第十九話 唯一の生存者
いつも読んでいただきありがとうございます!
第十九話です。
今回は「十三番兵器」の正体に少しだけ触れる回でした。
まだ全ては明かされません。
辺境の空。
完全沈黙。
誰も動かない。
理由は簡単だった。
レオンが。
初めて。
「強いな」
そう言ったからだ。
ノクスが固まる。
ルナも固まる。
フェンも固まる。
グラディオスですら目を見開いていた。
「聞いたか?」
アークが震える。
「聞いた」
ノクスが答える。
「師匠が強いって言った」
「終わったな」
「終わったな」
なぜか全員が相手に同情していた。
その時。
黒衣の男が笑う。
「相変わらずだな」
どこか懐かしそうだった。
「昔からそうだ」
レオンは首を傾げる。
「会ったか?」
「会った」
「どこで?」
「世界の終わりで」
「覚えてない」
「知ってる」
即答だった。
男は慣れていた。
かなり慣れていた。
レオンが覚えていないことに。
その時点で付き合いの長さが分かる。
「名前は?」
男は少しだけ黙る。
そして。
「ゼクト」
答えた。
「そうか」
レオンは頷く。
三秒後。
「知らんな」
「だろうな」
ゼクトも頷いた。
もう傷付かない。
慣れとは恐ろしい。
⸻
その時。
ノクスが小声で聞く。
「誰なんだ?」
ゼクトが視線を向ける。
「私は最後の生存者だ」
全員が眉をひそめた。
「何の?」
ルナが聞く。
ゼクトは静かに答える。
「十三番以前の世界」
空気が止まった。
レオン以外。
全員が固まる。
「は?」
アークが声を漏らす。
「以前?」
「そうだ」
ゼクトは空を見上げる。
「今のお前達は知らない」
「この世界が何度も壊れたことを」
誰も喋れない。
「世界は一度ではない」
「二度でもない」
「三度でもない」
ゼクトの声だけが響く。
「何度も滅び」
「何度も作り直された」
住民達は理解できなかった。
だが。
弟子達は理解した。
だからこそ顔色が悪い。
「そして」
ゼクトはレオンを見る。
「その全ての中心にいたのがお前だ」
静寂。
風も止まる。
レオンだけが首を傾げた。
「そうだったか?」
「そうだ」
ゼクトは断言した。
「お前は毎回世界を救った」
「毎回?」
「毎回だ」
嫌な予感しかしない。
「一回目は神だった」
「ふむ」
「二回目は王だった」
「ほう」
「三回目は魔王だった」
ノクスが吹き出した。
「魔王だったのかよ」
「最強だった」
「やっぱりか」
納得しかなかった。
そして。
ゼクトは続ける。
「十二回目」
その声が重くなる。
「お前は世界そのものになった」
全員が黙る。
意味が分からない。
だが。
とてつもなく危険な話なのだけは分かる。
「その結果」
ゼクトの目が細くなる。
「十三番兵器が生まれた」
初めてだった。
レオンの表情が少しだけ変わる。
「……ああ」
何か。
思い出しかけた。
頭の奥。
遥か昔。
忘れていた記憶。
壊れた空。
燃える世界。
泣いている誰か。
そして。
自分の手。
そこにあったのは。
剣ではなかった。
もっと恐ろしい何かだった。
瞬間。
空間が揺れる。
ビキビキビキ―――!!
世界そのものに亀裂が走る。
「まずい!!」
ゼクトが叫んだ。
初めてだった。
この男が焦ったのは。
「思い出すな!!」
しかし。
遅かった。
レオンの瞳が。
一瞬だけ。
黄金色に輝いた。
その瞬間。
世界中で。
眠っていた何かが目を覚ます。
王都。
海底。
天空。
魔界。
神界。
世界中の封印が震えた。
『―――見つけた』
無数の声。
『十三番だ』
『十三番が起きる』
『終わる』
『また終わる』
世界全体が恐怖した。
そして。
レオン本人だけが。
「腹減ったな」
そう言った。
全員がずっこけた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ゼクトはレオンの過去を知る数少ない存在です。
そして世界中の封印が動き始めました。
次回から物語はさらに大きく動いていきます!
また次回もよろしくお願いします!




