父からの許し
打ち身などの傷も完全に癒え、気分も上り調子になってきた秋季手前の夏後季二十九日。
ジラセは秋前季十九日でまた一歳歳をとるという感覚を抱いていた。
そう、急がないと班の皆に対して宣言した今年中いや、ルンルン卿に伝えた十五歳までに就くと気合を入れなおした。
朝起きて準備体操をしてから、朝一番の陽を浴びに外に出た。
外は、上り始めた朝日によって仄かに暖かくなると共に風が気持ち良かった。
空の天気は秋晴れであり、雲も少ない。
「よし、父ちゃんに勝負の宣言を行いにいくか」
それから居間へと向かい、向かい合って朝食を食べている両親に対して言葉をかけた。
その言葉を聞いて二人はとても吃驚した様子で、特に父親の方は食卓を叩いた。
「ジラセよ、同じ事での勝負はもっと月日が流れてからだ。
今回の試練としては、これだ」
ザッカスは妻であるマナラバの方を見てから、互いに頷きあうと立ち上がった。
そして一個の金属製の箱を卓の上に置いた。
そして蓋を開いて、中の物を取り出して置いた。
「これは今のレ=メゾン国で作製された幾つかの工芸品。
これの大まかな時代と内容を答えられるかという試験を今回は行おうと思っている。
毎度毎度、戦闘関係では対策も立てられてしまうからな」
ジラセは工芸品を凝視した。
全て、木工品の様に思える素材と外観を伴っていた。
彼は内心今度の試練の内容を知ってほくそ笑んだ。
(父ちゃんは僕の賜力である解析し本懐を知らないから、こんな簡単な内容を出題するなんてね)
彼は霊胞に力を集めて目を工芸品に焦点を絞って使用した。
正し、一個ずつ確かめる事はできないから、作製時期の順番だけ調べてみた。
しかし、彼の予測は大きく外れた。
何故ならば、作製時期がほぼ同時期に行われたのか、時代は判明したが他は賜力を使ってもハッキリとしなかった。
「我が息子ジラセよ、どうした?」
ジラセは額から汗を流した。
一日に一度しか使えない為、もはや勘だけが頼りの綱であった。
彼は今までの経験と知識を総動員して一個ずつ答えていった。
「カル=レル国統治下の頃に作られた工芸品です」
「それで、この枝にとまった鳥は何か分かるか?」
ジラセは笑顔になってしまった。
難易度が一気に下がった気がするからであり、工芸品の鳥はカル=レル国の神鳥でありその漆黒の翼が全ての土地を取り込もうという国是を表していたから。
しかし、今はもうその国は弱小国に成り下がっていた。
「山鳥の神鳥であるラララン鳥です。
彼の国でよく見かける事の多い猛禽類の一種の主な得物は鼠や栗鼠などです」
ザッカスは息子であるジラセの目を凝視した。
そしてその目の輝きが変わらないことを確認したのか、手にしていた工芸品を卓に置いた。
「さすが我が息子だな、正解だ。
しかし、順番は若干違う。
もっとも、年内の内の春期一桁、十の位とそして二十の位だな。
もしかして、お前の賜力は鑑定とかできるような種類なのか?」
ジラセはそのセリフを聞いてしまって大慌てしてしまった。
余計に誤魔化そうとした行動で、さらに墓穴を掘っていくようであった。
ザッカスは、ほくそ笑むと息子であるジラセの肩にポンと手をのせた。
「細かい部分が違っていてもな、冒険家は遺留物の専門家ではない。
それだから、答えられなかったとしても気にしない事だな」
そして両肩を落として続ける。
「ただ、自分の感情などを隠せる訓練をしといた方がいいな。
冒険家は何に会うか分からないからな、つまり未知の能力を保持した者に会う可能性が高い。
他の職業よりな」
ジラセは父親の言葉を反芻して、ある事に気が付いて目を見開いた。
そして問うたのであった。
「じゃあ、僕が冒険家に就くことを許してくれたのですか?」
「近年の剣術等の調子の感じでは、最低線は超しているだろうと俺は判断できた。
合格だ」
ジラセは利き腕を宙に持ち上げた。
余りにも喜びが溢れてきてしまい制御できなくなってしまったからであった。
母であるマナラバはその両手で拍手をした。




