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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第43話 辺境での日常

 辺境の深い森の一角。


「ユキ! 仕留め損なったのが、そっちへ行ったわ!」


 イリスが、プラチナ級クエスト達成の為、大きな雄鶏姿に、尻尾が蛇というコカトリスの集団をその拳で次々と討伐していた。


 拳は、コカトリスの毒ブレス攻撃を受けて、一部、変色しているが気にした様子はない。


「わかった!」


 茂み奥からユキタカの声がする。


 ユキタカは『神器・傘』を手に、自分の方に向かってくるコカトリスに『傘』の先端を突きつけた。


 爆発的な衝撃波が生まれ、木々で生い茂った森の一部が抉られる。


 コカトリス数羽が、その衝撃波に巻き込まれて、絶命した。


 だが、最後の一羽が、羽を広げて、衝撃波から巻き起こる風に乗って上空に飛翔した。


 どうやら、集団のボスと思われる片目に傷が入っている強そうな大きい一羽である。


 ユキタカが、上空を見上げると、背中のリュックから、豆柴の姿である柴竜種のマロが飛び出した。


 マロは、コカトリス同様上空に舞うと、コカトリスの頭上まで一瞬で移動し、その小さな前脚でコカトリスの頭をポンと叩く。


 すると、肉球の形の衝撃波が生まれ、コカトリスは地面に叩きつけられて、絶命するのだった。


「マロ! 今の何!?」


 フワフワと飛んで、ユキタカの腕に戻ってきたマロに先程の、肉球攻撃について問い質す。


 マロは不思議そうな顔で首を傾け、


「?」


 疑問符を頭に浮かべた。


 どうやら当たり前すぎて、驚かれる意味が分からないという反応だ。


「てっきり、火炎の息でも吐いて、焼き尽くすのかと思ったんだけど、もしかして、地上にいる僕達の安全を考えて、肉球で叩き落とす事にしたのかな?」


 ユキタカはマロの判断を想像してみせた。


 すると、正解とばかりに、


「ワン!」


 と吠える。


「新種とはいえ、やはり、竜種の系統なんですね……。小さいですが、魔物の中でも最強クラスなのかもしれません」


 イリスが走って戻ってくると、感心した様子で、マロの頭を撫でた。


 マロは嬉しそうに尻尾を振っている。


「この可愛さで、この強さはギャップが過ぎるなぁ」


 ユキタカはマロを両手で抱き上げて、苦笑するのだった。



 クエストを完了したユキタカとイリスは、コカトリスの死骸を回収すると、街に戻る事にした。


 今回のクエストは近くの開拓村の水源を毒で汚すコカトリスの討伐だったが、いざ巣穴を見つけてみると、繁殖期だったのかこれでもか、というくらいのコカトリスが集まっていた。


 それでもイリスは怯む事無く突っ込んでいき、ほとんどを一人で討伐したのだから、普通は驚愕するところだろう。


 イリスは殴り系とはいえ、後衛で仲間を癒す治癒士が本職だからだ。


 それに、逃げた一部は、最後の一羽も小さくかわいい見た目の従魔が倒したとあっては、目撃者がいれば自分の目を疑ったに違いない。


「コカトリスの羽は、装備品や装飾品にも使われます。鶏冠や嘴、足、爪、健、尻尾の蛇部分、毒袋、内臓なども武器や薬などになるので、ほとんど捨てるところがない魔物です」


 イリスは、この世界に疎いユキタカに帰り道、魔法収納から一羽を取り出して、説明した。


「へー、そんな魔物を沢山討伐できたのは、大きいね」


 ユキタカはのほほんとした様子で応じる。


 このリアクションは仕方がないだろう。


 転移ダンジョンでは、コカトリスよりも明らかに強いだろう魔物を、無数に討伐しまくっていたのだから。


 ユキタカの魔法収納にはその魔物の死骸が沢山収められており、街の買い取り業者に売られずに保管されている。


 不用意に全てを買い取り業者に売ってしまうと、市場が混乱する可能性が高いからだ。


「はい、ですから、クエスト完了ポイントもかなり高いと思います。──でも、いいのですか? 私の手柄にして」


 イリスはプラチナ級冒険者なので、次の階級であるミスリル級までポイント稼ぎは大変だったから、全て譲る事にしたのだ。


「うん、問題ないよ。それに最底辺のウッド級の僕が倒したと言っても、誰も信じないしね。──それよりも、コカトリスは食べられないの?」


 ユキタカはコカトリスを食用の肉として見ていた。


「え? ……でも、《《あの》》コカトリスですよ?」


 イリスは驚いた様子で、聞き返す。


「尻尾以外は鶏でしょ? 調理したら美味しそうじゃない?」


 ユキタカはラノベを参考にしていたから、抵抗が無い。


「……うーん、どうでしょうか? この世界は、稀人の知識や技術によって文化が発達してきた歴史がありますが、魔物を積極的に食べる事を推奨してきた文化はありません。──それにコカトリスは、毒袋を持つような魔物です。以前のような灰色六足熊のようには……。大丈夫でしょうか?」


 イリスはユキタカを信用しているので、食べられるのかもしれないという気持ちに傾く。


「そうなんだ……。あ、でも、僕のいた世界では、魔物は存在しないよ? まあ、一部の外国の人が海の悪魔と嫌がるタコを食べる食文化が日本にはあったから、あれと同じような感じになるのかな? ──そうだ、確認してみよう」


 ユキタカは思いついたように、『神器・眼鏡』を魔法収納から取り出し、鑑定する事にした。


 鑑定結果:コカトリスの肉……毒や呪いがある為、食材には向かない。非常に不味い。


 と表示がされた。


「なんだ、駄目かぁ……。うん?」


 ユキタカは目の前に表示された内容に落胆した。


 しかし、その下に空白があり、それが気になったので、ユキタカは思わずそこに触れてみた。


 すると、新たな文章が表示されるではないか。


 最上位鑑定結果:浄化魔法で一度、毒や呪いを取り除けば最高の食材になる。肉質がとても柔らかく、程よい嚙み応えもあって、非常に美味。


「おお! 食べられるじゃん! でも浄化魔法……? ──イリスって浄化魔法を使える?」


 ユキタカは治癒士であるイリスなら、それっぽい魔法も使えるのではないかと聞いてみた。


「はい、使えますけど……。実は、レベル55を超えた時点で、覚える事ができたんです。でも、浄化魔法って聖女が得意とする魔法なので、あまり言いたくないというか……。なので、秘密にしてくださいね?」


 イリスは聖女が使える魔法を人前で使用すれば、あらぬ誤解を与えると思って秘密にしていたようだ。


「そうなんだ? 実はお願いしたい事があるんだけど──」


 ユキタカはコカトリスの毒と呪いを浄化してくれるようにお願いした。


 意表を突いたお願いに、イリスは最初ビックリするのだったが、


「ふふふっ、わかりました! 私もコカトリスのお肉、興味があります」


 と思わず笑ってしまうと、承諾するのだった。

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