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一章 第五通 ごめんなさいとありがとう

「さて。」

俺が立ち上がる。

「そろそろ帰るか。ここにいても答えが出るわけでもないしな」

「やるせないです、、、」


凛が渋々立ち上がる。

「ほら、置いてくぞ。」

「あぁ、、!待ってください!」

凛が走ってついてくる。


「手紙くんはお家どちらですか?」

「あいにく、お前に教える住所は持ち合わせてねーよ。」

僕がそう言うと凛がむーっと言いながら頬を膨らませている。

そんな凛をスルーしつつ歩いていると


「凛、、、、あれ。」

「、、、、?どうかしたんですか」

僕が指差す先にはうちの制服を着た女性が公園のベンチに座っている。

「お知り合いですか、、、?」

「いや、、、あの子、、、佐々木柚子だ、、、」


凛が目を大きく見開く。

「分かるんですか、、、!もしかして、、さっき言っていた、、、」

僕はこくりと頷く。

「あの子が受け取る人だって、、、そんな感じがする」

「じゃあ早く渡してあげましょう!きっと、、、」

僕は走り出そうとする凛の腕を掴んで引き留める。


「差出人がわからないんだぞ。もしかしたら彼女を傷つけるかもしれない。ちゃんと話をして、よく考えてから渡すべきだ。」

凛は少し考えて、すぐに頷く。

「そうですね、、、少し迂闊でした。」

「とりあえず、彼女と話してみよう。どんな人なのか知ってみたい。」

僕がそう言うと凛は少し頬を膨らませている。

なにか悪い事を言っただろうか。

とりあえず話してみなければと思い彼女の方へと歩き出す。


「君。ここで何してるの?」

僕が話しかけると佐々木柚子は少し顔を上げて不思議そうな顔をする。

「誰、、、?」

「僕は届出手紙。で、こっちが。」

「水瀬凛です。同じ学校の制服の方を見かけましたのでどうかしたのかなと思いまして。」


「なら、どうもしてないから話しかけないで。余計なお世話だから、、、」

佐々木柚子が俯いたまま冷たく言う。

彼女はどうも、人と関わることをどこか怖がっているような、そんな気がする。


「そうか。それは悪かったな」

僕は素直に謝って、その場を離れようとする。

「えっ、手紙くん?」

凛が驚いたように声を上げる。


「なんだよ」

「いや、もう行っちゃうんですか?」

「本人が話しかけるなって言ってるんだから仕方ないだろ」

「それはそうですけど……」


凛は柚子の方をちらりと見る。

柚子は相変わらず俯いたままだ。

「じゃあ、失礼します」

凛が軽く頭を下げる。

僕たちはそのまま公園を出ようとした。


……その時。

「……待って」

小さな声が聞こえた。

僕と凛は同時に振り返る。

「何か用?」


柚子は顔を上げずに、膝の上で両手を握りしめていた。

「……あなたたち、一年生?」

「そうだけど、、、」

「……そっか」

それだけ言うと、柚子は再び黙ってしまった。


なんだ?

