82.地獄のお泊まり会
場所:ノイエ帝国首都バルトーリ
「ねぇ、前世の記憶を思い出したいとは思わない?」
招かれた屋敷のリビングで、ノアにそう囁かれる。
「えっと?」
何を言っているのか分からない。
「あー…それすら自覚ない感じなんだね。じゃあ聞き方を変えよう…貴女の思想・行動原理の元となったものについて、知りたいとは思わない?」
相変わらずよく分からないけれど…
「なんとなく、知りたいです」
私の言葉にノアはニタリと笑う。
「そこに寝転がって」
案内されたのは綺麗な夜空のような、光る点たちが散りばめられた暗い部屋。
言われた通りに寝転がる。
ノアは自分の指を切って、そこから出た血をワイングラスに入れ、そこに何かの液体を加えた。
「口を開けて」
言われた通りに口を開ける。
きっと血の入った何かを飲まされるのだろうけれど、自然とそれを受け入れてしまう
「……ぁ」
ノアは私の口に液体を流し込む。甘く、熱い。
「少し苦しいかもだけど、ちゃんと飲んでね」
息苦しい。言われた通りに飲み込む。
急激に眠たくなってきた。
「おやすみなさい。良い夢を」
そう言ってノアは私の頭を優しく撫でた。
パッと目が開く。
周りを見ると、寝る前と全く同じ部屋で、しかしノアはいなかった。
「おはよ」
後ろから声が聞こえ、そちらに振り返る。
そこには私がいた。
「あ、えと、おはよう」
私にそう言葉を返す。
「早速、同化しよっか」
「えっ同化?」
「うん。本来なら生まれた時にそうなるべきだったことを、進化に伴ってやってるだけだから。別に緊張しなくて良いよ」
そう言って私は私の両手を掴んだ。
「そう…なんだ」
「うん。いくよ?」
「…うん」
次の瞬間、私の視界がぐにゃりと歪んで、同時に頭痛が激しくなった。
何か、これまで覚えていなかった記憶が一気に思い出された。
私の前世の名前は"鳩山茜"。連続殺人を行った…まぁ世間的に見たところの狂人で、死因は警官による銃撃での失血死。
神様の"善意"で、今度は罪を犯さないようにと記憶ごと人格を封じていたみたい。少なくとも死後に現れた存在はそう言っていて、ついさっきまでその事すら記憶から消えていたのでおそらくは事実。
一連の記憶と共に思考も蘇ってきた。
私は「傷の着いた身体の一部」が好きらしい。
死体から折れた中指を切り取ってホルマリン漬けにしたり、リスカ跡まみれの生きた女の手をノコギリで切り取ったり…その人間が生きていく中で苦しんだ跡というものがとても好きで、つい収集してしまう癖があった。
今世でも…集めたりできないだろうか?
「おーい、起きてる?」
ノアの声に私はパチリと目を開ける。
「おはよう」
「うん。おはよ」
そう言ってニッコリとノアは笑った。
「思い出した?」
「全て思い出した」
「そっかそっか〜早速聞かせてよ」
「勿論。思い出させてくれたお礼ね」
「やった〜」
ノアはそう嬉しそうに声をあげ、笑った。
ノアは利用できそう。上手く使って再び収集を始めたいところね?
次回、ディルレヴァートル旅団




