第十五話 神獣、就職希望
いつも読んでいただきありがとうございます!
ついに神獣フェンも合流しました。
これで夜明けの道具店の従業員は、ほぼ世界最強メンバーです。
しかし今回は少し雰囲気が変わります。
王都。
大混乱だった。
『師匠はどこだ』
神獣の一言である。
たった一言。
それだけで王都機能が停止した。
「落ち着け!!」
「無理です!!」
「避難を!!」
「どこへ!?」
兵士達が走り回る。
貴族達は泣きそうだった。
王は胃薬を飲んでいた。
そして。
神獣は再び口を開く。
『辺境だな』
次の瞬間。
消えた。
王都上空から。
一瞬で。
静寂。
誰も動けない。
数秒後。
王が呟いた。
「……追跡」
「嫌です」
全員即答だった。
もう関わりたくなかった。
⸻
一方その頃。
夜明けの道具店。
「配達行ってくる」
レオンはいつも通りだった。
「行ってらっしゃい」
アリシア。
「気を付けて」
ルナ。
「肉買ってきて」
グラディオス。
「働け」
レオンは言った。
「働いてます」
グラディオスは薪を割っていた。
片手で。
山一つ分。
意味不明だった。
その時。
空が暗くなった。
「ん?」
レオンが見上げる。
巨大な影。
街全体を覆うほどの巨体。
住民達が悲鳴を上げる。
「神獣だ!!」
「終わった!!」
「街が消える!!」
しかし。
店の中の反応は薄かった。
「ああ」
ノクスが言う。
「来たな」
ルナも頷く。
「最後の一人だね」
カイは欠伸をした。
そして。
神獣が降り立つ。
大地が揺れる。
山のような巨体。
黄金の毛並み。
巨大な翼。
神々しい威圧感。
まさに伝説。
まさに神話。
その神獣が。
レオンを見る。
数秒。
沈黙。
そして。
巨大な身体が縮んだ。
みるみる小さくなる。
やがて。
一人の少女になった。
金色の髪。
金色の瞳。
十五歳ほどの見た目。
そして。
泣きそうな顔だった。
「師匠ぉぉぉぉぉ!!」
飛び付いた。
「おお」
レオンが受け止める。
「会いたかったですぅぅぅ!!」
「そうか」
「五百年ぶりです!!」
「そんなにか」
覚えていなかった。
少女は泣いた。
「酷いですぅ!!」
他の弟子達が頷く。
全員通った道だった。
「名前は?」
「フェンです!!」
「そうか」
覚えていなかった。
フェンは膝をついた。
「やっぱりぃぃぃ……」
絶望していた。
慣れているはずなのに。
毎回効くらしい。
「それで」
レオンが聞く。
「何しに来た?」
フェンは即答した。
「就職です!!」
まただった。
アークが頭を抱える。
「神獣までかよ……」
「働けるか?」
「頑張ります!!」
「採用」
「やったぁ!!」
神獣が就職した。
歴史上初だった。
その時。
カイが空を見る。
「来る」
「何がだ?」
レオンが聞く。
カイは珍しく真面目だった。
「敵」
全員の表情が変わる。
弟子達。
古龍。
魔王。
神獣。
その全員が。
同時に空を見上げる。
遥か彼方。
黒い裂け目。
空間そのものが割れていた。
そして。
そこから現れる。
無数の目。
無数の腕。
無数の魔力。
世界の外側から来る存在。
それを見たノクスが呟く。
「厄介なのが起きたな」
初めてだった。
弟子達が笑わなかった。
レオンだけが首を傾げる。
「知り合いか?」
全員が同時に答えた。
「違います」
そして。
世界最大の危機が。
静かに始まろうとしていた。
第2章前半の「弟子集合編」が一区切りです。
次回からは、弟子達ですら警戒する存在が動き出します。
もちろんレオン本人は危機感ゼロです。
次回
「世界の外から来たモノ」
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