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第49話 女子トークと翻弄されるモブ

 神器の説明を受けた聖女セイと、ミスリル級冒険者ダフネ・サンセッドは、ユキタカがスキルが無い最弱な存在でありながら、神器を装備した最強の存在である事を理解する事になった。


 そして、二人ともある事に気づいた。


「「もしかして、ランス・ファイスって?」」


 聖女セイとダフネは、声を揃えてユキタカを指差す。


 トールデイン王国では最強の槍使いとして有名になった、『神槍のランス』の正体は、ユキタカ以外にいないと気づいたのだ。


「正解。この『神器・マスク』を装着すると、顔や声を変化できます」


 ユキタカは、誓約書を書かせた二人に、あっさり正体を明かした。


「そういう事だったのか……」


 ダフネは納得する。


「……瑠奈が残念がるわ……」


 対して聖女セイは、賢者ルナの名前を口にした。


 賢者ルナは四宝寺瑠奈の事である。


 年上の異性がタイプである彼女は、ユキタカには興味を持たなかったが、ランス・ファイスの姿形、声がタイプで一目惚れしていたのだ。


 聖女セイはそれを聞かされていたので、複雑な気分になった。


「え?」


 ユキタカが賢者ルナの名前が出てきたので、不思議がった。


 勇者一行が関わってくる何かがあるのなら、知っておきたいと思うのは当然だろう。


「……実は──」


 聖女セイは、友人がランス・ファイス(ユキタカ)に一目惚れした事を話した。


「変わった趣味の友人ですね」


 イリスが、ユキタカの変身した姿を思い出して、率直な感想を漏らした。


 イリスはどちらかというと、優しい容姿のユキタカの方が、まだ、好感が持てたからだ。


「そうかな? 頼りなそうな今の姿よりは、頼りがいがあるランス・ファイスの方に惹かれてもおかしくないかな」


 ダフネがイリスの好みに、異を唱えた。


「瑠奈は、渋いタイプが好きなので……。私は一般的なタイプがいいです」


 聖女セイは自分の事を言われている気分になって、言い訳する。


「一般的ってどんな?」


 ダフネが、聖女セイの好みを聞き始めた。


「え? それは──」


(なんか女子トークになってきたんだけど?)


 ユキタカは、そこでようやく、自分以外が女性である事に気づいた。


 すると、足元で黒毛の豆柴姿で柴竜種のマロが、体を擦り付けてきた。


 自分もいるというアピールだろう。


 ちなみに、マロもメスである。


「マロ、お前も女の子じゃん」


 ユキタカが思わず声に出して、ツッコミを入れた。


 それでようやく、イリス達もユキタカの立場に気づく。


「ゴトーさん、イリスさんに手を出していないですよね……?」


 聖女セイは警戒するように、声を何となく落とした。


「当たり前じゃない! イリスは大切な仲間だよ!?」


 ユキタカは慌てて答える。


 とはいえ、イリスと仲間になってこの家で生活するようになって、いくつか気づいた事があった。


 それは、イリスが改めて美人である事。


 さらには、着痩せするタイプで、実は結構胸がある事なのだ。


 料理もできるし、気遣いもできた。


 異性としての意識も、ないと言ったら嘘になる。


 だが、はっきりと物事を指摘してくれる人なので、ユキタカも余計な気遣いをせずにすんでおり、一緒にいて楽な相手だった。


「ユキにはハーレムだけど、あたし達にも選ぶ権利はあるからね?」


 ダフネが、はっきりと釘を刺す。


「僕にも選ぶ権利はあるよ!」


 ユキタカがダフネに対抗して思わず声を上げた。


「へー。イリス殿や聖女セイ、美人冒険者として王都では人気を博していたあたしでは満足できない程、好みが変わっているのね?」


 ダフネがニヤニヤしながら、ユキタカの言葉尻を取る。


「僕の好みは普通だから! ──それより二人とも、今日の宿屋を探しておかないと野宿だよ」


 ユキタカは陽が傾き始める時間だったので、聖女セイとダフネに注意喚起した。


「ユキ、二人にはここに泊まってもらいましょう。空いている部屋もありますし」


 イリスは、寛大な心で二人を歓迎する姿勢を取った。


「やったー! じゃあ、夕飯もコカトリス料理を期待するよ」


 ダフネが万歳して喜んだ。


「イリスさんお気遣いありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」


 聖女セイも喜ぶ。


「うっ、僕が酷い人みたいな事になっていない?」


 自分の評価が、下がりっぱなしな気がした。


 ユキタカにしたら、男としての気遣いをしたつもりだったのだが、二十五年間童貞だった身には、女心は理解できないのだった。


「ゴトーさんは、最初からそんな感じでしたよ」


 聖女セイが、澄ました顔でユキタカを評する。


「うっ……」


「ユキは優しい人です。ただ、男性なので女性に対する気遣いを要求するのは難しいですよ」


「何気にフォローになってないよ……?」


 イリスはユキタカを庇うのだったが、微妙に女性心はわかっていない事を、暗に告げる形となった。


「私はランス殿の姿で男らしい感じが、丁度良かったんだけどなぁ。まあ、料理が出来る点は評価できるから、少しは安心しなよ」


 ダフネはランス変身時と料理以外、ユキタカの評価は低そうだ。


「みんな酷いんだけど……?」


 ユキタカは、足元のマロを抱き上げると、愚痴を漏らすのだった。



 こうして、ユキタカとイリスの家に、聖女セイとダフネが転がり込む事になった。


 美女三人とかわいいメス一匹と、一つ屋根の下で生活する事になったユキタカだったが、意外に冷静だった。


 それもそのはず、ユキタカは気づいていないが、彼の下着、『神器・ボクサーパンツ』は誘惑や魅了を打ち消す能力が備わっていたからである。


 お陰で二十五歳の精力溢れる童貞が、間違いを犯さずに済んでいるのだった。

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