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リビングの四人掛けのテーブル。
キッチンに一番近い場所に母さんが座り、その隣に父さんが座る。入口に一番近い父さんの席だけが唯一、リビングの四人掛けテーブルから、テレビが見える位置にある。食事中はテレビをつけないのが母さんの決まりだったから。晩酌をする父さんだけが、リビングのテーブルからでもテレビが見える席を使うことを許されている。
その正面には僕が座って――僕の隣には、三歳下の妹が座る。
父親、母親、兄、妹。よくある、四人家族。
僕と父さんは母さんの『こうあるべき』と口うるさく言われるのが苦手で、母さんの機嫌が悪くなったり、文句を言い出したらそそくさと逃げることが多かったけど、妹は母さんに似たのか、母さんの『こうあるべき』の理想像を素でこなしていたから、二人は仲が良かった。
こうであってほしい娘、というのを、何一つ苦がなくクリアしてしまう妹の奈那子からしたら、逆に母さんは理想の母親だったのかもしれない。奈那子がやりたいことや欲しいものは、母さんにとったら与えたいものだった。利害の一致、というとおかしいかもしれないが、奈那子からしたら望むものは何でも手に入ったも同然だったのだ。
でも――……僕が生きて、母さんがああなっているということは。
父さんか、奈那子が、どちらかが、しんかホームに入信し、ぎぃか様を行おうとしたのだろう。
奈那子と父さんだったら、父さんのほうが怪しく思えるけど……でも、父さんが母さんを殺してまで理想の母さんにしようという思考に至ったとも考えにくい。父さんと母さんは恋愛結婚のはずだし、ある程度母さんの性格を分かった上で結婚したような部分はあったと思う。
「いただきまーすっ」
記憶の中の奈那子が、元気よく挨拶をする。
「お兄ちゃんの方がハンバーグ大きくない?」
ずるい、という感情を隠しもしない奈那子の声。記憶の皿は、確かに、僕の方に大きいハンバーグが置かれている。僕も奈那子も子供だから、大差はないけれど、一目でどちらが大きいか分かるくらいには差があった。
「ははは、駿汰の方が年上なんだから、大きくもなるよ」
目の前の父さんが笑う。夕食を食べながら奈那子の話を聞いているその様子は、純粋に、娘が可愛くてたまらない父親そのものだ。母さんに強要されてそういう態度をとっているわけではないのが分かる。
「奈那子のハンバーグだって、駿汰くらいの年になったら同じくらいの大きさになるさ」
父さんの言葉に、奈那子は納得したのか、「ちぇー」と、つまらなそうな声をこぼしながらも、それ以上文句は言ってこなかった。
具体的な日付が思い出せないくらい、僕にとって、ごくごく日常的な、夕食の光景。まあ、少なくとも、僕が引きこもりになる前の話ではあるのだが――。
ぬちゃ。
――ふと、気を抜いた瞬間。
気味の悪い音が、いつかの食卓に響いた。




