86.再び東部戦線へ③
場所:フーロイ=ゼン統一王国西部縦深陣地付近
結果的に斬首作戦は上手くいって、師団長含む師団中核を刈り取れた。
「で、この後どうするの?」
そう聞く私にノアはモジモジとしながら答えた。
「えっとぉ…師団司令部が壊滅したわけだしある程度混乱してるはずだから…頑張って歩いて帰って」
「敵陣地を後方から襲ってそのまま味方陣地に帰還しろと?」
大尉が苛立ったようにそう言う。
「なんだか関ヶ原の島津みたいですね」
と、ヒガミ
「なんだそれ?」
大尉が聞く。
「まぁ…日本の侍ってやつです」
「ふむ…なるほどサムライな。お前ら日本人はみんなサムライの血継いでるんだし、そのシマヅとやらの真似事をしたらどうだ?」
そう冗談めかして大尉が言う。
「やるべきかな〜…捨て奸」
エプロン男がそう唸る。
そこで私はピンと来て
「誰か従属魔法かアンデッド魔法使える人いる?」
と聞いてみた。
「私、アンデッドを作る魔法使えます」
ヒガミが答える。
「詳しく」
「えっと…一時的に死体を従属させて操る的な」
「この状況に一番必要な魔法かも。それ」
「え?」
「突破班、行くぞ」
大尉に率いられる前衛が前進開始。"撹乱班"こと私たち後衛がそれに続く。
しばらく歩くと敵の重厚な塹壕陣地があった。
ここだけ見るとまるで第一次世界大戦のような雰囲気がある。
夜間であるためか陣地内の哨兵は少なく、結構な数が眠っている。
突破班は音を立てずに哨兵を排除し、撹乱班は次々と寝ている兵士たちを殺害していった。
「準備できてる?」
そうヒガミに聞く。
「はい」
そう言うとヒガミは魔法を発動させた。
死体となった兵士たちが次々と立ち上がり、ヒガミの方を見る。
「かつて仲間だった者たちを撃ち殺し、刺し殺してきて」
ヒガミが力のこもった声で言う。
「イエスマム!」
死体達はそう答えた。
どうやら喋れるらしい。
まぁ…そりゃそうだよね。
喉切ってないし、死んだばかりだし
「行け!道を切り開け!突撃!突撃〜!」
死んだ下士官が口々にそう言葉を叫び、ホイッスルを鳴らした。
100人近くの屍達が仲間を屠るために塹壕内を走り回り始める。
銃声、叫び声、悲鳴。
ヒガミはそれを聞いてニタニタと笑う。
「行くよ」
私はその手を引き、前進を再開した。
司令部の斬首とアンデッドによる前線の撹乱で無事旅団は帰還を果たした。
次回、続き




