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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第25話 踏破者の証

 ユキタカとイリスは、ダンジョン内を移動しながらこれまでの経緯を話して確認し合っていた。


「ゴトーさんは、今までどこにいたのですか? 私、カールセン王国の国境地帯の街や村など探したのですが、消息がわからなくて……。まさかと思いますが、二か月前からずっとダンジョンに潜っていたとかではないですよね?」


「そのまさかです。気づいたら二か月経っていました。はははっ……」


 ユキタカは苦笑するしかない。


「ゴトーさんが、充分強いのはわかっていましたが、この『転移ダンジョン』は特殊ですから、攻略は難しいと思いますよ。でも、二か月で諦めてくれてよかったです。もし、深いところに潜っていたら、私も見つける事ができなかったかもしれません」


 イリスはユキタカが断念して上の階層に上がってきたと思っているようだ。


「あ、いえ。ほぼ、攻略は終えていますよ?」


「……え? ──……えーーーー!?」


 イリスはユキタカの返答に、一瞬、意味が理解できなかったが、頭の中を整理した瞬間、驚きで大きな声が出た。


「あははっ……。一人無心になって、攻略していたんですが、気づいたら最後の部屋まで到達していました」


「……ゴトーさん、本当に規格外すぎますよ……。この『転移ダンジョン』をクリアするには最低でも数年かかるのではないかと、最近、冒険者ギルドでは分析されていたんです。だから私は権利の売却を進めていたんです」


 イリスはユキタカに呆れるしかなかった。


 そして、今度は、イリスの二か月間について詳しい話を聞く事にした。


 すでにユキタカは、イリスが『転移ダンジョン』発見者の権利を放棄して、自分を探していたというざっくりとした経緯は知っている。


「実は──」


 イリスはユキタカの誘いを断ったのには、色々と事情があった。


 一番の理由は、パーティーの仲間の裏切りによる心の傷だ。


 もう一つは権利の売却がすぐにはできなかった事があったらしい。


 ユキタカと二人で『白金の牙』の連中に対し、ざまぁを行った後、当然、『転移ダンジョン』の権利は、イリス個人のものになった。


 ここまでは、順調だった。


 しかし、ダンジョン管理の権利は、すぐに何度も売却する事は法律的に不可能だったのである。


 というのも、権利者がコロコロ変わると、そこに潜る冒険者達は一度、地上に戻って新たな管理者に、潜る為の契約を結び直す必要があったからだ。


 通常、売却の一か月前には届け出が必要となっていた。


 その為、ユキタカと別れた後、イリスは国境地帯の王家直轄領にある領都で売却申請手続きを行うまで動けなかったそうだ。


 だから、ユキタカを探したくても一か月は領都から動けなかったのだという。


 その間、イリス自身も思うところが色々とあったようだが、それは口にしない。


 権利の売却が成立してすぐに、イリスはユキタカを探しにカールセン王国の国境の街キョウガイに向かったのだが、ユキタカの消息がぱったり途絶えていた。


 イリスは、ユキタカとあまり良くない別れ方をしたと思っていたから、自分が原因で失踪したのではないかと考え、彼女が心当たりのある場所やカールセン王国の周辺地域を探した。


 それでも足取りを発見できず、一か月が経った頃、最後に残った可能性がある場所が、地底と『転移ダンジョン』だったので、ダンジョンに潜る予定の冒険者を探してここまで来たという事だった。


「イリスさんの行動力には感心しますが、彼らのレベルでこのダンジョンの深くまで潜ってくるのは、相当大変な事だったと思いますよ。冒険者は無理をしたら駄目だと言っていたのはイリスさんじゃないですか」


 ユキタカはイリスの無茶する姿に思わず説教をする。


「……ごめんなさい」


 イリス自身もその通りだと思い、素直に反省した。


「でも、僕を探してくれてありがとうございます。実は僕もイリスさんを探してトールデイン王国に行ったのですが、ダンジョンに潜ったようだと聞いて、ピンときましたよ。はははっ」


 こちらの世界で自分の心配をしてくれたのは、イリスくらいだろうとユキタカは思ったので素直に嬉しかった。


 そして、ダンジョンボスが、初めて会った時にイリスを襲っていた魔物だった事を教えた。


「そうだったのですか!? 道理でこちらの攻撃が全く効かない、桁違いの強さだったわけです……。そう考えるとゴトーさんがあの時いなかったら、私はどうやっても助かっていなかったですね……」


 イリスは感慨深い表情になった。


「その偶然のお陰で、僕はイリスさんに出会えましたし、こうしてパーティーを組む事も出来ました。あれが良かったとは言わないけど、会えて良かったです。──そうだ。記念にイリスさんも最下層の部屋に行ってみますか? 宝はすでに僕が回収してしまいましたが、ダンジョンの基である迷宮核は残っていますよ」


「ぜひお願いします! 迷宮核はダンジョン踏破した冒険者しか確認できないものなので、見てみたいです!」


 イリスはパッと表情を明るくすると、願い出た。


 やはり、ゴールド級冒険者という事で、ダンジョン踏破は夢の一つなのかもしれない。


「わかりました。それでは最短で、向かいますね」


 こうして二人は、ダンジョン最下層までの最短ルートを、二日かけて潜る事になった。



「……これが迷宮核……!」


 イリスは夢の一つだったダンジョン踏破の証である最下層の部屋で、迷宮核を前に息を呑んでいた。


「本来はこれを破壊するのでしょう? 最初きた時は、このダンジョンの管理運営がイリスさんだと思っていたので、放置していました」


 ユキタカは、苦笑する。


「ふふふっ。ゴトーさん、そんな気遣いは不要ですよ。でも、そのお陰でこうして本物の迷宮核が見られて良かったです。きっと私の人生の中で今が一番、最高の時だと思います……! ここまで連れて来てくれて本当にありがとうございます」


 イリスは嬉しさのあまり、泣き出しそうな表情になりながら、感謝する。


「喜んでもらえてよかったです。──そうだ。イリスさんが、この迷宮核を破壊してください。確か、ダンジョン踏破したら、出入り口に名前が残るんですよね?」


「それは駄目です。その資格があるのはゴトーさんですよ。私はここまで到達できただけで満足です」


「僕が名前を残すと、都合が悪いんですよ」


 ユキタカは苦笑した。


 ユキタカは死んだ事になっている。


 それも、トールデイン王国の暗殺によってである。


 だから、ここで迷宮核を破壊すれば、生存している事を知らせる事になりかねないのだ。


「あ、でも……。私が破壊しても多分、パーティーメンバーの一人として記録されてしまいますよ?」


「そうなんですか!? じゃあ、破壊するのは僕が変身した後でお願いします!」


 ユキタカは慌ててマスクと身分証を取り出すとランス・ファイス(ユキタカ)に変身した。


「これで大丈夫だと思います!」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は渋い表情、渋い声で、OKを出す。


「……わかりました」


 イリスは覚悟を決めると、迷宮核に向かって拳を振るう。


 すると迷宮核に亀裂が入った。


 イリスは続けて殴る。


 迷宮核がイリスのラッシュで見事に粉砕されると、室内の発光していた壁の灯りが消えた。


 しばらくして明りが回復する。


 そして、迷宮核のあった場所に、地鳴りを上げてオベリスクがせり上がってきた。


 そこには、ダンジョン踏破者の証であるイリスとランス・ファイス(ユキタカ)の名前が刻み込まれているのだった。

ここまで読んだ頂き、ありがとうございます。

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