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風呂に入ってこい、と追い出された僕は、仕方なしに脱衣所へと向かう。廊下を出るときにはそれなりに緊張したけれど、僕の部屋に人間がいると思うだけで、安心感が桁違いだった。
脱衣所でタオルと着替えを用意し、服を脱ぎながら、どのくらい風呂に入っていないかを考える。
「…………一週間?」
正確な日数は分からないが、多分、そのくらいは風呂に入っていないし、シャワーも浴びていない気がする。母さんの偽物を見てしまってからは、以前にもまして部屋から出なくなったが、元々風呂に入ることも多くなかった。別に入るのが面倒、とか、風呂自体が嫌い、とか、そういうわけではないけれど、入るタイミングがない、というか。
なんとなく眠い時に眠って、起きている間は動画を流し見するか、ゲームをするか、漫画を読むかして。母さんの食事が置かれたら食事をする。
母さんの食事は、ほとんど決まった時間に置かれるから、食事の時間帯自体はそうずれがないけれど、その他の生活リズムはぐちゃぐちゃで、一日の分かりやすい区切りがいまいちない。
そのくせ、昔から母さんに言われてきた考えが根付いているのか、風呂は一日の終わりに入るもの、という認識が強い。
つまりは、昼間長く寝なくて、ちゃんと一日を過ごした夜にしか入らない。そして、そういう日は、意外と、毎日やってこない。
その結果、週に一、二回しか風呂に入らない生活になってしまうのだった。流石に、一か月も入らない、なんてことはないけど。
自分では、自分の臭いにあまり気が付かないものだけれど、確かに、髪が脂っぽくなっているので、入るべきタイミングだったとは思う。
洗濯物をかごに入れ、僕は風呂場に移動する。風呂を沸かしている時間もないし、シャワーでいいだろう。
「…………」
シャワーを取って、なんとなく、嫌な想像をしてしまった。ホラー映画だと、シャワーを出そうとしたら、血が流れたり、髪が出てきたり、そういうこともある。
なんでこのタイミングで、そんなこと考えてしまったのか。
今、この状態が、ホラー映画じみているからでしか、ないのだが。
ゆっくりと、シャワーのコックをひねる。びたびた、と水が流れ、それはだんだんとお湯に変わりながら、勢いよくシャワーヘッドの穴から、それぞれ出ていく。
普通の、変哲のないシャワー。
しばらくそのまま出しっぱなしにしてみても、流れてくるのはお湯で、血とか髪とか、そういう不気味なものに変化する様子は一切ない。
「そりゃあ、そうだよな……」
あまりにも過敏になっている。僕はため息を吐いて、髪を洗い始めた。




