第54話 昇格
冒険者ギルドではクエストの完了ポイントや持ち込まれた魔石、魔物の死骸から、追加ポイントも多少プラスされる仕組みだ。
これにより、上を目指す冒険者は、他の買い取り屋ではなく、冒険者ギルドに直接、買い取りをお願いしてくれる。
買い取り屋に比べて安いのは、この為だ。
つまり、お金より地位の向上にお金を支払うようなものである。
ユキタカは生活費を稼ぐ為、買い取り屋に持ち込んでいたが、今回は聖女セイのランクアップの為、冒険者ギルドに持ち込む事にした。
「こ、これは、もしかして……、古代種である地竜の魔石じゃないですか!?」
イリスがプラチナ級、ダフネ・サンセッドがミスリル級冒険者という事で、受付嬢はすぐに奥の特別室で対応したのだったが、室内に驚きの声が鳴り響いた。
「セイの手柄という事でポイントに加算してもらえますか?」
ユキタカが、みんなを代表して進言する。
「(このメンツで底辺のウッド級冒険者が、仕切っている不思議……)……あっ、失礼しました! ──セイさんは現在、カッパー級冒険者ですね? 控えめに考えてもこの魔石のポイントだけですぐ上に行けますが……、問題はレベルですね。先日測定した時、レベルが12でしたから。カッパー級の推奨レベルは9から14。その上のシルバー級は15以上なので、一つ上げるのが限界ですね。それなら、イリス様のポイントに還元すれば、ミスリル級まであとわずかくらいになると思いますよ?」
受付嬢は、イリスがすでにレベル65である事を知っていたので、助言した。
「そちらは別の魔石があるので、問題ないです。この魔石ではセイの階級を上げたいんですよ。レベルも先日からかなり上昇しているので、測定をお願いします」
ユキタカは営業スマイルで、受付嬢に交渉する。
「(だからウッド級冒険者が何で、このメンツを代表しているの?)……わかりました。この魔石を入手したという事は、経験値もかなり入手した事になりますものね。(それでもパーティーのメンツや人数を考えると、上がっても精々2くらいじゃないかしら……?)──それでは測定します」
受付嬢は、測定用の魔導具を奥の棚に取りに行く。
「ここに手を置いてください」
一見すると水晶玉のような球体に、手のひらの形をした凹みがある魔導具が、目の前に置かれる。
聖女セイは慣れた様子で、魔導具に手を置く。
すると、受付嬢の目の前に、レベルが表示された。
「えっと、前回の12から、28に……。えっ? にっ、28!? えぇぇぇ!!?」
受付嬢の驚いた声がまた、室内に鳴り響く。
「し、失礼しました! ──もう一回いいですか?」
受付嬢は深呼吸すると、聖女セイにやり直しをお願いした。
そして、また、レベル「28」と表示される。
「……すみません。これ、夢じゃないですよね……?」
受付嬢は、ユキタカ達全員に視線を泳がせた。
全員が笑顔で頷く。
受付嬢は自分の頬をつねり、痛いのを確認した。
「何度も、失礼しました……! 少々お待ちください。魔導具の不備も考えられるので……」
受付嬢は、慌てて奥に走っていくと、専属の魔導具師を呼びにいく。
魔導具師は受付嬢に、
「毎朝整備しているんだからありえないって」
とぼやきながら部屋に入ってくる。
そして、魔導具を確認する為、自分のレベルを測定する。
試しに、受付嬢のレベルも計り、故障でない事を何度も確認した。
魔導具師が壊れていないと告げると、ユキタカ達に一礼して奥に引っ込んでいく。
「再三失礼しました……! あまりに異例な事が起き過ぎて、私の頭が付いてこなかったです……。──そ、それでは、魔石持ち込みのポイントとセイさんのレベルを加味して、2ランクアップのゴールド級に変更手続きを行います」
受付嬢はまだ、信じられないのか緊張した面持ちで、聖女セイを上から下まで見つめる。
そして、ハッとして手続きに移るのだった。
「──以上で、セイさんは今日からゴールド級冒険者です。おめでとうございます!」
受付嬢は手続きの間にようやく冷静になれたのか、祝福してくれた。
「次はイリスの番で」
ユキタカが、『神器・手提げ鞄』から、魔石を数個取り出して、受付嬢の目の前に置いた。
「失礼しますね」
受付嬢は鑑定を始めた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」
受付嬢は結局、また、驚いて慌てる事になり、奥に助けを求める事になるのだった。
「──以上で、イリス様はミスリル級冒険者になる資格を得ました。数日で書類を作成してお渡ししますので、お手数ですが、それを持って王都のカールセン王国冒険者ギルド本部に提出してください。あちらで昇格試験を受けて合格したら、正式にミスリル級冒険者になれます。詳しく説明しますと──」
疲労困憊の様子で、受付嬢はイリスにミスリル級以上は、本部での試験がある事を丁寧に説明した。
受付嬢の背後にはギルドの支部長や関係者数人が立っている。
イリスのレベルについてはわかっていたが、こんなに早く昇格ポイントを貯めるとは思っていなかったので、困惑していた。
「──以上となります。この支部からミスリル級冒険者が誕生するのは、過去に例がないので頑張ってください!」
受付嬢が応援すると、支部長も「期待しているぞ!」と声をかける。
「そこの君も、ついでにレベルを測定して、昇格しておきなさい。前回、レベル1だったから、かなり上がっているんじゃないか?」
支部長はユキタカに声をかけた。
イリスと一緒に測定した時、レベル「01」だったのを覚えていたのだ。
一緒のパーティーなのだから、少なくとも「10」以上になっていると思ったのだろう。
「いえ、僕は上がっていないので……」
「はははっ、謙遜する必要はない。彼女のレベルがここまで上がっているのだから、君は低級だし、レベル次第では、ポイント無しで一つ二つ、こちらの判断で上げられるぞ」
支部長は期待した様子でユキタカの手を取ると、魔導具の上に強引に置く。
受付嬢が、そのレベルを確認した。
「レベル『01(いち)』です……」
言いづらそうに、受付嬢が、告げた。
「何!? ──えっと……、なんか……、すまん……」
支部長はユキタカに謝罪し、室内は微妙な雰囲気になるのだった。




