ラルバ=レム=ラーの生き残り
綺麗に整理された住宅跡。
壁は風化したり崩れており外の空気が簡単に入り込んできた。
それからジラセとユマ、そしてルンルン卿は老人から座る様に促された。
三人が手近な壊れた木の椅子や、壁や石などに腰をおろしたのを確認したのか咳を一回した老人は語り始めた。
「かつてこの集落は、この地のそばの国であるラーディン=ガル国から度重なる攻撃を受けていたんじゃ。
しかし、強力な部隊と地理上の特質と高度な作戦によって独立を維持してきたのであるな。
君たちが集合した地点に嘗てこの地の霊魂石があったんじゃよ」
三人が一応に彼の話しを真剣に聞いている空気をジラセは感じていた。
時たま鳴く鳥の鳴き声や獣の吼え声がその静かな静寂を切り裂くように伝わってくる。
ジラセは彼の言葉を一語一語刻み込むようにのめり込んでいた。
「しかし、それも百年前の大国に変わったかつての敵国の猛攻を前にその膝を屈したんじゃ。
その時の屈辱は親族のそう、成人した者達から何度も聞かされていて“いつか支配を脱する”ことが住人達の悲願になったんじゃ……」
ルンルン卿がその時に言葉を挟んだ。
「そして三十年ほど前に将来、レ=メゾンと名付けられる事になる私達の祖国が反旗を女神の大乱令の時に翻したと」
気が付くと老人は酒瓶を抱えており、その蓋を開いて小さなカップに注いで飲んだ。
そしてカップを眺めながら言葉を続ける。
「そう。
その当時は儂らもまさか完膚なまでに勝てるとは想わなかったんじゃ。
勝つ見込みは最初からあったそうじゃがな━━その時に組んだ相手がお主らの支配下にあるリン=ジェン国」
ジラセとユマは顔を見合わせた。
目と目で意思疎通が付き合いの長さと深さから伝わったように彼は感じた。
ジラセはリン=ジェン国を裏切る感じになった事を知らなかったのであった━━ユマもであったのだけど。
「話しを続けて良いかの?」
三人は頷いた。
その動作の確認を認識してから老人は話しを続けていく。
「儂らの故郷のラルバ=レム=ラーは君らの祖国が独立を果たす時の下支えを果たした。
その時の功績によって特権的な地位を認められたんじゃ。
しかし、その後の彼の地の裏切りは発想の外であったのじゃ」
「儂らも全身全霊を投じて抵抗したが、かなわなかったんじゃ。
その霊魂石ももう力を喪っておる。
まぁ、村落レベルでおわってしまい都市へと脱皮できなかった場所の末路じゃろうな」
そして皆、前に出されている食事を口に運んでいく。
ユマは急に立ち上がって詩を吟じ始めた。
彼の地レ=メゾン その地は小さな力
その中で発展するという希望を胸に
そして自らを鍛え上げていく
その前の路にいる 邪魔な地を
輝かしい希望と
そして策略を持って
蹴散らしていく
見る人が見れば その腹黒の心は
いつか破られんその日を躱す為
ユマの語りはさらに続いていく。
他の三者はその詩に耳を傾けていた。
不意に思い至ったように老人がルンルン卿に顔を向けた。
「儂はこの先短い命じゃから、この地で果てるのが本望と考えておった。
しかしな、レ=メゾン国にこのような若き素晴らしい力の持ち主が眠っておるなら、赴く事も考えんでない。
幸いこの長い生涯に渡って独り者であることから縛りもないしのぉ」
と笑っている。
「あの生き延びれた秘訣は一体……何なんでしょうか?」
とジラセの談。
老人はその言葉に微笑みを浮かべると一言呟いた。
「いづれ話してやってもよいが、今はその時ではない」と。
尻切れトンボみたいですが、第一章の終わりです。




