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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第13話 身分証をゲット

 ユキタカは、街の城門で門番に止められていた。


「身分証がないと、駄目だな。今、この街は領主様の命令で警戒度を上げているのだ。──そちらの女性は……、ゴールド級冒険者のイリス? ああ! 以前も何度かこの街で仕事をされていましたな。イリス殿は問題ありません」


「身分証……!? それは全く考えていなかった……」


 ユキタカは門番の厳しい態度に、困惑するしかない。


 それはイリスも同じだった。


 彼女もその事を失念していたようで、ユキタカ同様、困った様子を見せていた。


(身分証、身分証……。あっ、財布の中に免許証があるけど、どうにかならないかな?)


 ユキタカはそう思い当たると懐に入れてある財布を取り出す。


 財布を開くとそこにあったはずのお金やカード類はなくなっており、免許証だけが残っていた。


 ユキタカは、それを取り出そうとすると、免許証は寸前に変化し、こちらの世界の身分証に早変わりした。


「うん? なんだ、身分証あるじゃないか! ──失くしたと思っていた? はははっ、それで、二人で困惑していたのか。 事情は分かった。ユキ・ゴトーだな? 通っていいぞ」


 門番はユキタカが身分証を出すと、先程までの厳しい態度から一転、笑顔になって入城を許可してくれた。


「は、はい」


 ユキタカはイリスと視線を交わして安堵すると、国境の街キョウガイへと入るのだった。



「すみません、ゴトーさん。身分証の事、すっかり忘れていました」


 キョウガイの街に入るとイリスがすぐ、失念していた事を詫びた。


「いえ、僕も服装を変えられた事に喜んで、身分証の事はすっかり忘れていましたから。でも、これで身分証にも困らない事がわかって良かったです。はははっ!」


 ユキタカは安心感から笑顔になると、身分証に変化した免許証を見せてから、財布に戻した。


「ゴトーさんは常に想像の上を越えてきますね。ふふふっ」


 驚く事に慣れてきたイリスは、その事が可笑しくて笑う。


「僕も行き当たりばったりなので、驚いているんですけどね? でも、この身分証のお陰で、これ以上の問題はそうそう起きないかなと思いますよ」


 隣国の身分証を手に入れた事で問題の大部分は解決できたとユキタカは安堵していた。


「ゴトーさん、何度も言うようですが、持ち物については他の方に口外しない方がいいので気をつけてくださいね。知られると危険ですから」


 イリスはその無防備な笑顔に、安心感と同時に心配事も生まれるから、念を押す。


「はい、それはもう!」


 ユキタカはそんなイリスに対し、打ち解けた雰囲気が生まれていると感じ、少し、冗談ぽく返した。


「本当に、ですよ? ──次は、ギルド指定の買い取り屋に、地底で回収した魔物や魔石を売りに行きます、大丈夫ですか?」


「はい。打ち合わせ通りにやります」


 ユキタカはイリスとの二人旅が楽しくなっていた。


 出会ってすぐのパーティーの申し入れは断られたが、今、改めてお願いしたら成功しそうな気がする。


 だが、一緒にいる間はわざわざ言う必要もないだろうと考えると、その事は口にしないのだった。



 買い取り屋では、イリスが覚えたての魔法収納から、回収したものを店主の前に出す体で、タイミングよくユキタカが手提げ袋化した魔法収納機能の鞄から出していった。


 最初こそ店主は、出てくる魔物の死骸に、「ほう、凄い魔物を仕留めてきたな!」と感心していたが、上位魔物が次々に出てくると、徐々に顔が青ざめていく。


 とどめが冒険者も恐れるA+指定の『灰色六足魔熊』の毛皮と魔石である。


 ダンジョンでイリスを襲っていた魔物は、出していない。


「は、『灰色六足魔熊』!? ちょっと待ってくれ! これ以上は金が用意できねぇ!」


 と止められる事となった。


 イリスの動きに合わせて出していたユキタカは、そのタイミングで慌てて止める。


「イリスさん、あんた、少し会わない間に、腕を上げたみたいだな。連れの人は雇い主かい?」


 店主は、どう見ても冒険者には見えない華奢なユキタカを勘違いしていた。


「いえ、彼と一緒にこの魔物を狩ったんです」


「えー!? あんた、戦えるのか!?」


 店主はユキタカの全身を一瞥して、驚く。


 なにしろ積み上げられた魔物は全て上級のものばかりだ。


 ゴブリン相手なら一緒にと言われても納得できるが、上位種の魔物相手だと、足手まといにしか見えない。


 だが、ユキタカも店主の反応が失礼とは感じていない。


 自分自身もそう思うからだ。


 地球では格闘経験もない平凡なサラリーマンだったから、魔物退治どころか喧嘩もした事がなかった。


 こちらの世界に来ても、勇者の高校生グループの足手まといになり、この数か月間、無能力者の現実を心の底から痛感していた後に、これである。


 自分でもどこか非現実的過ぎて感覚が麻痺していた。


 だから、黙って店主の驚きに頷く。


「人は見かけによらないな! 余程、スキルに恵まれているんだろう。──それじゃあ、これが今回の買い取り額の一部だ。すぐに、『灰色六足魔熊』の毛皮と魔石は競売に掛けて金にするよ。その後、残りは支払うから、今後もよろしくお願いしますよ?」


 店主は従業員が持ってきた大金の入った革袋をイリスに渡す。


「ええ、もちろん、次もこちらにお願いするわ」


 イリスは革袋を魔法収納で回収すると、ユキタカと二人、お店をあとにするのだった。



「上手くいきましたね」


 イリスが安堵した様子で、革袋を魔法収納から出して、ユキタカに全て渡そうとした。


「ちょっと待ってください、イリスさん。あなたがいないと僕はここまでうまく話を進める事ができませんでしたよ」


 ユキタカが革袋を押し返す。


「ですが、魔物を倒したのはゴトーさんです」


 イリスは、さらに革袋を押し返す。


「倒すだけが能じゃないでしょう? イリスさんのお陰で僕はかなり助けられています。魔石の取り出しや解体作業、この世界の知識など、僕にとっては貴重な事を教えてくれていますから、半分はあなたの報酬です。いや、七割を受け取ってください」


 ユキタカはふと何か思いついたように多めにイリスに渡そうとする。


「七割は多すぎます! 私は経験値も頂いているので、私が三割で」


「それなら、取り分は半分にしましょう。お互い相手に助けられている、それで、五分五分です」


 ユキタカはイリスの人の好い性格から、最初から半分だと受け取らないと考え、多めに言い始めたのだった。


「……本当にいいんですか?」


 イリスはあまりごね過ぎるのも失礼だと思ったのか、渋々といった様子を見せる。


「はい。イリスさんと、対等な関係が望みなので」


 ユキタカが笑顔で応じると、イリスは少し納得した様子で頷くのだった。

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