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警察に通報する、とでも言って、追い払うべきか。でも、普段の僕だったら、絶対そんなことしないから、母さんの偽物に怪しまれるかもしれない。
迷っていると、門のあたりで何か話し声が聞こえてくる。先ほどの男たちとは違い、話していることだけは聞こえてくるのだが、声量が大きくないせいで、具体的な内容までは聞こえてこない。
門の前にいる男たちの手前側、玄関の方へと、男たちの目線は向いている。少なくとも、近所の誰かが彼らを注意しに来たわけではない、というのは明らかだった。
もしかして、母さんの偽物が対応しているのか。
いつの間に。さっきは玄関が開く音がしなかったのに。男たちの大声に負けて、聞き逃したのだろうか。
「あんたが、ぎぃか様で産まれたニセモンなん? その辺にいるばあさんにしか見えないけど、うまく化けたもんだな」
「俺たちの目は、ごまかせないぜ! なーんて」
男たちの声量が大きく、一方的に彼らの言葉だけが、僕の部屋にまで届く。
男たちの声は、実に馬鹿にしているようなもので、同時に、やっぱりな、という色が強かった。もしも本当にぎぃか様の副産物がいたら、ホラー漫画みたいで面白かったけど、現実的に考えてそんなわけない、と思っているのだろう。
だが、そうやって、馬鹿笑いできているのも、ほんの少しの間のことで。
「――――」
男たちが、一歩、後ずさる。声こそ聞こえず、表情こそハッキリとは見えないが、きっと、息を飲んだのだろう。
「なに……?」
あからさまに態度が、一瞬にして切り替わったことに、僕は強い不安を覚えていた。思わず、不審に思って声が漏れる。
彼らは、一体、何を見たのか。
パーカー男がしりもちをつき、スカジャン男が逃げようと踵を返す。
だが――それは叶わなかった。
我が家の玄関の方から、黒い何かが伸びる。大きくて、それこそ、近くの街灯と一緒に立っている、電柱と変わらないサイズ感。いや、それよりはやや小さいか……? 暗闇と一体化してしまうほど黒いそれは、夜の暗さとの境目があいまいだ。
でも、その黒くて、大きくて、長い何かが、街灯に照らされ――見えてしまった。
その何かの先端に、何かよりも細い棒が、五本もついていることを。
――手だ。
僕は、直感的にそう思った。
母さんの偽物の、あの拙い、人の形に似せた黒い手を、連想させる。あの手を、引き伸ばしたようなイメージ。
一度そう思ってしまうと、そうにしか見えない。
「あ、あぁ――」
一瞬、スカジャン男の叫び声が、聞こえた気がした。しかし、巨大な黒い手が、逃げ出したスカジャン男をはたくようにして、地面へと抑えつけた。