何か言いたい。そう感じる。

「何か聞きたいことでもあるの?」

「別に……」

「じゃあ、どうして呼び止めたの?」

「……なんとなく」

なんとなく、ね。


僕は小さく息を吐いた。

「凛、帰ろう」

「えっ、でも……」

「いいんだ。」


僕は柚子に背を向ける。

すると、

「……私、学校に行きたくないんです」

またしても小さな声が聞こえた。

今度は振り返らなかった。

「……そう」

「それだけです」

「そっか。」

それ以上、何も聞かなかった。

俺たちはそのまま公園を後にした。


「……手紙くん」

「なんだよ」

「さっきの子、どう思いました?」

「どうって?」

「なんだか、寂しそうでした」

凛は少しだけ後ろを歩きながら言った。


「そうだな。」

「はい。誰かと話したいのに、誰とも話したくない。そんな感じがしました」

「随分と難しいことを言うんだな。」

「そうでしょうか」

「ああ。少なくとも僕にはよく分からん」

僕はポケットに手を突っ込んだ。


「ただ、あいつが何かを抱えてるのは間違いないだろうな」

「……ですよね」

「だからって、僕たちが何かしてやれるわけでもない」

「それは……」


凛は何か言いかけて、口を閉じた。

「手紙が届いたからって、そいつのことを全部知ってるわけじゃない。差出人が誰なのかも、どんな事情があるのかも分からない。まずはそこからだ」

「……はい」

「それに、手紙を届けるのは僕たちの都合じゃない。受け取る側の気持ちも考えないとな」

凛はゆっくりと頷いた。


「手紙くんは、やっぱり優しいですね」

「は?」

「だって、さっき私を止めてくれたじゃないですか。あのまま勢いで渡していたら、佐々木さんを困らせていたかもしれません」

「別に優しくねーよ。面倒事を増やしたくないだけだ」

「ふふっ。そういうことにしておきます」

今なんで笑ったんだろうか、、、まあいいか。


「それより、凛」

「はい?」

「お前、帰る方向どっち?」

「……え?」

「さっきからずっと僕についてきてるけど」

「あっ」

凛は一瞬固まった。

「そ、そうでした! 私、反対方向です!」

「だろーな。」

「もう! 早く言ってくださいよ!」

「ぼーっとしてる方が悪い。」

「手紙くんが聞いてくれないからです!」

「僕のせいにするな」

そんなやり取りをしながら、僕たちは別れた。

帰り道、僕は一度だけ公園を振り返った。

佐々木柚子は、まだあのベンチに座っていた。


翌日。

雨が降っていた。

いつものように、俺の机の中には白い封筒が一つ入っている。

宛名は、佐々木柚子。

僕はそれの中身を確認しようとして、手を止めた。


「……手紙くん?」

隣から凛が覗き込んでくる。

「なんだよ」

「その手紙、昨日の佐々木さん宛てですよね?」

「ああ」

「差出人は分かりましたか?」

「まだわからない。別に、急ぐ必要もないだろ」


本当は、少し怖かった。

差出人の名前を知ってしまえば、僕たちはまた一歩踏み込むことになる。

そして、その先に何があるのかは分からない。

「……手紙くん」

「なんだよ」

「私、佐々木さんともう一度話してみたいです」

「昨日の今日でか?」

「はい。昨日はあまりお話しできませんでしたし」

「本人が話したくないって言ってるだろ」

「それは分かっています。でも、何も聞かずに諦めるのも違うと思うんです」


凛は机の中の封筒を見つめていた。

「私も、お父さんのことで色々ありました。だからこそ、誰かに話を聞いてもらえるだけで、少し楽になることもあると思うんです」

「……」

「もちろん、無理に聞き出すつもりはありません。でも、もし話したいと思ってくれたら、その時はちゃんと聞いてあげたいです」

僕は少しだけ凛を見た。

……こいつは本当に変わったな。

ついこの前まで、自分の父親のことしか考えられなかったはずなのに。


「好きにしろ。」

「はい!」

凛は嬉しそうに頷いた。

「ただし、無理はするなよ」

「分かっています」


昼休み。

僕と凛は、校舎の一階にある廊下を歩いていた。

「佐々木さん、見つかるでしょうか」

「さあな。昨日と同じ場所にいるとも限らないし」

「そうですね……」

「そもそも、学校に来てるかどうかも分からない」

「でも、昨日は制服を着ていましたよね」

