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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第33話 勇者一行との闘い

 無名のランス・ファイスことユキタカが、勇者一行全員を相手にすると発言した事で、当人達はおろか、練兵場で見学していた近衛騎士達や侍従、貴族達も驚かずにはいられなかった。


 練兵場内はどよめきに包まれ、ランス・ファイスに注目する。


 見た目は、黒髪に黒い目の渋い面に無精ひげ、渋い声で貫禄があるが、年齢は二十五歳だという。


 老け顔だけに、それだけでも少し驚くところだ。


 手にする槍は不思議な形状で、通常の槍になんの意味があるのか数本の骨組みが付いていた。


 姿は革鎧に同じ革の籠手と脛当ての装備で、その辺りは一般的な冒険者の身なりだ。


 何か秘策がない限り、一度に勇者一行四人を相手するというのは、無謀としか思えない。


 前衛となる勇者シオンと聖騎士レオは、あのミスリル冒険者『魔斬りの剣女』ダフネ・サンセッドと互角に渡り合う実力を付けている。


 この二人がランス・ファイスを相手にしている段階で、後衛である賢者ルナと聖女セイの魔法攻撃にさらされる事になるのだから、危険しかない。



「私はいつでもいいですよ」


 ランス・ファイスは、淡々と告げる。


 内心では、かなり緊張していたが、ダフネ・サンセッドとの戦いぶりを見る限り、ランス・ファイスは十分勝てる見込みがあったからその点は余裕があった。


 ダフネ・サンセッドの実力は、王都に来るまでの間、イリスと二人で少し相手をしていたからである。


 ランス・ファイスはダフネ・サンセッドを相手に傷一つ負う事無く、何度も倒していた。


 イリスはかすり傷程度だったし、ランス・ファイスとイリスは、ダンジョン攻略の間にかなり強くなった事を確認できていたのだ。


「僕達四人を相手にする判断をするとはな……。後悔するがいい。僕達に勝てる者は、この王宮にいないのだからな。こちらの勝ちは間違いない。あとはどういう勝ち方をするか、だけだ」


 勇者シオンが自信満々に、戦う前から勝利宣言をする。


「へっ。俺達二人だけでも、ダフネは苦戦するのに、実績もない奴が俺達四人を相手にするとか馬鹿だな」


 聖騎士レオもランス・ファイスを見下す。


「私好みの渋いおじ様だけど、頭の方は良くないみたいで残念。でも、少しでも粘れたら、私の護衛にしてあげてもいいですよ」


 賢者ルナがランス・ファイスを凝視していた理由がわかったが、対象からは外してくれそうだ。


「……」


 聖女セイは、一言も文句を発しない。


 それどころか、ランス・ファイスにまったく興味が無いのか、自らの魔法収納から何かを取り出し、それを握りしめると、また、魔法収納に戻した。


 ランス・ファイスは、他の三人の影になって何を握っていたのか確認できなかった。


「それでは、両者とも準備は良いかな? 我が友である勇者一行の約半年の成長を、みんなには見てもらおうではないか! ──それでは始め!」


 ステファン第一王子が開始を宣言した。


 開始と同時に、聖女セイと賢者ルナが全員に各能力、攻撃力、防御力上昇魔法を発動する。


 勇者シオンと聖騎士レオはそれをわかっているから、即座にランス・ファイスに斬りかかった。


 ランス・ファイスは、素早い突きで向かってくる勇者達の剣を、どちらとも弾く。


 これには、バフのかかった勇者シオン、聖騎士レオも、腕を痺れさせて驚く。


「なんという威力の突きだ! 何かネタがあるな!?」


「前もって最初から強力なバフをかけていたのか!」


 二人は、大きな勘違いを口にする。


 ランス・ファイスは、最初から何もバフをかけていないし、威力も抑えていた。


 そこへ賢者ルナが、喰らえば即死するだろう火魔法による攻撃を、容赦なく繰り出した。


 好みのタイプだったはずのランス・ファイスに対し、頭が弱いタイプのようだと判断すると手加減する気がなくなっている。


 聖女セイも光魔法による無数の『光の矢』を放つ。


 こちらもどうやら、相手が弱いと思っていても、容赦する気はなかったようである。


 二人の魔法は、ランス・ファイスに的確に飛んでいく。


 だが、ランス・ファイスが槍に付いている骨組みを開く動作をした。


 すると、二人の魔法が見えない壁にぶつかり、霧散する。


「「嘘!?」」


 聖女セイと賢者ルナが驚いていると、態勢を整え直した勇者シオンと聖騎士レオが、再度斬りかかる。


 それもただの斬撃ではない。


 二人の能力による繰り出された技だから、剣は光に包まれ、切れ味が増し、見えない斬撃も発せられる。


 ランス・ファイスは、その二人の無数の技による斬撃を手にする槍で、こともなげに弾いていく。


(『傘』の扱いには現世で使い慣れていたから、こういう動きはお手のものさ)


 傘といえば、誰もが子供の頃、剣としてチャンバラ遊びをしたり、バトンのようにクルクル回したり、ゴルフのクラブのように振ってみたりといろんな遊び方をしたことだろう。


 ランス・ファイスもその一人だったから、変化した『神器・傘』をそのチートな力と共に、易々と振り回して見せるのだった。



 あまりに鮮やかな立ち回りに、周囲の観衆である王国貴族や近衛騎士団などは呆気に取られていた。


 勇者一行が幼い子供のように、軽くあしらわれているのだから当然だろう。


 その間も、賢者ルナはあらゆる魔法を使用してランス・ファイスを攻撃していたし、聖女セイは仲間にバフをかけ、自らも、手にした杖から弓に持ち替え、矢を放って援護していた。


 だが、ランス・ファイスの槍はそれら全ての攻撃を弾き飛ばし、霧散させ、突き落としていた。


「あんな神がかりな槍使いを見た事がない……」


「……神槍だ」


「……神槍のランス……」


 最初、息を呑んで見守っていた観衆だったが、誰からともなく、評価する声が漏れると、あっという間にざわつき始めた。


 ランス・ファイスは、少し楽しくなってきていたが、自分が異名で呼ばれ始めたので、正気に戻る。


(そろそろ終わらせた方がよさそうだ。あだ名で呼ばれるのはさすがに恥ずかしい……)


 ランス・ファイスは、少し力を込めた槍で、勇者シオンと聖騎士レオの高価で丈夫な鎧を突いて砕く。


 これには休む事無く斬撃を浴びせていた勇者シオンと聖騎士レオも、呼吸ができない程の衝撃を受けて吹き飛んだ。


 観衆の近衛騎士達に受け止められたが、二人は白目を剥いて気を失っていた。


 それを見た聖女セイと賢者ルナは攻撃の手を止める。


 前衛がいなくなった後衛が、戦いを挑む程、無謀な事はないからだ。


「「……私達の負けよ」」


 気を失っている二人に代わって聖女セイと賢者ルナが負けを認め、勝負はランス・ファイスの圧勝で幕を閉じるのだった。

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