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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第18話 ランスの力

 冒険者ギルドの敷地内にある屋根付き訓練施設──


「いいのか? ここで私の実力を見せると、建物が吹き飛びかねないが?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は、渋い声で警告した。


「やはり、素人の詐欺師か! ここは剣どころか魔法、魔物使いの訓練まで対応している特殊加工された建物だ。それこそゴールド級冒険者の俺達が暴れても、壊せないくらい丈夫なんだよ! ──なあ、支部長?」


『白金の牙』のリーダー・アダムが勝ち誇った様子で、ランス・ファイス(ユキタカ)の言葉をハッタリだと決めつけた。


「そういう事だ。ゴールド級どころか、プラチナ級冒険者でも破壊できない。そういう最先端の魔法技術が使用されているのだ。冒険者なら当然知っている事実だが、知らないとは、馬鹿な詐欺師だな」


 支部長も、ランス・ファイス(ユキタカ)の言葉が、ハッタリと確信して安堵したのか、イリスも偽者だという事にした様子だ。


「……ならば、試してみるか? 私の実力がどれほどのものか?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は、内心ドキドキしていた。


 自分の『神器・傘』がダンジョンの壁を破壊したのは事実だったが、敵は冒険者ギルドの支部長と上位の冒険者チームである。


 その彼らの理由が凄そうなので、自信が揺らぎそうになっていた。


「ああ、やってみろ! もし壊せたら、その時は無条件でそちらの言い分を認めてやってもいいぞ。だが、無理だった場合、俺達がお前達詐欺師をボコボコにしたうえ、警備隊に引き渡してやるけどな!」


 アダムは支部長と二人、ニヤリと笑みを浮かべて、結果の見えている約束をする。


 もちろん、二人にとって都合のいい結果でしかなかったが……。


 イリスはランス・ファイス(ユキタカ)と違い、冷静だった。


 それ程、ランス・ファイス(ユキタカ)に対する信頼が厚かったのだ。


 ランス・ファイス(ユキタカ)は内心、冷や汗をかいていたが、イリスの落ち着きぶりを確認すると、自分も少し落ち着いてきた。


(イリスが信頼してくれているのだから、大丈夫。僕はやれる!)


「それでは、軽く準備運動だが、天井を吹き飛ばしてみようか」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は、渋い表情で宣言する。


 そして、手にしている槍と傘の骨組みが合わさったような奇妙な形状の槍を構えた。


 次の瞬間、ランスは天井に向かって槍を突きあげ、傘を開くような動きをする。


 ぶわっ!


 風とは言い難い衝撃と同時に、凶悪な見えない刃物が、天井に向かって巻き起こった。


 その無数の刃物と化した風は、高度な魔法技術で覆われた強靭な天井をズタズタに切り裂きながら、巻き起こった風と共に天井をあっさり吹き飛ばすのだった。



 高く舞い上がった天井の一部が、冒険者ギルドの屋根や敷地内に落下する。


 木材の一部は屋根に突き刺さるなどして建物を破壊していく。


 ランス・ファイス(ユキタカ)達がいる訓練場内にも、瓦礫が降り注ぐが、ランス・ファイス(ユキタカ)の奇妙な槍の効果なのか、人々に落下する直前で失速し、ゆっくり地面に着地していく。


 この状況に、当然ながら見物していた冒険者達は、呆然としていた。


 支部長や『白金の牙』の冒険者達は、顎が外れそうなくらい大きな口を開け、愕然としている。


「天井を破壊したら、無条件で全てを認めるのだったな? 『白金の牙』は、イリスを殺そうとしたのは事実だった。そして、支部長はそれを知りながらも賄賂を貰ってその事をもみ消そうとした、でいいな?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は、自身がスカッとしながら、証人である冒険者達に聞こえるように確認した。


「み、認めるものか! どんな小細工を使ったのかわからんが、この建物の魔法陣を解除していたのだろう!? ──ああ、そうだ……。だから余裕を見せていたのだな……? きっとそこの売女が裏で動いていたんだ! ──デイジー、ブラウン、ジョナサン! ゴールド級冒険者を敵に回したらどうなるか、こいつらにわからせるぞ!」