「ああ」

「だったら、学校には来ているんじゃないでしょうか」

「行きたくないって言ってたからわからないけどな。」

「……それもそうですね」

僕たちは一年生の教室が並ぶ廊下を歩いていた。


すると、前方から冬馬がやってくる。

「お、届出。何してんだ?」

「ちょっと人探し」

「人探し?」

冬馬は俺の隣にいる凛を見た。

「……ああ、なるほど」

「何がなるほどだよ」

「いや、別に?」

冬馬はニヤニヤしながら俺の肩を叩く。

「頑張れよ」

「だから何をだよ」

「青春?」

「うるせー」


凛がくすくすと笑う。

「ところで、佐々木柚子さんを探しているんですが、見かけませんでしたか?」

「佐々木? ああ、佐々木柚子か」

冬馬の表情が少し変わった。

「知ってるのか?」

「同じ学年だからな。まあ、直接話したことはないけど」

「どこにいるか知らないか?」

「うーん……」

冬馬は少し考える。

「確か、最近はあんまり教室にいないんじゃなかったかな。保健室とか、図書室とかにいるって聞いたことがある」

「保健室か……」

「何かあったのか?」

「いや、ちょっとな」

「ふーん」


冬馬はそれ以上聞いてこなかった。

「まあ、何かあったら言えよ。俺にできることなら手伝うから」

「ああ。ありがとな」

冬馬と別れ、俺たちは保健室へ向かった。


しかし、そこには柚子はいなかった。

次に図書室へ向かったが、やはり見つからない。

「いませんね……」

「そうだな」

「どこに行っちゃったんでしょう」

「さあな。」

僕たちは廊下を歩きながら、あたりを見回す。


その時、階段の踊り場から小さな声が聞こえた。

「……だから、そういうのじゃないって」

誰かと電話をしているようだった。

僕たちは足を止める。

「もういいよ。私のことは放っておいて」

その声には聞き覚えがあった。

「……佐々木さん?」

凛が小さく呟く。

声の主は間違いなく柚子だった。


俺たちが階段を上がろうとした瞬間、

「もう電話してこないで!」

柚子の声が響いた。

そして、通話が切れる音。

しばらく沈黙が続いた。

僕たちは顔を見合わせる。

「……どうします?」

「どうするも何も、今のを聞いて話しかけるわけにはいかないだろ」

「でも……」

「少し待とう」

僕たちは階段の下で立ち止まった。


やがて、足音が聞こえてくる。

柚子が階段を下りてきた。

そして、僕たちに気づく。

「……またあなたたち?」

「よ。」

「こんにちは」

凛が頭を下げる。

柚子は露骨に嫌そうな顔をした。

「何か用?」

「ちょっと話したいことがあってな」

「昨日も言ったけど、話すことなんてないから」

「そうか」


僕はそれだけ言って横に避けた。

柚子は僕たちの横を通り過ぎようとする。

その時、凛が口を開いた。

「佐々木さん」

「……何?」

「昨日、学校に行きたくないって言っていましたよね」


柚子の足が止まる。

「それがどうしたの」

「何かあったんですか?」

「あなたに関係ないでしょ」

「そうですね。私には関係ないです」

凛は少しだけ俯いた。

「でも、もしよかったら話を聞かせてほしいんです」

「だから、余計なお世話だって言ってるでしょ!」

柚子が声を荒らげる。


凛は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに表情を戻した。

「……ごめんなさい」

「……」

「無理に聞くつもりはありません。ただ、私たちは同じ学校の生徒です。困っていることがあるなら、力になりたいと思っただけです」

「……そんなの、頼んでない」

柚子はそう言って、階段を下りていった。

俺はその背中を見送る。

「……凛」

「……」

「凛。行くぞ。」

「……はい」


放課後。

雨はまだ降り続いていた。

僕は教室に残り、机の中から封筒を取り出した。

裏面に書かれた差出人の名前を確認する。

やはり何も書いていない。

「せめて手紙の中身だけでもわかればな、、、」

「読んでみますか?」

凛が後ろから覗き込んでくる

「近い。それに、読むのは良くないだろ。」

「でも、佐々木さんはお話しすることはないと言っていましたし、それくらいいいのではないですか?」

「お前、、時折ゲスいな。」

