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第56話 王都に到着

 ユキタカ一行は、カールセン王都に昼頃、到着した。


 トールデイン王国に比べると、少し規模は小さいが十分立派な王都だ。


 城門を抜けると、国の中心だけあり、人が多い。


 種族も多種多様である。


「まずは、宿屋を決めたいから、冒険者ギルド本部で宿屋の情報を貰おう」


 ユキタカは慣れた様子で、まずは何をするべきか判断した。


 前の世界と違い、予約しておくなんて便利なシステムは無い。


 どこがいい宿屋かも、口コミ以外では知る由もないし、自分で探すのも大変だから、こういう時は、伝手を使うのが利口な事は経験済みである。


 まあ、冒険者ギルド情報を使えるのは、イリスであってユキタカではないが……。



 冒険者ギルド本部に行くと、イリスが受付でミスリル級昇格の申請書を出して、お勧めの宿屋情報を聞く。


 受付嬢は、最初、事務的にイリスに対応していたが、申請書に目を通すと丁寧な態度に代わった。


「キョウガイ支部からのミスリル級昇格の申請書確認しました! えっと……、登録名は『イリス』さんで大丈夫ですね?」


 受付嬢はその下にイリスの長い名前が書いているので、端折るように聞く。


「はい」


「昇格試験と手続きの為、最低でも三日ほどかかると思いますので、宿屋の確保をお願いします。こちらから紹介する事も可能ですがどういたしますか?」


 受付嬢はイリスの後ろに仲間が二人立っているのでチラッと視線を向けると確認した。


「王都は初めてなので、紹介をお願いします」


 イリスが礼儀正しくお願いする。


 受付嬢は相手がミスリル級候補なので、予算はありそうだと判断すると、超高級宿屋から高級宿屋、そして、少し高い宿屋の三つを候補に上げた。


「場所はそれぞれの紙に地図が描いてあるので、選んで持っていき、宿屋の従業員に渡してください。冒険者ギルドの紹介とわかれば、扱いが良くなると思いますよ」


「みんなどうしますか?」


 イリスが、ユキタカとセイ、そして、従魔の柴竜種マロに聞く。


 三人はそれぞれの宿屋の基本料金や、条件などを見て考える。


「お金の心配はしなくていいから、超高級な宿屋に泊まるかい?」


 ユキタカがニヤリ笑みを浮かべた。


 実は高価な魔石は、あまり集中して一か所で売ると騒ぎになりやすいので、この機会にと、旅の途中に泊まった街で少しずつ売っていたのだ。


「超高級宿屋や高級宿屋は、地方貴族や金持ち、上級冒険者ばかりで息が詰まると思いますが?」


 イリスが、現実的な指摘をした。


「うっ……、それは嫌かも……。じゃあ、少し高い宿屋にしようか」


 ユキタカは、三つの紙の中から、選んで取る。


「それでは、明日の昼、昇格試験の予約を入れておきますね。今日はゆっくりお休みください」


 受付嬢は笑顔で対応すると、他の二枚の紙を回収した。


 内心では一番弱そうなユキタカが仕切っている様子を見て、驚いていた。


(あの人もミスリル級冒険者なのかしら? 私は見た事がないし、聞いた事も無いんだけど……)


