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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第41話 治癒士の移籍と昇格

 新たな仲間になった豆柴柴竜種、幻獣マロの成長はとても早かった。


 誕生初日こそ、よちよち歩きだったが、翌日にはこけずに走れるようになったし、三日目にはその背中にある翼を広げて、空も飛べるようになった。


 そして、ユキタカの背負っているリュック中を定位置とした。


「マロはユキのリュックが好きなんですね」


 イリスはマロがリュックから顔を出して周囲の様子を窺う頭を撫でた。


「ワン!」


 マロは、当然とばかりに吠えた。


「卵から誕生するまでリュックで10年分を過ごしていたわけだから、落ち着くのかもしれないね」


 ユキタカはマロが視界に入らないので少し、残念なのか苦笑気味に答えた。


 マロはそれを察したのか、リュックから出て、頭の上に乗ったり、肩の上でユキタカに頬ずりをしたりと甘える。


「マロは、本当に利口だな」


 ユキタカは甘え上手のマロにデレデレだった。


 イリスはその光景を微笑ましく見つめている。


 遠目に見ると、若いカップルとペットのよくある光景だった。


 だが実際は、魔王討伐を目指すスキル無し無能力の最強神器使いと、レベルだけなら、アダマンタイト級冒険者になってもおかしくない殴り系治癒士冒険者、そして、可愛い姿からは想像できない最強の部類に入る柴竜種の従魔だ。


 事実を知った者は腰を抜かすかもしれない組み合わせだった。


 この一組は、冒険者ギルドにイリスの昇級の為、鑑定を行ってもらう事になっていた。


 ゴールド級冒険者になって日が浅いイリスだったが、この一年あまりの間、厳密にはユキタカと出会ってからの半年で大きな成長を見せていたからだ。


 すでにカールセン王国冒険者ギルド・キョウガイ支部では、イリスが短期間で最高難易度のクエストは立て続けに完了させていた事が話題になっていた。


 移籍してくるまで所属していた隣国トールデイン王国の冒険者ギルドでは、未踏破ダンジョンとして発見された『転移ダンジョン』を、攻略に最低でも数年はかかると思われていたが、神槍使いのランスという無名の人物と二人だけで、クリアしたという実績を残していた事も発覚した。


 ダンジョンの攻略だけでも、昇級理由になる事から、隣国での実績とはいえ、キョウガイ支部としては、イリスを放っておく事はできない。


「プラチナ級の昇格は問題ないかもしれません」


 イリスはユキタカとマロと一緒に、冒険者ギルドの待合室で自分が呼ばれるのを待っていた。


「えっと……、イリス……、イリストラーナ・ファルオーネ・シュタインランサーさん(言えた!)、昇格の為の鑑定準備が終わりましたので、奥の部屋までお願いします!」


 受付嬢がイリスの長い名前を、無事読み上げる。


「はい」


 イリスは少し緊張した様子で、立ち上がると奥の部屋に向かう。


 ユキタカとマロも立会いの為、付いて行くのだった。



「れ、レベル『65』!?」


 鑑定を担当している職員は、驚きのあまり、レベルが表示されている水晶とイリスを何度も見比べていた。


 鑑定は、トールデイン王国の王宮で行われたものに比べると、とても簡易的なものだった。


 だが、それでもレベルがわかるだけでも、充分、凄い事なのである。


 職員は、イリスから申請のあった資料と見比べた。


「……殴り系治癒士ですよね?」


「はい」


 イリスはすぐに返事を返す。


「……少々お待ちください。──支部長! 支部長!! 鑑定室に来てください! 大至急です!!!」


 職員はイリスの前では落ち着こうとしていたが、扉から外に出ると、大きな声で上司を呼ぶ。


「……なんだか、大騒ぎになってきたね」


 ユキタカが苦笑して、イリスに声をかける。


「あの感じだと昇格できそうですね」


 イリスも自分のレベルには驚く事はあっても、慣れる事がなかったから、職員の気持ちはわかる。


 自分が、職員だったら、不正も疑うところだろうが、ダンジョン踏破の実績があるから、信じてもらえるはずだ。


 イリスは少し緊張しながら、職員が戻ってくるのを待った。


 部屋の外で、


「『65』!?」


 という大きな声が扉越しに聞こえた。


 そして、何やら話している音が微かに聞こえてから扉が開く。


 すると支部長と、職員が入ってきた。


「イリス……、イリストラーナ……──」


 ギルド長がイリスの名前を覚え切れず、詰まる。


「イリスで結構ですよ」


「失礼……。──イリス殿。おめでとうございます。あなたの実績を踏まえたうえで、実力的にも昇格について問題ないと判断し、ゴールド級からプラチナ級への昇級を決定しました。正直な話、あなたのレベルを聞いて驚きました。近年、その……レベル65などという数値を計測した事がないので、疑うところですが、ダンジョン攻略を二人で完了したと聞けば、疑う余地がありません。そんな方が、こちら側に移籍してくれた事を歓迎しますよ」


 支部長はイリスとがっちり握手を交わす。


 冒険者ギルドは一応、各国を跨ぐ統一された組織だが、普通、○○国冒険者ギルド・〇▽支部所属、という形になる。


 だから、才能ある冒険者が所属する国の冒険者ギルドというだけで、他の国の冒険者ギルドより評価が高くなるのだ。


 イリスクラスの冒険者がトールデイン王国からカールセン王国の冒険者ギルドへの移籍するという事はそれだけで大ごとなのである。


 イリスは笑顔で握手を交わす。


「それにしても残念です。冒険者ギルドの規則で、飛び級昇格する事はできないですから。私に権限があるなら、イリス殿を最低でもオリハルコン級冒険者まで昇格させるところですよ」


 支部長は嬉しさのあまり、かなり大袈裟に述べた。


 オリハルコン級の上には、伝説クラスの冒険者しか名乗れないアダマンタイト級しかない。


 つまり、オリハルコン級はこの大陸の現役冒険者最強クラスを意味するのだ。


「それは、ここにいる私の友人が相応しいと思います」


 イリスは笑顔ながら冷静にユキタカに振り返る。


「え? イリス殿以上の人材という事ですか? ──ふむ……。もし、それが本当なら我がギルドに移籍してもらいたいのですが……。もしかして、あなたが一緒にダンジョンをクリアした神槍の? ──え、違う? 冒険者でもない? ならば登録だけでもどうですか? 今なら、自分のレベル確認もできますよ?」


 ギルド長はイリスが評価する人物だから間違いないと思ったのだろう勧誘を始めた。


「その鑑定はレベルがわかるだけなのですか?」


「ええ。スキルに関しては、自己申告になります。たまに、自分を大きく見せようととんでもないスキル名を告げる者もいますが、それに相応しいクエストを用意するので大抵は完了できずに逃げ出すか、最悪、死ぬので嘘はお勧めしていません」


 ギルド長は、笑顔で怖い事を言う。


「じゃあ、止めておきます。才能が無いので」


 ユキタカは、断る事にした。


 スキルもないし、冒険者になるのは難しい事は想像できたからだ。


 支部長はユキタカが謙遜して断ったのだと考えた。


「はははっ! イリス殿の傍にいれば、嫌でも強くなるでしょうから、頑張るといいですよ」


 支部長は笑って励ますと、ユキタカの肩を叩いて退室するのだった。

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