第50話 スキルの違い
ユキタカはうちに泊まっている聖女セイとダフネ・サンセッドの為に、家を探す事にした。
男のところに、女性が三人という状況が不自然と考えたのだ。
ラノベならこれをハーレムと言うのだろうが、実際には女性が三人集まると、男の人権は無くなると言っていい。
それくらい女性が意気投合すれば意見は女性中心になり、男が気を遣わなくてはいけなくなるからだ。
実際、思春期真っただ中の女子高生だった聖女セイこと鬼道院聖などは、ユキタカと一つ屋根の下という事もあり、男性の視線が気になるようなので、ユキタカが気を遣う事になった。
ダフネ・サンセッドは、薄着一枚で家の中をウロチョロするので、これも視線のやり場に困った。
ユキタカは、神器『ボクサーパンツ』のお陰で、誘惑、魅了系に耐性があるので欲情はしないが、意識しないわけではない。
イリスが代わりに注意してくれるが、男の身としては、早く住む家を見つけてあげるのが一番だと判断したのだった。
「ユキ、うちのような都合のいい物件は中々出てこないかもしれないです。それなら、大家さんにお願いして、隣に小さな家を建てるのはどうでしょうか?」
イリスが街の不動産を扱う商会から出てくると、ユキタカに提案した。
「隣に? そうだね。じゃあ、大家さんに頼んでみようか」
ユキタカは頷くと、二人で大家さんを訪ねた。
大家は街の大通りに住んでいる商人だったので近い。
「イリス殿、今日はどうされました? ──ほう、敷地内に小さな家を? それも資金は自己負担で? それなら問題ありませんよ。何なら材木店を紹介しましょうか?」
大家の商人は、自分の負担にならないとわかると、笑顔で応じた。
二人は大家の紹介してくれた材木屋で資材を買い入れると、適当に大工道具も買い揃えて家に戻った。
聖女セイとダフネは、出かけたまま戻っていない。
二人は冒険者ギルドに赴いて、聖女セイの登録を行っているのだ。
ついでに、軽くクエストを完了させる事になっていた。
ユキタカとイリスはその間に、家を建てる。
魔法収納鞄に入れてある材木を一つずつ出し、その超人的な体力で加工しては、積み上げていく。
丸太小屋を作る要領だったので、魔法収納鞄を使った建築は、かなり楽な作業だった。
イリスはレベル65のアダマンタイト級冒険者なので力はあるし、ユキタカは身に付けている神器のお陰で力は申し分ない。
器用さもお互いあるので、加工作業も楽である。
二人はプラモデルを作る勢いで、夕方前には一軒の家を建築してしまうのだった。
「「えっ? 二人で建てたの!?」」
冒険者ギルドから帰ってきた聖女セイとダフネは、帰ってくるなり、敷地に家が増えているのだから、驚くしかない。
よく見ると、窓の部分も綺麗に繰り抜かれ、窓枠が嵌めてあり、扉も同じだ。
屋根も板を重ねて、雨漏りしないようにしっかり作り込んであり、即席で作ったとは思えない完成度だ。
「そこまでして、二人っきりになりたかったのか」
ダフネが意味ありげに指摘する。
「そういう事なの?」
聖女セイは驚いた様子だ。
二人の雰囲気から異性としての距離感ではないと、思っていた。
だが、自分達用の家を作るという事は、どちらも進展させたいようだ。
「違うって! 僕が困っているのをイリスが気づいて、気を遣ってくれたんだよ。元はダフネのせいだから」
ユキタカは慌てて答えた。
聖女セイは安堵していいのか、残念がるべきなのか複雑な表情になる。
どちらにせよ、ダフネが原因なのは確かだった。
引っ越しは、ユキタカとイリスの魔法収納の力で一瞬で済んだ。
収納した荷物を、新たな家に出すだけだからだ。
「便利だね。私も魔法収納覚えないかしら?」
聖女セイは、二人の能力を羨ましがった。
「魔法収納能力は貴重だから、聖女様でも覚えるかどうかは怪しいところだね」
ダフネが茶化す。
「明日から軽いレベル上げでもしようか。──あっ、それよりも、夕飯にしようよ。さすがに僕もお腹が空いたから」
ユキタカは、昨日の作り置きした料理を魔法収納から取り出すと、机に並べるのだった。
翌日。
ユキタカの提案で、聖女セイを中心としたレベル上げを行う事になった。
聖女セイは当然ながら、聖女のスキル持ちである。
優秀なスキルだが、その分、レベル上げは他のスキルに比べて難しい。
だが、上がったら、その分強いのも確かである。
そこで確認の為、聖女セイのレベルを聞いてみた。
「レベル12!?」
ユキタカは驚かずにはいられなかった。
ミスリル級冒険者であるダフネは聞けばレベル「41」らしい。
勇者シオンと聖騎士レオの二人がかりで、ダフネといい勝負をした事を考えると、スキルの力がどんなに大きいかがわかるというものだろう。
それに、聖女セイは、王都襲撃の魔族の師団長に、メンバーの中で唯一、軽傷とはいえ、傷を負わせた人物である。
「別れる前のシオンはレベル15、レオは14、ルナは13だったわ」
聖女セイは、一番自分がレベルは上がりにくいみたいだと答えた。
「上位スキルが、重宝されるわけだよ……。それと同時に、僕のようなスキル無しの無能者が、必要とされない現実も改めてわかった気がする……」
ユキタカは苦笑するしかない。
スキル同士でもこれだけの差があるのに、無能力者ともなれば、その違いは歴然だろう。
神器無しであれば、ユキタカはレベルが「101」とはいえ、基礎能力は運動神経が良い程度だけだったから、厳しいこの世界で役立たずなのは明らかだった。
「神器が無かったらと考えると、ゾッとするなぁ……」
「スキルがどんなに良くても性格が悪いと質が悪いだけです。ユキは神器があっても驕る事のない性格は、何物にも代えがたい美徳ですよ。そのお陰で私も救われましたから」
イリスは落ち込むユキタカを笑顔で励ます。
聖女セイとダフネも同意見だったので、無言で頷くのだった。
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