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それからも、年齢を聞かれたり、家族構成を尋ねられたり、いろんなことを問われ、僕はそれに答えていく。
あらかた質問をされたところで、「ところでさ」と丑師が話を変えた。くるり、と器用に彼女はペンを指先で回す。
「初見さんって、ニートなの?」
食事と一緒にもらったお茶を飲んでいたタイミングでズバリと言い当てられて、僕は思わずお茶を吹き出しそうになった。
「な、なんだよ急に……」
「いや、職業聞いたら、変に言葉濁すからさ。それで、いかにもとっさに出しました、みたいな感じで言ったのがサラリーマン、て」
「…………」
下手に考えず、もっと最初から適当に職業を言うべきだったか。どうせ僕のことを何も知らないのだ。嘘を言ったって、バレないだろうに。いや、どうだろう……。バイト経験すらないままに、高校を中退して今に至るからな。適当に嘘をついても、仕事について深堀りされた時点で、詰むかもしれない。
僕が無職である、ということに確信を持って言っている彼女の様子に、ごまかしても無駄かな、と思い、素直に「そうだよ」と投げやりに答えた。
「なんで?」
「なんで、って……そこまで言う必要あるのか?」
「いや、ほら内容次第ではごまかそうかなって。親の介護最近までしてました、とかなら無職って紹介するのもアレだし、いじめとかで不登校になってー、とかなのにからかいでもしたら、わたしが炎上すんじゃん? それ対策よ」
――理由なら、ある。
でも、僕はそれを、誰にも言うつもりはない。持っていけるものなら、墓場まで持っていくつもりだ。
「……たいそうな理由はないよ。ただ……学校行くのが、面倒になっただけ」
学校を中退すると決めたとき、母さんたちに使った言い訳を、僕はそのまま流用する。本当は、別に面倒でも何でもない。部活動は好きじゃなかったけど、学校自体は、嫌いな方ではなかった。
まあ、でも、初対面の相手に、馬鹿正直に全て伝える必要はない。いくらこの場にいてほしくて、ある程度機嫌を損ねないようにするといったって、所詮、他人は他人だ。
「ふぅん……」
なんだか、少し、値踏みされるような、そんな声を、丑師は上げた。言っていることが言っていることな上に、嘘をついている罪悪感から、僕の目線が、少し泳ぐ。
でも、納得したのか、「じゃあ、ヒキニートってことにして、遠慮なくからかいたおしちゃお」と、丑師はメモ帳に何か書きこんでいた。
……まあ、僕としては、本当の理由が隠せるのならそれでいいので、好きにしてくれ、という感じである。