 アダムは焦った様子でまくし立てると、ランス・ファイス(ユキタカ)とイリスに襲い掛かった。


 ランス・ファイス(ユキタカ)が槍を構えると、イリスが前に出てそれを制した。


「ここは私が……」


 イリスは治癒士だが、殴り系の攻撃型治癒士である。


 つまり、格闘家の面もあるのだ。


 そのイリスが、襲い掛かるアダム達に向かっていく。



(動きが遅い? やっぱり、ゴトーさんのお陰で私、かなり強くなっているのだわ)


 ユキタカが地底で何体もの強力な魔物を倒していく中、イリスは一緒にいただけなのだが、経験値が全て自分に入ってきていた。


 だから、レベルが上がっているのはわかっている。


 イリスはアダム達の剣や弓矢、魔法を難なく躱すと、これまでの想いも込めて殴り倒していく。


「「「た、たちゅけて……!」」」


 元仲間達は、顔をパンパンに腫らせて命乞いを始めた。


 特にアダムは、戦士という事でかなり丈夫だから、容赦なくボコボコにした。


「ひゅる……して……くだちゃい……!(許……して……ください……!)」


 顔が変形して原形を留めないアダムが許しを請う。


「私の絶望はこんなものではないです……!」


 イリスはユキタカが助けに現れてくれる寸前まで味わった恐怖と、逃れられぬ死を前に絶望を味わったから、命乞いできる彼らは全然、幸運に映った。


「イリスさん、そこまでです!」


 ランス・ファイス(ユキタカ)が、止めに入る。


 ここでイリスの手を汚させるわけにはいかないと思ったからだ。


 イリスはそこでようやく、いつもの自分に戻った。


 それを呆然と見ていた支部長は、正気に戻る。


「い、イリス何某君! 君が本物である事は、これで証明された! いやー、本当に無事でよかった! ──君達、彼らを捕縛するのだ!」


 支部長は他の冒険者達に、『白金の牙』の捕縛を命じた。


 冒険者達はハッとすると、急いで仲間殺し未遂のアダム達を、拘束するのだった。


 支部長はその間に、逃げようとしていた。


 支部長室に駆けこむと、金庫にある自分のお金が入った革袋を、リュックに詰め込み始めた。


「今さら、逃げられるとでも?」


 ランス・ファイス(ユキタカ)が、支部長室の扉を塞ぐように立っていた。


「み、見逃してくれ……! 君は、冒険者ではないのだろう? それなら、このゴタゴタも関係ない話のはずだ。──そうだ! ここにある金の半分を君に渡そうじゃないか。ここだけの話、結構、貯め込んでいたのだよ。悪い話ではあるまい?」


「イリスのものだったものは返してもらいますが、それ以外はいりません」


 ランス・ファイス(ユキタカ)は聖人ではないが、外道でもない。


 支部長が逃げ出すという事は、お金の大半は悪い事をして得た可能性が高い。


 そのお金を貰うのは、あとでトラブルの原因にしかならないという判断だ。


「あなた、利口ですね。この大金を前に、クズを見逃さなかったのは立派ですよ」


 ランス・ファイス(ユキタカ)の背後から声がすると、見知らぬ冒険者が入ってきた。


「だ、誰だ!?」


 支部長も知らない人物らしく、フード姿の美しい容姿の女冒険者に詰問する。


「私、王都冒険者ギルドの依頼を受けて、あなたの汚職の証拠を探していたダフネといいます。『魔斬りの剣女』と言えば、支部長さんなら理解できますか?」


「み、ミスリル級冒険者の!?」


「ご存じで良かったです。(ニッコリ)──もちろん、逃げてもいいですが、私の噂も知っていますよね? その時は……、覚悟してもらいます」


 赤い髪がフードから見える緑の目の美女冒険者は、フード付き外套の隙間から、剣の柄をチラッと見せた。


 支部長は、ダフネの脅しに顔を真っ青にする。


 そして、ゴクリとつばを飲み込むと観念したのか、その場にへたり込むのだった。

ここまで読んだ頂き、ありがとうございます。

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