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『元SSS級暗殺者の道具屋生活。依頼ついでに冒険者をしていたら、なぜか伝説になっていました』  作者: ねむい人
第1章『辺境の道具屋編』

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第六話 魔王、起床する

第六話です。

ついに魔王ノクスが復活します。

 森の奥。


 レオン達は進んでいた。


 ミアは震えている。


 グラディオスは険しい顔。


 レオンだけ普通だった。


「怖くないんですか?」


 ミアが聞く。


「何が?」


「魔王ですよ!?」


「見てから考える」


 ミアは頭を抱えた。


 そういう問題ではない。


 十分後。


 森の最深部へ到着する。


 そこには巨大な祭壇があった。


 崩れかけた古代遺跡。


 無数の魔法陣。


 そして。


 中央に黒い棺。


「ここだ」


 グラディオスが呟く。


 顔色が悪い。


「間違いない」


「強いのか?」


 レオンが聞く。


「私と同格だ」


 ミアの顔から血の気が引いた。


 古龍と同格。


 つまり災害そのもの。


 その時だった。


 ゴゴゴゴゴ……


 大地が揺れる。


 棺を縛る鎖が軋んだ。


「まずい!」


 グラディオスが叫ぶ。


 しかし。


 遅かった。


 パキン。


 一本。


 パキン。


 二本。


 そして。


 全ての鎖が砕け散る。


 轟音。


 黒い魔力が空へ噴き上がった。


 森の木々が揺れる。


 鳥達が逃げ出す。


 魔物達が悲鳴を上げる。


 そして。


 棺が開いた。


「……」


 静寂。


 一人の男が立っていた。


 黒髪。


 黒衣。


 赤い瞳。


 整った顔立ち。


 年齢は二十代前半ほど。


 だが。


 その存在感だけで分かる。


 化け物だ。


「久しいな」


 グラディオスが言う。


 男はゆっくり振り返った。


「災厄龍か」


 低い声。


「お前も生きていたのだな」


「ああ」


 数百年ぶりの再会だった。


 ミアは泣きそうだった。


 伝説の怪物が二人いる。


 帰りたい。


「で?」


 レオンが聞く。


「誰だ?」


 男が固まった。


「……知らぬのか?」


「知らない」


 即答。


 男は少し傷付いた。


「我は魔王ノクス」


「そうか」


 反応が薄い。


 ノクスは困惑した。


 普通もっと驚く。


 恐怖する。


 逃げる。


 だが。


 目の前の男は全く動じない。


「お前は?」


「レオン」


「そうか」


 会話が終わった。


 数百年ぶりに復活した魔王の自己紹介が終わった。


 その瞬間。


 ぐぅぅぅ……


 音が響く。


「……」


「……」


「……」


 ノクスの腹だった。


 魔王は目を逸らす。


「腹減ったのか?」


 レオンが聞く。


「数百年寝ていたからな」


「そうか」


 レオンは荷車を漁る。


 そして。


 昼用のパンを差し出した。


「食うか?」


「いいのか?」


「別に」


 ノクスは受け取る。


 一口。


 二口。


 三口。


 涙が出そうになった。


 久しぶりの食事だった。


「うまい……」


「普通のパンだぞ」


「うまい……」


 魔王は泣きながら食べた。


 ミアは何を見せられているのか分からなかった。


 その後。


 ノクスは辺りを見回した。


「城は?」


「無いな」


 グラディオスが答える。


「勇者達が壊した」


「配下は?」


「とっくに死んでいる」


「財宝は?」


「大半は持ち去られた」


 ノクスが固まった。


 沈黙。


 長い沈黙。


「……」


「……」


「……」


 そして。


 魔王は空を見上げた。


「我」


「うん」


「無職では?」


 ミアが吹き出した。


 グラディオスも肩を震わせる。


 レオンだけ普通だった。


「そうかもな」


「そうか……」


 魔王は項垂れた。


 数百年前。


 世界最強だった男。


 復活十分後。


 無職が確定した。


「帰るか」


 レオンが言う。


「どこへ?」


 ノクスが聞く。


「店」


「店?」


「道具屋」


 ノクスは首を傾げた。


 しかし。


 今は行く場所がない。


「……分かった」


 こうして。


 世界を震え上がらせた魔王は。


 辺境の道具屋へ向かうことになった。


⸻


 第六話 魔王、起床する 完

数百年ぶりに復活した魔王。

しかし最初に直面した問題は世界征服ではなく「無職」でした。


次回、第七話「魔王、就職希望」。

魔王、まさかの職探しです。

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