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僕が弁当を食べ終わると、パタン、と漫画が閉じられる音がした。丑師の方も終わったらしい。
「それで――」
僕は彼女の話を聞こうとして、少し迷う。僕が今いる場所は、扉から近いから。
かといって、あんまり彼女に近づくのもな……。
僕は机の向かいにあるベッドの真ん中らへんに座る。扉の近くではく、彼女が座るこたつからは、少し離れている程度。ベストとは言えないけれど、部屋の外に会話が漏れないような安全な場所で、丑師とも多少距離をとるならば、ここに座るしかない。
「丑師……さんがここに来てくれた、っていうことは、僕がこの家から出るのを、手伝ってくれるっていうことでいい……んだよね?」
「そうだよ。救世主って言ったでしょ」
彼女は言いながら、斜めがけのポシェットを探っている。
「代わりに、今日あったことを、今度の配信のネタにさせてね。本物のぎぃか様を退治した話とか、絶対話題になるじゃん」
そう言って、彼女が取り出したのは、メモ帳とペン。収納量よりもデザイン重視っぽいごてごてしたポシェットから、その辺のコンビニでも売っていそうなシンプルなメモ帳とペンが出てくるのは、なんともシュールだ。
そのメモ帳に、僕の話を書き連ねたい、ということだろうか。
「…………。まあ、いいけど……」
本当は、良くなかった。あんなにも、何件もの殺人事件が起きた、しんかホームのことに関わる話なのだ。
殺人事件の被害者があれほどいる事件を面白おかしく話す、というのは、あんまり気分が良くない。
でも、僕にとっては、無事にぎぃか様の始末をつけることが最優先。良心に従って、甘いことばかり言ってはいられない。
「それで? ぎぃか様に気が付いたのは最近?」
「…………そうだよ」
丑師は、僕にあれこれ質問しながら、メモ帳へと書き込んでいく。配信ネタにすると言っているし、ある程度、情報が必要なのだろう。
「あ、安心して。ちゃんと特定につながりそうな情報はぼかすから。君みたいに、個人情報直接書き込むようなポカはしないよ」
僕が心配しているのはそこじゃないけど……。まあ、配信を続けている人ならば、あまり悪いようにはしないだろう。随分と炎上を恐れていたようだし、下手をすれば大変なことになるのは彼女の方なのだ。
「じゃあ、最近気が付いて、そのまま、わたしの配信にコメントくれたんだ?」
「……まあ、そうなるな」
「わたしの配信の他には別のところにも相談した? わたしが最初?」
「相談サイトとかには、少し。でも、配信は丑師さんのところが最初で最後」
「なるほどなるほど。……ラッキー」と言いながら、彼女はペンを動かす。少し不謹慎な言葉も、隠すつもりはないようだ。




