第五話 古龍、就職する
古龍が仲間(?)になりました。
翌朝。
辺境の町。
夜明けの道具店。
「……何してるんだ?」
レオンは店の裏へ回った。
そこには。
巨大な黒竜がいた。
災厄龍グラディオス。
昨日復活したばかりの古龍である。
しかし。
今の姿は違った。
人間サイズになっていた。
黒髪。
赤い目。
二十代後半ほどの男。
長身。
妙に整った顔立ち。
「掃除です」
真顔だった。
「掃除?」
「居候するなら当然かと」
手にはホウキ。
しかも妙に上手い。
店裏の落ち葉が綺麗に集められている。
「そうか」
「そうです」
レオンは納得した。
グラディオスは少し安心する。
正直。
追い出されると思っていた。
しかし。
この男は本当に気にしていない。
古龍だろうが。
魔王だろうが。
客か従業員くらいの認識なのだ。
「朝飯食うか?」
「いただきます」
即答だった。
十分後。
店の中。
パン。
スープ。
目玉焼き。
質素な朝食。
だが。
グラディオスは固まっていた。
「どうした?」
「数百年ぶりです」
「何が」
「誰かと食事するの」
レオンは少し考えた。
「そうか」
「それだけですか?」
「うん」
優しかった。
変に気を遣わない。
だから逆に居心地が良い。
グラディオスは少しだけ笑った。
その時だった。
ガラン。
店の扉が開く。
「レオンさんいるー!?」
元気な声。
飛び込んできたのは。
新人冒険者の少女。
ミアだった。
「おはよう」
「おはようございます!」
そして。
ミアの視線が止まる。
グラディオス。
黒髪の青年。
「誰です?」
「居候」
「へぇー!」
警戒ゼロだった。
グラディオスが困惑する。
「驚かないのか?」
「なんでです?」
「いや……」
古龍だからだ。
とは言えない。
ミアは笑顔だった。
「レオンさんの知り合いなら大丈夫ですよ!」
「……」
グラディオスは沈黙した。
この町。
危機感が無さすぎる。
いや。
原因は一人しかいない。
目の前の男だ。
「で?」
レオンが聞く。
「今日は何だ?」
「あっそうでした!」
ミアは慌てて紙を出した。
「緊急依頼です!」
「緊急?」
「はい!」
顔色が悪い。
いつものミアではない。
「森の奥で人が消えてるんです」
「魔物か?」
「分かりません」
ギルドも調査中。
しかし。
行った冒険者が帰ってこない。
被害者は既に十人以上。
「それで?」
「ギルド長がレオンさん呼んで来いって」
「断る」
「早っ!?」
即答だった。
「店あるし」
「人命より店ですか!?」
「店大事」
ミアは頭を抱えた。
しかし。
隣で聞いていたグラディオスは違った。
顔色が変わっている。
「……森?」
「ん?」
「どこの森です?」
ミアが地図を見せる。
その瞬間。
グラディオスが固まった。
「おい」
「何だ?」
「面倒なことになってるぞ」
「そうか」
「反応薄いな!?」
珍しく焦っていた。
数百年生きた古龍が。
「そこにいるのは魔物じゃない」
「違うのか?」
「ああ」
グラディオスの額から汗が流れる。
「もし私の予想が正しければ……」
そして。
古龍は低く呟いた。
「封印されていた魔王だ」
店内が静まり返った。
ミアが青ざめる。
「ま、魔王?」
「ああ」
「それ強い?」
レオンが聞く。
グラディオスは答えた。
「国が滅ぶ」
数秒の沈黙。
そして。
レオンは立ち上がった。
「行くか」
「店は!?」
「常連が困る」
グラディオスは思った。
この男。
世界を救う理由が全部それだな。
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第六話 魔王、起床する
へ続く。
次回、封印された魔王登場。
レオンの平穏な道具屋生活は今日も遠ざかっていきます。




