確かに本気を出せば、軍隊なんておれ1人でも蹴散らせれる。でも、今回はそれを人質という形でいとも簡単に封じられちまったんだ···。おれは思った。こんな力を持っていても、やり方次第で負けちまうってな···」
「············」
「情けねえ話だろ?世界最強って言っても、実際には何もできなかったんだ。こうやって鍛錬しても···、意味ねえんじゃねえか?って思っちまったりするんだ」
「···なるほど。モンドは···、壁に当たってるのだと思いますわ」
「···壁?」
「ええ。その壁は、鍛錬して越えられるものではないのでしょう」
「············」
「ですが、壁は何も越えなければならないものでしょうか?」
「···それって?」
「越える以外の方法があるのではないでしょうか?例えば···、迂回するとか···、モンドだったら壊してしまうとか···!?」
「えっ!?」
「うふふ···。わたくしも物騒な考えをしてしまいましたわね。ですが、わたくしはモンドにはそれができると思いますわ」
「壊す···、か···。でもどうやって?」
「こういった時は初心に戻るといいですわ。モンド?あなたはなぜ『強くなろう』と思うのですか?」
無事にホール王女とトロン皇子のところに戻ってこれました。
今回の出来事はモンドくんにとっては大きな『壁』でした。いくら世界最強の力を持っていたとしても、いとも簡単に封じられてしまう場合があるという事を身をもって体験したんですね。
実は続編でアキくんがパスさんから指摘されましたが、この時にモンドくんは話は聞いていましたけどもよく理解できていませんでした。まぁ、当時6歳でしたしね。
そんな悩みをホール王女は見事モンドくんから引き出してしまいました。やはり王族ということだけあって人心掌握術は心得ていたようで、相談相手としては良かったですね。
さて次回予告ですが、ホール王女の問いかけにモンドくんは真剣に答えようと考えます。『どうして強くなるのか?』という問いに出したモンドくんの答えはどういったものなのでしょうか?
そして現状をアキくんに相談しますよ~!アキくんが出した回答とは?
それではお楽しみに~!




