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バーチャル配信者、というのは、中身とイラストが一緒である必要はないと思うのだが、彼女はよほど和風ゴスロリが好きなのか、それっぽい服を着ていた。斜めがけのポシェットも、実にそれっぽい。まあ、人の服装の趣味なんてどうでもいいんだけど……。
ただ、厚めの化粧でごまかしているようだが、なんとなく、僕と同じか、少し下、という印象を受ける。イラストのように、若くはないようだ。
いや、そんなことよりも、今、彼女がこの場にいることの方が問題である。
「な、何でここに……」
「え、君が住所書き込んじゃったんじゃん」
彼女がそう言いながら、部屋に入り、扉を後ろ手で閉める。
そういえばそうだった……いや、そうじゃない! 納得するなって。
「いや、どうやって家に入ったんだよっ」
ガチャリ、と鍵が開いた音がした以上、少なくとも鍵はかかっていたはずなのだ。
「え? 普通に君の母親に開けてもらったよ?」
そう言われると、僕は言い返せなくなった。母さん、いたのか……。
「あれ、本当に『そう』なの? わたしには普通のおばさんにしか見えないけど」
「――……」
本当に、僕と彼女とで、見えているものが違うのか。僕の目が正しいのか、自信がない。
僕には人のなりそこないに見えるけれど、本当なら、そんなことはあり得ないのだ。だから、普通に見えている人の言葉の方が、どうしても、信用に足りる。
僕の方が正しいと、彼女に主張する気になれなかった。
「ま、いいや。次の配信の話題にでもしようと思って来ただけだし」
……住所を悪用するな、と言っていたくせに、自分は来るのか。
そう言いたかったけれど、僕は黙った。
それもそうだね、と彼女が帰ってしまうのが怖かったのである。
久々に見た、普通の人間。彼女が悪人だろうと、ただの冷やかし目的だろうと、何でもいいから、そばにいてほしかった。ちゃんとした見た目の、正しい人間が近くにいるだけで、こんなにも安心できるとは思わなかった。
多分、今の僕は、正真正銘生きている人間だったら、犯罪者でも受け入れると思う。
それほどまでに、まいっていた。
「本当にぎぃか様が行われたなら、人間じゃない何かが作った料理とか気持ち悪いかなって思って、コンビニでお弁当買って来たんだけど……」
がしゃ、と彼女が入口近くの机に袋を置いた。確かに、形状はそれっぽい。中身はここからしっかり見えるわけではないけど。
久々の、ちゃんとした食事。そう意識したら、一気にお腹が空いた気がして、くぅ、と腹が鳴った。
しかし、彼女は、無慈悲にも言う。
「とりあえず、風呂に入るか、シャワー浴びてきたら? 結構……臭うよ」
「…………」
しばらく風呂に入っていない僕に、拒否権はなかった。




