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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第16話 変身して再入国

 ユキタカと女冒険者のイリスは、翌日の朝、キョウガイの街を出ると国境に向かった。


 国境沿いは辺境という事もあり、人はほとんどいないが、検問所は当然ある。


 それに両国の関係が変化しているのか、厳しい検問が行われていた。


「次!」


 検問所の兵士が、国境を通過する商人の身分証と荷物を確認すると、ユキタカ達の番である。


 すでに、ユキタカは身分証を変化させ、マスクで顔も別人になっていた。


 イリスはそのまま、イリスとして進む。


「我が国の冒険者? イリストラーナ・ファルオーネ・シュタインランサー(十八歳)……。ああ! 確かシルバー級チーム『白金の牙』で唯一のゴールド級冒険者の! ──今日はお仲間さんとは別行動なんですね?」


「ええ。私はチームから抜けたので、今は、彼と一緒に行動しています」


 イリスはユキタカの腕を掴んで、仲間である事をアピールする。


「そうでしたか。 じゃあ、そっちも身分証を。──ランス・ファイス(二十五歳)、カールセン王国、キョウガイの街郊外出身、っと。奇妙な形の槍をお持ちですね」


 兵士はランス・ファイスこと、ユキタカが手にしている槍(傘が変身している)を珍しそうに見つめる。


 ランス・ファイスの手にしている槍は、槍の形状と傘の骨部分が一緒になったような形になっているからだ。


「ええ、使いやすいように自作したものです」


 ランス・ファイスは、笑顔で応じる。


「……使いやすい? ま、まあ、人それぞれですよね。(同行者がゴールド級冒険者なら大丈夫か)問題ないようなのでお通りください」


 兵士は特殊な槍に興味を持ったが、それ以上、怪しいところがなく追及する要素もないので、二人を通すのだった。



「ふぅ……。緊張しました……」


 ユキタカは黒髪に黒い目は一緒だが、渋めの老け顔であるランス・ファイスのまま、顔に似合わないセリフを口にした。


 ちなみに声も、渋い声に変わっている。


「ふふふっ。その見た目だと疑われないどころか、絡まれる事もなさそうな威厳がありますよ」


 イリスはもとのユキタカとのギャップに可笑しくなった。


「僕もそれを見越して、この顔と身分証にしたんですけどね。やり過ぎたかもしれません」


 ユキタカは自分だったら、絶対声をかけない渋さのある大人を、イメージしたようだ。


 傘も不気味なデザインを考えて変化させたのだが、それは目立っていた。


 声も、渋いので年齢よりも老けて見えるから、それも欠点かもしれない。


 反省するところはあったが、この人相で検問を通過した以上変更せず、トールデイン王国内の移動はこの姿で通す事にした。


 二人は街道を進むと、トールデイン側の国境の街ターバスに到着した。


 この街の門番もユキタカの姿を見て、奇妙な槍に興味を持つものの、それ以上は何も疑わず、街に入る事ができた。


 だが逆に今度は、イリスの方を見て、門番は驚いていた。


「生きていたのですか!? ……イリスさん、早く冒険者ギルドに行って、生存報告した方がいいですよ!」


 門番はそれだけ告げて急かすと、次の者の検問に当たる。


 イリスもある程度自分の状況については、情報でわかっていたから、顔を引き締めると城門を潜るのだった。



 二人は、そのまま冒険者ギルドに直行した。


 冒険者ギルドは、辺境の街ながら、かなり大きな建物だ。


 それも新しい。


 辺境は魔物が多く冒険者の需要が高い事もあるが、未踏破ダンジョンの発見でそれ以上の利益を生み出している。


 イリス達が潜っていた未踏破ダンジョンは、『転移ダンジョン』と正式に名付けられた。


 魔法転移陣がランダムな事から、どこに移動するかわからない困難さが理由で、上位の冒険者の出入りに限られていた。


 それだけに、ダンジョンの情報は貴重だったから、誰も知らない情報は高値が付く。


 イリスの元仲間達は、それを独占していた。


 それだけでなく、イリスの口座も当人が死んだという事にして、自分達のものにしているのだから、腹立たしい。


 ギルド内に二人が入っていくと、にわかに室内はざわつき始めた。


 死人のはずのイリスが、元気な姿で現れたから当然だろう。


 受付の職員達もイリスの姿に気づいて呆然としている。


「イ、イリスさん!?」


 受付の女性がイリスの顔を見て思わず声を上げた。


 それがきっかけとなり、他の冒険者達もイリスが幻ではない事を確認した様子で、騒ぎが大きくなっていく。


 その騒ぎを聞きつけたのか、奥からギルドの長である支部長が出てきた。


「何の騒ぎだ!? 落ち着かんか! ──うん? ……ば、馬鹿な……!? イリス何某!?」


 支部長も死んだと思っていたイリスが、目の前に立っているので驚かずにはいられない。


「お久し振りです、支部長。ご相談があるのでよろしいですか?」


 イリスの表情は硬い。


「……わ、わかった……。支部長室で話そう……。 ──誰か、お茶を頼む!」


 支部長は動揺した様子だったが、イリスを奥に通す仕草を見せた。


 その際、部下の一人に何か耳打ちする。


 部下は、頷くとギルドを飛び出していった。


 それを見送る事もなく支部長は、部屋の扉を開け、イリスを招き入れた。


 それにユキタカこと、ランス・ファイスが続く。


「待て、君は誰かね? 私はイリスに話がある、お引き取り願おうか?」


「いえ、支部長、彼は私の命の恩人であり、証人でもあるので、ご一緒させてください」


「……わかった。入りなさい」


 支部長は渋々といった様子、でユキタカも支部長室に通すのだった。

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