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彼女の質問が途絶え、メモをまとめているときに、今度は僕の方から聞いてみた。
「丑師さんは、ぎぃか様を信じてるの?」
ここまで来て、信じられない、というよりは、信じたくないと、僕ですら思っている。それなのに、彼女は、あっさりと信じたのだろうか。
メモを書いていた彼女は顔を上げる。
「んー、まあ、信じてるかな。知り合いの霊媒師がいるって言ったでしょ。あの人と一緒にいると、世の中、科学で証明できることだけじゃないんだなーって思うよ」
「それを伝えるために配信してるしね」と言いながら、彼女がくるりと、また、ペンを回した。どうやらペン回しが癖らしい。僕の妹もそうだったけれど、随分と器用なものである。僕もやったことがあるけれど、彼女ほど、綺麗に回せたことはない。女子の方が得意、とかあるんだろうか?
「ま、いたら面白い、っていうのが本音かな。わたしはあんまりお化けとか見えないし」
「……じゃあ、ぎぃか様も駄目なんじゃないのか」
あれだって、そういう分類だろう。お化けとか、幽霊とか、そういうやつ。
僕はそう思ったけれど、彼女にとっては別物らしい。「全然違うって!」と、手の中で弄んでいたペンを、びしり、とこちらに向けた。
「幽霊とかお化けは、実体がない。ぎぃか様はあるよ。手順や原理ははオカルトだとしても、ちゃんとした物質なんだから」
「…………」
「そうじゃなきゃ、元の家族のふりして、生活できないでしょ」
筋が通っているような、そうじゃないような。僕には全く分からない世界だった。
ただ――確かに、あの、出来損ないの手は、その場に『あった』ように思う。触ることはできなかったが、仮に触れていたら、何か、そこにあるものとして、認識した気がする。実際に触れたわけじゃないから、確証はないけど。
「ぎぃか様の依り代について、調べた?」
彼女の言葉に、僕は黙り込む。ぎぃか様そのものについては調べていない。しんかホームの信者が起こした事件の方の詳細ばかりを調べて、そのまま寝落ちして今に至る。
それでも、なんとなく、予想はついていて。
僕が黙っていると、彼女が先に正解を教えてくれた。
「ぎぃか様の依り代は、死体だよ」
彼女の表情は、変わらない。好奇心に満ちたような、どこか、現実味のない、それ。
まるで、自分には関係ありませんと言いたげな顔。
「死体は、消えたりしないでしょ? 普通に皆、見える物でしょ?」
同意を求めるような、丑師の声音。僕は何と言い返すのが正しいのか分からなくて、ただ、目線を落とした。




