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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第28話 新生活の始まり

 ユキタカとイリスは、食堂でいくつかの目標を立てる事で同意した。


 一つは魔王討伐。


 これは、あくまでもこの世界で活動するうえで、必要ならばという程度である。


 諸外国も国家の威信をかけて勇者召喚を行うだろうから、魔王討伐は一応、召喚された勇者に任せる方向だ。


 二つ目は、どこかに拠点を作り、冒険やクエストを行う事。


 これは、ユキタカがこの異世界を楽しむ為のものだが、イリスも納得してくれたので、良い場所を見つけたら、そこを中心に活動する予定だ。


 三つ目は、トールデイン王国へのざまぁである。


 これは近々の課題と言ってもいいが、一番、難しい事でもあった。


 相手は国だから、おいそれと手を出せるものではないからだ。


 ユキタカ本人は、殺されかけたのだから、当然、報復はしたいと思っている。


 とはいえ関わりたくないのも、事実だ。


 今後、そういう機会があれば、という程度に考えるのだった。



 以上が、ユキタカとイリスのパーティー目標である。


 また、一つ決まり事もできた。


 それは、ユキタカが稀人である事を秘密にする事である。


 稀人はいろんな意味で特別扱いされる立場でもあり、スキル無しのユキタカでも知られれば、どんなトラブルに遭うかわからない。


 イリスはその事を心配して提案したのだ。


 ユキタカはこちらの人間であるイリスを信じていたので、その提案に承諾した。


 実際、稀人という理由で、トールデイン王国は自分を放置せず、消そうとしたのだから、稀人と知れれば利用する為、接近してくる者はいくらでもいそうだ。


 まあ、身分証や姿を偽造できるから、気づかれる心配はほとんどないだろうが、気をつけるに越した事はないだろう。


「ふぅ……。目標も決まったし、しばらくはこのキョウガイの街でお金を貯めながら情報を集めたいところですね」


 ユキタカは安堵した様子だ。


『勇者召喚』に巻き込まれ、この異世界で生活を始めた半年近くは、落ち着く暇がほとんどなかったというのが、本音だったからである。


 イリスはユキタカに頷くと、この日から、新たな生活が始まるのだった。



 二人は、まず、仮住まいを探す事にした。


 宿屋でもいいのだが、しばらくはキョウガイの街を拠点に動く事を考えると、余計な出費は避けたかった。


 キョウガイの街の西区に、ポツンとある一軒家があったので、そこを借りる事にした。


 西側の土地という事で人気がない物件だったが、部屋数が多いので二人としては満足だった。



 次は、仕事である。


 イリスはゴールド級冒険者なので、クエストを受注して達成すればそれなりの収入を得られそうだった。


 ユキタカは冒険者ギルドには登録していない。


 トールデイン王国ではないので、登録しても別に問題はないだろう。


 しかし、スキルが無い。


 それに反してレベルは101なので、目立ってしょうがないだろうと考えると、登録をする気にはなれないのだった。


 そこで、ユキタカは不本意ではあるが、イリスのクエストを手伝う事にした。


 というのも、本当はイリスの力に頼らずに稼ぎたいと思っていたからだ。


 一応、地底まで足を運び、強力な魔物を倒して、その素材を業者に売るという事はできる。


 だが、あまりやり過ぎると、目を付けられる事に気づいたので悩みどころだった。


 見た目が華奢で強そうに見えないユキタカが、高価な素材を業者に連日売っていれば、どこか穴場で拾ってきていると想像するのが妥当だろう。


 だから、『神器・身分証』と『神器・マスク』を使ってわざわざ姿をランス・ファイスに変えて、売りに行っていた。


 だが、これだと普通の生活とは言えない。


 それに、イリスは有名冒険者である。


 その同居人が何もしていないようだと、思われるのは癪だ。


 どうにかユキ・ゴトーとして、職に就きたいところだった。


 そんなある日。


 ユキタカはいつも通り、ランス・ファイスの姿で高価な素材を買い取り屋に売っていた。


「はぁ……。結局、本来の僕は何も職が見つからず、仮の姿に頼るしかないのかぁ。やっぱりこの世界、スキル重視だもんなぁ……」


 渋い顔と渋い声でランス・ファイス(ユキタカ)は、帰り道で愚痴を漏らすのだった。


 この後、イリスと合流して夕食の予定だったから、冒険者ギルドに向かうランス・ファイス(ユキタカ)。


「あ、イリスがもういる。今日はいつもより早くクエストを完了させたのか。──って、うん?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は、イリスと話している冒険者に気づいた。


 その冒険者はフードを被っていたから、遠目にでは誰かわからない。


 もしかすると、最近、イリスを勧誘しているという冒険者なのかもしれない。


 ランス・ファイス(ユキタカ)の姿のまま、助けに入ろうかと近づいた瞬間である。


 相手の冒険者がこちらに気づいた。


「ちょうどいいところに、きましたね。ランス・ファイスさん」


 冒険者はランス・ファイス(ユキタカ)に気づくとフードを取って顔を見せた。


 ランス・ファイス(ユキタカ)は、すぐに相手が誰だかわかった。


 それは、トールデイン王国側のミスリル級冒険者である、『魔斬りの剣女』ことダフネ・サンセッドだったからだ。


 ダフネ・サンセッドとは、国境の街ターバスに冒険者ギルドの不正を暴く為、王都から派遣されていた冒険者である。


 解決後、ランス・ファイス(ユキタカ)とイリスは王都に来ないかと誘われた経緯があった。


「あなたが何故ここに?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は渋い声で問うた。


「早速、本題に入りますか? こちらとしては、再会を噛み締めたいところだったのですが」


 ダフネ・サンセッドは、冗談とわかるような笑みを浮かべている。


 対するイリスはランス・ファイス(ユキタカ)に対して困った様子の視線を向けていた。


「……? それで何の用ですか?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)がイリスの反応に疑問を持ちながら、再度、聞く。


「実は、お二人を勇者一行の護衛に推薦したので、召喚状を持ってきました」


「……なんだって?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は聞き間違いかと思い、聞き返す。


 イリスは先に聞いたのか驚いた様子はなかった。


「そういう事なので、話を聞いて頂けますか?」


 ダフネ・サンセッドは、相変わらず格好と不釣り合いに思える丁寧な言葉遣いお願いすると、二人を引っ張って、近くの食堂に向かうのだった。

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