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確かにあのとき、一瞬迷いはした。こういうの、書き込んで大丈夫なのだろうか、って。でも、すぐに、友人の家で読んだ雑誌には個人の住所が書かれていたし、あの雑誌の発行部数に比べたら、丑師の配信を見ている人間の数の方が、圧倒的に少ないから大丈夫だろう、って思ってしまったのだ。
全然大丈夫じゃなかった。
僕はカーテンの隙間から、下をうかがう。少し前に、カーテンを全部開けて確認した際には、小学生に僕が下を見ていることがばれたので、なるべく、向こうから見えないように気を付けて。
勿論、向こうがこちらに注意して見ていたらバレるとは思うが、カーテン全開よりは気が付かれにくいだろう。バレたら大騒ぎされそうだから、それだけは避けたい。
少し見づらい中で下を確認すると、二人の男がいた。夜も遅いので分かりにくいが、服装からして、若そうだ。少なくとも、僕よりは年下だと思う。一人はパーカーを着て、もう一人はスカジャンを羽織っている。
外は真っ暗だが、街灯が近くにあるので、うっすらと、彼らの様子が見えた。
「悪用しないで、って言ったのになー……」
僕の隣に丑師が立つ。ちら、と彼女の方を見れば、困ったような、呆れたような表情をしていた。
彼女の場所から家の門のあたりは見えないだろうが、まあ、これだけうるさければ、彼らが何をしに来たのかは明確である。
自分は来たくせに……と思いながらも、僕は再び、家の門の方へと目線を戻した。
――ピンポーン。
門のところにいるパーカーを着た男がインターホンを鳴らす動作をすると、家の中にチャイムの音が響いた。
「すんませーん、いますぅ?」
明らかに馬鹿にしたような声音で、パーカー男が言う。インターホンが取られたのか知らないが、近所迷惑になるような声量のままなので、ここまで聞こえてくる。
「こっこんちゃんの配信を見て、ここにぎぃか様がいるって聞いてぇー。たまたま、近所だったから、行ってみっか、みたいな?」
……これ、もしかしなくても、まずいのでは? 僕が母さんのことを相談した――つまりは、僕が偽物の正体に気が付いたことが、バレてしまうのでは。
もし、母さんの偽物が僕に確認を取りに来たらどうしよう、と脳内で言い訳のシミュレーションをする。その隣で、「やばいかも……」と丑師がつぶやいた。
「配信でも言ったでしょ。ぎぃか様で産まれた副産物の偽物は、偽物だとバレたら、殺しに来るって」
おそらく、彼らは僕の話を信じなかったのだろう。釣り、あるいは、僕の幻覚。彼らの中ではそう思われたのだろう。僕だって、間近にあの稚拙な黒い手を見ていなければ、ネットに相談することすらしなかった。
面白半分だから、当然、本当にぎぃか様がいるとは思っていない。殺される、なんて考えてもいない。なんなら、迷惑をかけた不審者として、警察に通報されることすら想像できていないのだろう。そのくらいの想像力が欠けていることは、一目で分かる。




