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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第40話 かわいい従魔

 ユキタカとイリスは、カールセン王国辺境の街キョウガイの西の端にある一戸建てを借りて住んでいる。


 その庭で、ユキタカとイリスは新たな仲間として誕生した従魔と遊んでいた。


 その従魔とは一見すると、小型犬、だが、こちらの世界では見慣れない犬だ。


 卵から誕生した小型犬というのも変な話だが、実際、ユキタカの目の前には前の世界の実家で飼っていた犬種とそっくりの豆柴が、よちよち歩きをしていた。


「ユキの世界の従魔は、本当に可愛いですね」


 イリスは和やかな笑みを浮かべて、自分にも懐いてくれている柴犬を撫でた。


「いやー、実家で飼ってた豆柴とそっくりではあるのだけど、厳密には違うんだよなぁ」


 ユキタカは距離が近づいたイリスに砕けた口調で、否定する。


「そうなんですか?」


 イリスは豆柴自体を知らないので、違いが判らないから首を傾げた。


「うん、そもそも、豆柴の背中に翼はないし、額に小さな角も無いから!」


 ユキタカは豆柴に似てはいるが、全く違う生物に、思わずツッコミを入れる。


「でも可愛いですよ?」


 イリスは麻呂のような眉毛がある黒い毛並みの豆柴の頭を優しく撫でた。


「それは認めるよ? 認めるけど、絶対、豆柴とは別の種類なんだよね……。多分、僕の想像した従魔に似せて生まれたと考えられるから、新種にはなると思うのだけど……。──あっ、『眼鏡』で鑑定できないかな?」


 ユキタカは、思い出して魔法収納から『神器・眼鏡』を取り出す。


 ただ、これまで『神器・眼鏡』は物の鑑定にしか使用していなかったから、従魔を鑑定できるのかはわからない。


 ユキタカは『神器・眼鏡』をかけると、この可愛らしい豆柴らしき犬を鑑定してみた。


 特殊な従魔だからなのか「鑑定不可」の表示が出た。


「……あれ? 駄目なのか……。──いや、待てよ……? 卵の殻はどうかな?」


 ユキタカは即座に鑑定するものを変更する。


 殻の情報で、この豆柴がどんな生物なのか、わかるかもしれない。


「どれどれ……、【幻獣シリーズの新種『柴竜種さいりゅうしゅ』に変化した卵の殻。竜の一種だが、竜鱗がない為、竜種の弱点である逆鱗が存在しない個体となっている】……。幻獣シリーズって……。それも竜種? ──やっぱり、新種なのか……。なんかとんでもない情報が混ざっているけど大丈夫かな?」


 ユキタカは逆鱗がない個体、という項目に注目した。


 竜種というのは、この世界で最強の生物の一つである。


 その竜種には逆鱗が等しく存在している。


 そこに触れると怒りを買うが、同時に最大の弱点とも言われており、ドラゴン退治では必ず狙う部位だ。


 だが、ユキタカが、見た事がないドラゴンを想像しつつ、実家の豆柴も想像した為、良いところだけを抽出(特に見た目)した従魔が、新種として誕生してしまったなってようである。


『柴竜種』という、多分、この世に存在しないであろう種族名まで出来てしまったのだから、呆れるしかない。


「こんなに小さくてかわいいのに、竜種なんですね……」


 イリスは豆柴もどきを撫でながら、感心する。


 豆柴もどきは、撫でられる事が好きなのか、目を瞑って満足げだ。


「……実家の豆柴『マロ』と同じ反応だなぁ。僕が具体的な想像ができた数少ない動物だったから、そっちに引っ張られて、この形になったのかもしれない」


 ユキタカは苦笑すると豆柴を見つめる。


 すると、豆柴は『マロ』という言葉にピクリと反応して、こちらに可愛い視線を送ってきた。


「……こいつの詳しい種類を理解してから、名前を付けようと思っていたんだけど……、──もしかして、『マロ』が気に入ったのか?」


「ワン!」


 まだ、よちよち歩きながら、しっかりした鳴き声で反応する。


「ふふふっ。気に入ったみたいですよ。──マロ、良かったね」


 イリスが撫でながら、黒毛に白い麻呂眉毛のあるマロに話しかけた。


「イリスもそれでいいの? ──うーん……、じゃあ、マロに決定だ。今日からマロはうちの家族だよ」


 ユキタカが笑顔で命名すると、マロの頭を撫でる。


 すると、撫でた頭の付近から小さな光が一瞬漏れた。


 どうやら、従魔として契約が結ばれたようである。


「ワン!」


 小さいマロは理解しているのかのように吠えた。


「頭はかなり良さそうだね。あとは旅に連れていける程、強くなるかどうかだけど……」


 ユキタカは、柴竜種という竜種の一種とはいえ、豆柴にそっくりな可愛い姿だから、旅に連れて行っていいものか迷うところだった。


 すると、それを理解したかのように、目の前の雑草に向かって、火炎の息を軽く吐いた。


 それでも、火炎放射器かと思うような火力である。


「うわっ!」


「きゃっ!」


 ユキタカとイリスは驚いて声を上げた。


 マロは驚かせた事が申し訳なかったのか、二人の足元で座り込むと、反省の表情を見せた。


 これには二人とも、可愛すぎて撫でてしまう。


「マロ、今のは人前でやっちゃ駄目だぞ? 使ってもらう時は僕からお願いするから」


 ユキタカは頭良さそうなマロに怒るでもなく、諭すように話した。


 マロは理解したとばかりに、また、


「ワン!」


 と返事して尻尾をフリフリする。


「生まれて間もないのに利口だし、火炎の息も吐けるのなら、大丈夫そうですね」


 イリスはマロを抱き上げた。


 マロは尻尾を振って、イリスの頬をぺろりと舐める。


「マロはイリスが好きみたいだね。僕以外にも懐いているのは、卵が孵った時に一緒にいたからかな?」


 ユキタカは、契約主として、これまでの状況からそのように解釈した。


「ふふふっ、その場に居合わせる事ができて良かったです。──ユキ、ありがとうございます」


 イリスは、余程マロが気に入ったのか、ユキタカに笑顔で感謝するのだった。

ここまで読んだ頂き、ありがとうございます。

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