まあ確かに、、、確認してみたっていいのかもしれない。


僕は意を決して封筒を開けた。

中には、二つ折りにされた便箋が一枚入っていた。

そこには、短い文章が書かれていた。


『柚子へ。

あの時は、ごめんなさい。

あの日、あなたが言ってくれた言葉を、私はずっと覚えています。

でも、ありがとう。

大好きです。』


「……これだけか?」

僕は思わず呟いた。

「短いですね……」

凛も便箋を覗き込む。

「ただ、これを読んだ限りだと、何かあったみたいだな」

「『あの時』って、何のことなんでしょう」

「さあな」

僕は便箋を封筒に戻した。


「とりあえず、佐々木柚子に聞いてみるしかない」

「でも、今日の様子だと話してくれるでしょうか」

「さあな」

僕は椅子の背もたれに体を預けた。

「ただ、気になることがある」

「何ですか?」

「この手紙、謝罪の言葉から始まってるだろ」

「はい」

「でも最後は、ありがとうで終わってる」

俺は便箋を見つめる。

「謝りたいことと、感謝したいこと。その両方があるんだろうな」

「……そうですね」

「だったら、余計に本人に渡す必要がある」

凛は静かに頷いた。



僕たちは再び公園に向かった。

昨日と同じベンチ。

そこには、柚子が座っていた。

「……またあなたたち?」

「よ。」

「こんにちは、佐々木さん」

「なんなの?あなたたち。」

柚子は迷惑そうに眉を寄せる。


「今日は、ちょっと聞きたいことがある」

「聞きたいこと?」

「ああ。お前にとって、後悔したりしたあの時ってあるか?友達と喧嘩したりとか。」


その瞬間。

柚子の表情が変わった。

目を見開き、僕の顔をじっと見つめる。

「……どうして、、、、」

「心当たりがあるんだな。」

「……」


柚子は答えない。

「知り合いか?」

「……関係ない」

「そうか」

柚子は立ち上がり、俺たちから離れようとする。

「待ってください!」

凛が声をかける。

「佐々木さん宛てに手紙が届いているんです」

柚子の足が止まった。

「……手紙?」

「ああ」

僕は鞄から白い封筒を取り出した。

「これだ」


柚子は封筒を見つめる。

そして、震える声で尋ねた。

「……誰から?」

「わからない。ただ、お前にどうしても伝えたいことがある人だ

「そんなわけない……」

柚子は首を横に振る。

「だって、美咲は……」

そこまで言って、口を閉じた。

僕は何も言わず、柚子の言葉を待つ。


しばらくして、柚子はゆっくりと口を開いた。

「……美咲は、もういないよ」

「知ってる。」

「知ってるって……」

「この手紙は、亡くなった人から届く手紙だからな」

柚子は僕たちを見つめた。

信じられないものを見るような目だった。

「……何、それ」

「信じられないのも無理はない。僕だって最初はそうだった」

「ふざけないでよ」

柚子の声が震える。

「そんなこと、信じられるわけないじゃん」

「そうだな」

「美咲が手紙を書くわけない……」

「……」

「だって、あの子は私のことなんか嫌いだったんだから」

柚子はそう言って、顔を背けた。

「だから、そんな手紙が届くわけない」


凛が一歩前に出る。

「佐々木さん」

「何?」

「この手紙を、読んでみませんか?」

「嫌」

即答だった。

「読まない」

「でも……」

「嫌だって言ってるでしょ!」

柚子は僕たちを睨みつけた。

「もう終わったことなの。今さら何を言われたって、どうにもならない」

「……」

「美咲がいなくなったことも、あの時のことも。全部、もう終わったことだから」

柚子はベンチの横に置いていた鞄を持ち上げる。


「もう私に関わらないで」

そう言って、歩き出した。

凛は追いかけようとしたが、俺はその腕を軽く掴んだ。

「……今はやめておこう」

「でも……」

「無理に渡しても意味がない」

僕たちは柚子の背中を見送った。

その手には、まだ白い封筒が握られていた。


「美咲は、私のことなんか嫌いだったんだから」

柚子の言葉が頭から離れなかった。

僕たちは帰り道を歩いていた。

雨は少し弱くなっている。

「手紙くん」

「なんだよ」

「美咲さんと佐々木さんの間に、何があったんでしょうか」

「さあな」

「でも、あの様子だと、ただの友達ではなさそうでしたね」

「そうだな」


