第二回発表親睦会
「それで俺は、リィン海から町リン=ジェンに渡った。
勿論冒険家としての職務の都合でね。
その地の住人は確かに霊胞がなくて覇気がなく常に項垂れているようだった。
ああはなりたくないなってね」
彼の、そうジラセの前で四名の仲間たちが固唾をのんで見守っていた。
彼の言葉を一語も聞き洩らす事のないようにと真剣に傾聴している様子であった。
その会話の最中に数名の給仕がお盆の上に複数の小皿を乗せて室内に入ってきた。
皆、同じ装飾のされた制服と凝った髪型をしている妙齢の男女であった。
そして、木漏れ日の狐班の円卓の上にお盆から取り上げた小皿を静かに置いていく。
それは鮮やかな印象を与える食事であった。
「それじゃあ、今回は僕が調理した食事をミンナに提供しようと思ってね」
小皿の上に丁寧にスモタコで食材が巻かれている料理。
スモタコは、小麦を焼いて引き延ばして板状にして様々な料理に使える小料理の食材であった。
それに辛い調味料や、甘いのや好みに応じて様々な材料を付けて食べる者が多かった。
「先ずはこれは前菜だよ。
この料理は、僕の一族がこの宿を創り上げてから内容を更新し続けてきた料理の一品だよ」
シャインはまるで自分の手柄であるかのように手を打ち叩いて全員の注意を惹きながら唱えている。
ジラセはフォークでその一つを横から刺して口に運んだ。
口の中に食材の天然のままの野菜の甘さと共に、肉の香ばしさが口内に広がっていく。
一人頭、三個ずつだけどさらに食べる事ができそうな味である。
さらに主菜へ向けての食欲をそそる様な味となっている。
彼は二つ目からは、辛めのタレと付けて食してみた。
「シャインさん。
わたくしはこのお野菜が何か気になるのだけど……?
お教え下さるかしら?」
嫣然とした笑みを浮かべたミィンは彼の方へと身を乗り出した。
服と身体の合間からは仄かな香りと共に肌着が覗き、ささやかに飾られている首飾りが閃いた。
「こ、これは僕の一族の秘伝だから気安く教える事はで、できないんだよ。
例え仲間だとしても!」
キッパリとした口調を頑張っているという事が分かるほど健気な様子であった。
口をモゴモゴと動かしている様子も彼には気づくことができたのだった。
「シャインとミィン、お二人だけで心を通わせているなよ。
ジラセとユマもそうだろ、私だけ相手がいないな」
彼は半ば笑顔で半ば不満顔である様子を見せながら笑っている。
ジラセは反論しようとしたら、ユマが片腕に抱きついてきた。
「そうよ!
あたしたちは未来を誓った仲だから」
彼女の乳房が当たっているが、ワザと当てているようにジラセは感じた。
バルは四人の姿を眺めているのをジラセは感じながら、班長の方を観察した。
彼は両瞼を閉じて瞑想している。
その静けさはいずれ到来するであろう嵐の前触れの様にも彼には想えた。
(バルは俺たちの班の班長。
ここで彼の期限を損ねる事はよくないとはいっても、どうやるのがいいのか……?)
彼は思考がどん詰まりになるのを感じながら悶々としてくる。
「ねぇ、ジラセ君」
ユマが耳元で呟いた。
ここで無視するのも良くないと考えて、振り向いた。
その途端、彼女は唇を重ねてきた。
吐息が口内に入ってくるので、突き放した。
「な、何するんだよ!
変な仲だって勘違いされるだろ」
彼女は言葉を聞いてか口を窄めて尖らせた。
そしてそのまま席を立っていく。
「━━ジラセ君」
「何だよ?」
「何でもないわよ」
バルは額を片手で押さえている。
その様子は全てを見通す事の出来そうな神の御使いのようであった。
もっともそんな神の御使いが存在するのか分からなかったのだけど。
「さっともかくさ食事を続けよう」
とバルが取り仕切った。