 受付嬢は、立ち去るユキタカ達の背中を見送りながら、当然の疑問を持つのだった。



 宿屋に紹介状を持っていくと、宿屋の主人は笑顔で対応してくれた。


 食事の用意も希望を聞いてくれる。


 普通なら、あらかじめ店側が出すか出さないか決め、宿泊客に伝えるだけだから、早速、気を遣ってくれたようだ。


 ユキタカ達は朝食だけお願いした。


 昼食と夕食は外で食べる予定にしていたのだ。


「わかりました。今から昼食をとるのなら、──あそこの店がお勧めです。安い価格帯ですが、美味しい料理を出しますよ」


 店主は外に出ると、同じ通りで少し離れたところに看板を出している店を指差す。


「ありがとうございます」


 ユキタカ達は店主に感謝すると、お勧めのお店で昼食をとり、そのあとは街に繰り出すのだった。


「地元料理だったけど、確かに美味しかったね」


「私としては稀人まれびと料理が、また食べたかったけど、こちらのも悪くなかったわね」


 セイは旅の途中で前の世界の日本料理が『稀人料理』と呼ばれている事を知ったのだ。


「稀人料理は高級みたいだからね。安い価格ではそう食べられないみたいだよ」


 ユキタカも旅の途中で食べたとんかつを思い出した。


「二人とも、あそこに買い取り屋のお店が並んでいますよ」


 イリスは二人が盛り上がっている中、一人しっかり周囲を観察して、目的地を指差す。


「おお! やはり、王都のお店は大きいね。この大きさはトールデイン王国でも見た事がないかもしれない」


 ユキタカはお店を見上げた。


「販売も一緒にやっているみたいね」


 セイは驚いた様子もなく店に入っていく。


 そのあとについて二人と一匹も店内に入っていくのだった。



「いらっしゃいませ~」


 従業員が三人と一匹に気づいた。


「品揃えが凄いね。──あ、すいません、魔石の買い取りはどこでできますか?」


 ユキタカは広い店内を見渡して、従業員に確認した。


「魔石の買い取りは二階ですね。今、高額買い取りしているので、良いものがあったら、この機会に売った方がいいですよ」


「へー! そうします。ありがとう」


 ユキタカはお礼を言うと、二階に向かうのだった。


 二階は、高い上級魔石から、珍しい魔石、一山いくらというクズ魔石まで取り扱っていた。


 魔石は魔導具を動かす為に必要なもので、需要が高い。


 魔法の使用などにも魔力を補助してくれるものもあり、何かと便利なのだ。


 もちろん、その為には一度目的に必要な加工をしなければならないので、魔石加工技師の技術が必要になってくる。


 ユキタカ達はその技術はないので魔石を持っていても宝の持ち腐れだったから、売った方が得だった。


「いらっしゃいませ、今なら上級魔石から下級魔石まで高く買い取りますよ」


 買い取り受付のところに、ドワーフが立っていた。


「どのくらい高く買い取りしてくれるんですか?」


 ユキタカが代表して、試しに聞く。


「王家が今、上級魔石を特に欲しがっているから、上級なら通常の価格の1.5倍くらいかな。よその店より、かなり高く買い取っているよ」


 ドワーフはユキタカ達を冒険者と見ると、親切に教えてくれた。


「そうなの? ──じゃあ、ここで売るね」


 ユキタカはイリス達に確認すると、神器『手提げ鞄』が変化した袋から魔石を取り出す。


「おお! 上級魔石だな! あんたら優秀な冒険者じゃないか!」


 ドワーフの従業員は、すぐに見抜くと、ユキタカから受け取り、まじまじと確認する。


「よし、定価の1.6倍で買い取ろう! どうだね?」


「いいんですか? それじゃあ──」


 ユキタカはドワーフに二言はない事を確認すると、次々に袋から魔石を取り出す。


 それは二個、三個ではなく、十個、二十個と出てくるではないか。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! さすがにそれ以上はこちらが金を用意できない!」


 ドワーフ従業員は慌てて、ユキタカの手を止めた。


「あははっ、冗談ですよ。まとめて買ってくれるなら、1.4倍の値段でいいですよ?」


 今度はユキタカが相手の足元を見て交渉する。


 相手にとっては嬉しい悲鳴だが、買い取りにも限度があるから、ユキタカの条件はありがたいものだった。


「……わかった! ギリギリ店の準備金と俺個人の金を足せば、何とか払えると思う。ちょっと待っててくれ!」


 ドワーフ従業員はどうやら、このお店の店長だったようだ。


 奥に引っ込むと、少しざわついていたが、職人風のドワーフ達と一緒に、お金の入った袋を持って戻ってきた。


「これで全額だ。確認してくれ!」


「信じますよ」


 ユキタカは真剣な面持ちドワーフ店長の顔を確認すると、お金を魔法収納で回収するのだった。

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