僕は空を見上げる。

雨の日に届く手紙。

死者が伝えられなかった言葉。

その内容は、いつも決まっているわけじゃない。

ただ、今回の手紙には謝罪と感謝が書かれていた。

「……凛」

「はい?」

「お前は、手紙を受け取る側の気持ちを考えたことあるか?」

「もちろんです」

「じゃあ、もしお前が柚子の立場だったらどうする?」


凛は少し考える。

「……私なら、読みたいです」

「どうして?」

「お父さんの手紙を読んだからです。あの手紙がなかったら、私はきっとずっと後悔していたと思います」

「そうか」

「でも、佐々木さんは違うんですよね」

「ああ」

「美咲さんとの間に何があったのかは分かりません。でも、佐々木さんは手紙を受け取ること自体を怖がっているように見えました」

凛は少しだけ俯く。


「私たちが勝手に届けようとしているだけなのかもしれません」

「……そうだな」

「でも」

凛は顔を上げる。

「それでも、伝えたい言葉があるなら、届けてあげたいです」

凛は僕をまっすぐ見つめる。

「ただし、無理やりじゃなくて、佐々木さんが自分で受け取ろうと思えるように」

「……ああ」

少しだけ、分かってきた気がする。

手紙を届けるというのは、ただ封筒を渡すことじゃない。

相手がその言葉を受け取れるように、待つことも必要なのかもしれない。


次の日。

柚子は学校に来ていなかった。

「……今日は来ていないのですね、、、」

「そうだな」

僕と凛は教室の前で立ち止まっていた。

「昨日のことが原因でしょうか」

「分からん」

「私たち、嫌われちゃいましたね」

「元から好かれてたわけじゃないだろ」

「それはそうですけど……」


凛は少しだけ頬を膨らませる。

「……手紙くんは、どうしてそんなに冷静なんですか」

「冷静なわけじゃない」

「え?」

「ただ、焦っても仕方ないだろ」

僕は教室の中を見る。

柚子の席は空いていた。

「本人が話したくないなら、待つしかない」

「……はい」



その日の放課後。

僕は一人で教室に残っていた。

机の中には、もう新しい手紙は届いていない。

柚子の手紙を見つけてから、三日目。

まだ時間はある。

僕はそう思いながら、机の中の手紙を見つめる。


「届出」

声がした。

振り返ると、冬馬が立っていた。

「何だよ」

「最近、ずっと水瀬と一緒にいるな」

「まあな」

「何かやってるのか?」

「ちょっとな」

冬馬は僕の隣の席に座る。


「……佐々木のことか?」

「知ってるのか?」

「いや、詳しくは知らないけど。最近、学校に来てないって話は聞いた」

「そうか」

「何かあったのか?」

僕は少し迷った。

死者から手紙が届く。

そんな話を、簡単に信じてもらえるとは思えない。

「……人間関係って難しいよな」

「何だよ、急に」

「いや、何でもない」

冬馬は少し笑った。

「お前がそんなこと言うなんて珍しいな」

「僕だって人間だからな」

「そりゃそうだ」


冬馬は机に肘をつく。

「でも、」

「ん?」

「相手が本当は助けてほしいと思ってるなら、誰かが声をかけてやることも必要なんじゃないか」

「……」

「まあ、俺も偉そうなこと言える立場じゃないけどさ」

冬馬は少しだけ笑った。


「お前が誰かのことを気にしてるなら、それは悪いことじゃないと思うぞ」

「……そうかよ」

「おう」

冬馬は立ち上がる。

「じゃあ、俺は帰るわ。明日も来るんだろ?」

「ああ」

「じゃあな」

冬馬が教室を出ていく。

俺はその背中を見送った。

……本当に、こいつは。

時々、変なところで核心を突いてくる。


翌日。

朝から雨が降っていた。

俺はいつものように机の中を確認する。

すると、そこには白い封筒が入っていた。

宛名は、佐々木柚子。

僕はそれを手に取る。

「……また、、、」

後ろから凛が覗く

「え、、、?昨日までの手紙じゃないんですか?」

「ああ。別の手紙だ」

僕は封筒の裏面を確認する。

やはり、差出人の名前は書かれていなかった。


「また、美咲さんでしょうか、、、」

「状況的にそうだろうな。」

「見てみましょう。手紙くん。」

僕はこくりと頷き封筒を開けた。

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